2章幕間4 分隊長の休日
レオーネ
ふむ、こんなものだろうか?
着替えを終え姿見の前に立って自分の姿を確認する。
うん、けっこう良いじゃないか。
淡いピンク色のロングスカートに上は白を基調として袖の短いシャツ。
肩からストールを羽織った姿は自分の目から見ても中々様になっていると思う。
…そういえばこの服は確か、
(とても綺麗だと思いますよ。下ろした髪もその服装もとても似合っていますし)
…あいつに似合っていると言われた服だったな。
……ま、まあ、だからこの服を選んだって訳じゃないぞ!
そうだ!この服は元々私のお気に入りの物だから選んだだけだ、うん!
……はぁ、私は一体だれに対して言い訳をしているんだ。
そろそろ待ち合わせの時間になるしあまり馬鹿な事をしていないでさっさと出よう。
今日は…そう、久しぶりに友人と話せる時間が出来たのだしな。
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「あ、レオーネー、こっちこっちー!」
待ち合わせの場所に着くとその相手からすぐに声が掛かった。
遅れてはいないはずだが早く来ていたのかもしれない。
「シエラ、もう来ていたのか」
待ち合わせの相手は学生時代からの友人であるシエラだ。
今は職人ギルドの受付をしているらしいが軍と同じくかなり忙しい職場のようで、こうして休日を合わせる事すら難しかった。
なので今日は久しぶりに会えた友人とゆっくり過ごそうと思っていた…のだが、
「あれ?じゃあ前にレオーネが言ってたミルス村の子ってララくんの事だったんだ」
近くの軽食店で昼食をとりながら久しぶりの友人との会話を楽しんでいたのだが、どういう流れだったか話題は先ほど思い出したミルス村の…今はこの街に越して来ているようだがララの話になってしまった。
確かにシエラが彼の事を知っているのは当然なのかもしれない。
道具屋、魔法薬や…後は魔道具なんかも扱っているという話だったか?まあどちらにしろ職人ギルドへの登録は必須になるから出会うのは必然だったのだろう。
だがあいつはララくんなんて呼ばれるような可愛げがある感じではなかったがな。
「ああ、一応この後様子を見に寄るつもりなんだが」
「へー、あのレオーネが男の家にねー」
シエラはやけに楽しそうだ。
私としても別にあいつの事が嫌いなわけではない、ない…のだが…。
あいつと話すとどうにも調子が狂うんだよな…。
「変な言い方はやめてくれ。
話を持って行った手前問題が起きていないか確認に行くだけだ」
その後、私がいくら否定してもシエラのやつは「はいはい」とか「年下が好きなのかー」と聞き流すだけで私の言う事を信じてくれなかった。
確かに私もいい歳だ。
両親からもいいかげん結婚は、という話も耳にたこができるほどに聞かされている。
だが…いや、別にあいつがどうのこうのという訳ではないが歳の差もけっこうあるしな、うん。
……だから私は一体誰に対して言い訳を…。
大体だ、シエラだって私と同じ歳なのだから人の事ばかりじゃなく自分の事を考えるべきだろうに。
「私の事ばかりではなくお前はどうなんだ?同じ職場にいい人はいないのか」
「いない」
「えっ?あ、ああ、そもそも歳が近い人がい「いない」
「…そ、そうか?」
なんだろう?地雷を踏んだかのようにシエラの様子が急に変わってしまった。
職場で嫌な事でもあったのか?それとも苦手な相手でもいるのだろうか?
まあどちらにしろこの話題はお互いの為にも続けるべきではないだろう。
その後はお互いに恋人関係の話題には触れず、近況等を報告しあいながら時間が過ぎていった。
話題さえちゃんと選べばこうして友人と語り合う時間は日々の疲れを癒してくれるものだった。
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昼食を終えた後は適当に服や小物を見たりと普通に買い物を楽しみ、一段落したところでお開きになった。
別れ際にシエラが、「頑張んなさいよ!」と言っていたが何を頑張れというのだろうか?
……もちろん分からないというわけではないのだが、「余計なお世話だ!」と内心で思ってしまう事くらいは許して欲しいものだ。
そんな訳で私は今あいつの店の前まで来ている…のだが、
店、というよりはただの民家だな。
ここまで近づけば店だと分かるが遠目には分からないだろう。
色々と改装された跡もあり外には立て看板もあるので魔道具や錬金薬を扱っている店だという事は分かる。
だが、逆を言えばそれだけだ。
華やかさも無く地味な印象を受けてしまうため人によっては敬遠してしまうかもしれない。
もっとこう…明るい色で飾ってから花を並べたりとか看板も……いやいや、別に私が気にする事ではないはずだ。
思考が少し脱線してしまったが当初の用件を済ませるとしよう。
見た感じそれ程繁盛しているという印象は受けないし邪魔にはなるまい。
店内に入ると意外…と言うと失礼だが客が居るようだった。
あれは冒険者だろうか?見た感じだとまだまだ新人っぽいが。
傷はあるが真新しく使い込まれていない防具で身を包んだ4人組の男性が、女性の店員…確かあいつの妹でリリナだったかな?に対して何かを注文しているようだ。
…先頭の一人は注文よりもとにかく話がしたいという様子で意図が丸分かりだったが。
だが妹さんの方はほとんど聞き流しているようで返事はしつつも手早く依頼品を作っていた。
…後ろの3人は気付いているようだが恋は盲目というやつだろう。
「あれ?レオーネさんじゃないですか。
お久しぶりですね、どうかされたのですか?」
びくっ!!
掛けられた聞き覚えのある声に思わず体が反応してしまった。
落ち着け私、さっきあんな話をしたせいで過剰に意識してしまっているだけだ。
そもそもまだ数える程の回数しか会っていないのにこの反応はおかしいだろう。
「…久しぶりだな、元気にやっているか?」
うん、大丈夫だ。
普通に話せるじゃないか。
「はい、おかげさまで。
あれ?その服は以前にミルス村で着ていたものですね。
うん、やっぱりレオーネさんに良く似合っていますね」
「あ、ああ、ありがとう…」
こ、こいつは、わざとやっているんじゃないだろうな!?
くそっ!動揺するなレオーネ、こんなのただの社交辞令じゃないか!
「…それでだ、この街に来てからどうだ?何か困った事とかは起きていないか?」
ようやく本題に入る。
そうだ!今日はこの為にわざわざ来たんだ!
「うーん、特にこれといった事は。
あ、そういえば以前買い物に出た時に変な人達に絡まれた事がありましたね」
「何?どんなやつらだ?ケガは無かったのか?」
こちらとしては決まり文句のような問だったが、帰って来た返答は聞き流せる内容ではなかった。
この街は治安が良い方だが当然すべての住民が善人という事はありえない。
問題のある連中も多く被害に遭う住民も多いのだがそれら全てに対応する事が出来ていないのが現状だ。
だが知り合いが被害に遭ったと聞けばさすがに見過ごす事は出来ない。
「いえ、そんな大して事では…ただの追いはぎのような連中でしたしたまたま通りがかった人が助けてくれたので特に被害はありませんでしたよ」
「そうか…」
ケガが無いという事実には安堵したがやはりこのまま何もしないという訳にはいかない。
街の治安は主に自警団により守られているが軍の仕事としても街の治安を守るというものはある。
ほぼ形骸化してしまってはいるが私としては平時の見回りくらいはするべきなのではと常々思っていた。
…そうだな、こんな事で浮かれているわけにはいくまい。
そう考えれば先ほどまでの浮ついた気持ちが静まりいつもの冷静な自分を取り戻すことが出来た。
やはり自分はこういう生き方しか出来ないだろう。
結婚して子供を育てる、そんな未来も悪くはないと思うが自分の目の届く範囲の人達を守る生き方のほうが私には合っている気がする。
両親には悪いがまだまだ結婚は無理そうだ。
「軍の方でも定期的に街を見回るように進言してみよう。
自警団だけでは限界があるだろうし…それに、住民を守るのが我々の仕事だしな」
「レオーネさん…ありがとうございます」
ララの視線が若干むずがゆかったが感謝の言葉は純粋に嬉しかった。
…なので続けてこう言った、いや…言ってしまったというべきだな。
「ああ、お前の事は私が守ってやる、だから安心してくれ」
「……兄さん、口説かれてるの?」
奴の妹がいつの間にか近くに来ていた。
先ほどの冒険者達もいつの間にか帰ったようで店内には私を含め3人しか居なかった。
その後の事はよく覚えていない、と言うよりもう忘れた。そうだ!忘れたんだ!
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久しぶりの休日はこんな感じで、ゆっくり出来たはずなのになかなか疲れる1日だった。
まあ、こんな休日もたまになら良いだろう。
またそのうち暇を見つけて様子を見に行こうと思う。
…その時はまた、この服を着て行くのも良いかもしれないな。
次から3章になります。




