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あとがき

「枯れ木に花を咲かせましょう〜!」

 昔話『花咲爺さん』の良いおじいさんが灰をまきながら陽気に謡うこの台詞、子供の頃からなんとなく恐いものを感じておりました。ここ掘れわんわんなポチが隣の悪いおじいさんに殺されて、ポチの死体を埋めた所から生えた木から臼を作り、その臼を燃やした灰で枯れ木に花が咲くという……なぜ灰で枯れ木に花が咲くのか、花咲爺さんはいったい何者なのか? そんな子供の頃からの疑問をこの話で解き明かしてやったような気分です。これが花咲爺さんの正体だ!と。ま、あくまで私の勝手な想像ですが、極悪非道ながらも書くのが楽しい敵キャラでした。


 雑談はさておき。

 いまこれを読んでいる皆さんは、富士見ファンタジア文庫から発売された『鞍馬天狗草紙』を読んでくだった方々がほとんどだと思います。数多くの作品の中から鞍天を手にとり、長年この作品を忘れずにいてくださって本当にありがとうございます。

 2003年に一巻、2004年に二巻が出ましたが、残念ながら売れ行きがふるわず続刊にいたりませんでした。続きを出す気満々でほどなく三巻の原稿を書き上げたのですが、思いかなわず残念至極です。

 発売から何年もたっているのに、ときおり「つづきを」という読者様からの声があり、嬉しいながらも心苦しい思いをしていました。「ネット公開を」というご要望が寄せられ、そうしようと思いつつ、日々の忙しさに追われてそれが今になってしまいました。

 気が遠くなるほどおまたせしてしまい本当に申し訳ありません。

 しかし読んでくださるのは10人もいればすごいと思っていたのですが……どうやら30人前後の方々が読んでくださっていたようで。ありがとうございます。少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。


 数年前に書き終えていた三巻の原稿ですが、パソコンが壊れたときにデータが全部消えてしまいまして。幸いプリントアウトしてあったので、それを再度パソコンに打ちこんでこちらにアップするという作業をしていました。

 三巻を公開しはじめた当初は、手元にある原稿をそのままアップし、それで鞍天を終了とするつもりでした。しかし原稿を打ちこんでいるうちに情熱が甦ってきて、寝食を忘れて加筆修正をくりかえしている自分がいました。そして三巻の原稿を書きながら、自然と四巻以降の構想を考えていました。私の中で『鞍馬天狗草紙』という物語はまったく終わっておらず、いまもなお天翔丸たちが活き活きと生きている……そう実感した次第です。

 自分が生み出した天翔丸たちをこの先も育てていきたいですし、彼らを通して書きたい話もたくさんあります。

 なにより私が、鞍天を書くのが楽しい! だからこちらでつづきを書いていくことにしました。仕事でも義務でもなく、楽しい趣味の一つとして書いていこうと思います。

 鞍天のラストはすでに決まっていますが、そこに至るには長い長い道のりを歩んでいかなければなりません。正直、はたしてそこにたどり着くことができるのかどうか、自分でもわかりません。でも頭の中にあるラストシーンをめざしながら、天翔丸たちと共に筆力と情熱が続く限り歩いていこうと思います。

 とはいえ、現在本業となっております脚本業が忙しくなれば、長く更新が止まってしまう可能性は大です。早くも来年多忙になりそうな兆候がありますが……ご興味と忍耐のある方は、お暇なときにどうぞのぞきにきてください。


 まずは感想ページにてリクエストがありました短編を公開いたします。2004年5月発売ファンタジアバトルロイヤルという雑誌に掲載された『かごめ』、旧サイトで公開した『山姥の姫』、その他短編をいくつか。手元に残っている鞍天の原稿をひととおりこちらで公開します。

 短編のアップが終わりましたら、四巻へ。三巻はやたら長くなってしまいましたが、四巻以降は一、二巻のように2〜3編の話でくくって一冊とするつもりです。

 では、二巻のあとがきでやったアニメ風予告をこりずにやります。



【鞍馬天狗草紙四・予告】

  鞍馬山の斜面を駆け上がってくる怒濤のような水流。

  陽炎が天翔丸を背に隠し、

陽炎「何者だ、名乗れ」

  激流の中から半人半魚の男が現れ出て、その場にひざまずく。

半海「我が名は半海(はんかい)。新たな鞍馬天狗にお願いの儀があって参りました」

天翔丸N「山の斜面を水と共に駆け上がってきたのは、先代の鞍馬天狗に仕えていた眷属たち。そいつらをはじめ、皆が俺にさまざまな要求をし、試練をつきつけてくる」

   ×   ×   ×

  半海が血走った目でにらみながら、

半海「死に瀕した者を救うことができますか?」

  琥珀が唇をかみながら泣きそうな顔で、

琥珀「何をしたらうちを眷属にしてくれるの?」

  由良が手から紫の火炎を発して、

由良「滅ぼしの剣で私の炎を消しつくすことができますか?」

  八雲が冷ややかな目で、

八雲「何が正で何が邪か、判断できるのか?」

  陽炎、はりつめた表情で、

陽炎「彼らを説き伏せることができますか?」

  栄術がまっすぐこちらを見て、

栄術「天狗の本能がないおぬしに、山を護ることができるのか?」

   ×   ×   ×

  黒金が愕然とする。

黒金「鞍馬の眷属になるためじゃなかったのか……?」

  目を伏せている陽炎。

黒金「まさか……そんなことのために鞍馬天狗を待っていたのかァ? そんな莫迦げたことのために十五年も!!」

  陽炎、うつろに宙を見て、

陽炎「私の願いはまもなくかなう……天翔丸がかなえてくれる……ーー」

   ×   ×   ×

  鞍馬川のほとり。

  陽炎が黒衣を脱ぎ、銀色の炎の紋様がある上半身を冷気にさらす。

栄術の声「陽炎の身に刻まれている紋様を火炎痕という。銀色のあれが紅に変色したときーー」

  銀が紅に変色し、紅蓮の炎となって陽炎の身を包む。

陽炎「があああ……っっ!」

  激痛にのたうち回る陽炎。

天翔丸N「俺はーー陽炎の過去と正体を知る」

   ×   ×   ×

  愛宕山の山中。

  天翔丸とうずくまる陽炎を、栄術と愛宕の眷属天狗たちが取り囲む。

天翔丸N「『鞍馬天狗草紙四 深淵を浄めるもの』」

  天翔丸、栄術に七星の切っ先をつきつけ、

天翔丸「翼のない天狗がどう生きていくか、見定めたいんだろ。だったらつべこべ言わずに黙って見てろ」

  黄金の目で凄んで。

                        (予告・終)



 次巻、自ら鞍馬山の主となった天翔丸がさまざまな困難にぶつかり、そしておそらく皆さんがもっとも気になっているだろう陽炎の正体が明らかとなります。陽炎の正体と過去を知った天翔丸が何を思い、どういう行動にでるのか、そのあたりが見所になるかと。三巻ではほとんど出番のなかった黒金も活躍する予定ですので、どうぞお楽しみに。


              2012年11月16日 成田良美


※別ページにて『かごめ』の掲載を開始しました。トップの「作者・成田良美」をクリックしてごらんください。


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