第6章-1:狗奴国の暗躍と「物の理」の報復
狗奴国の評定の間。
「近頃、何やら邪馬台が力を強めておるようで御座いまする」
重鎮の報告に、王の拳に力が入る。
「むぅ。卑弥呼は老いたと思うておったのだがのう」
「何やら、鉄の利用も増えておる由。それに、自分たちで鉄を作ろうとしているという噂も」
「壱与とか言う小娘が『理の巫女』と呼ばれておるようで御座います。その力とか噂されておるようで御座いますな。こちらの調べでは、民の前にも良く姿を見せておるそうで御座います」
「ふむ。ではその娘、攫うなり始末するなりすれば…のう」
「御意に御座います。鬼道であれ理とやらであれ、突けば死ぬのじゃから。奴ら、油断し過ぎよ」
「卑弥呼も老いたのであろうよ」
「うははは、違いない!」
「では、そなたに任せて良いか」
「任せておけ、うははは」
王が去った後も、重鎮たちは楽しそうに笑っていた。
その様子を、超小型の虫型偵察機と人工衛星がすべてモニターしていた。
『天の鳥船』のブリッジ。
「油断しすぎ…ねえ」と旅人がニヤニヤする。
「噂レベルでしか情報を得ておりませんから」と鳥船。
「どっちが油断してるのかなあっと」
「観察、継続中」
壱与が13歳になったばかりの頃のある日。
邪馬台国の工房で、壱与とイブキ、そして数人の職人たちが集まっていた。
「この前に届いた鉄、なかなか良かったですね」
壱与が言うと、イブキは腕を組んで唸った。
「半島から来る鉄は確かに良い。でもあれはあくまで『素材』です。俺たちがもっと自由に『形』を決められれば、もっと良い道具が作れると思うんです」
「自分たちで鉄を造るということね。イブキがやるのなら止めないけど、前にも言った様にレンガからだよ」
壱与が、念を押すがイブキ達の意思は固いようだった。
イブキ「はい。そのためにももっと高い熱が要る。木炭じゃ足りない。何か別の燃料を考えないと」
職人の一人が口を開く。
「山の方で、変わった黒い石を見つけたって話がありますが。あれは使えませんかね」
イブキ「黒い石?」
壱与「石炭かな?」
職人「火をつけると、よく燃えるそうです。ただ、物物しく煙が出るんで体に良くなさそうなんですわ」
壱与「木から木炭作るみたいに、一度蒸し焼きにしてから使うらしいよ。そのためにはまた新しい窯が要るけど」
イブキが苦笑いした。
「また窯っすか。最初のレンガを焼くの、苦労したっす」
職人「でも、あの時よりはマシだろう? あの時は何もなかったけど、今はある程度のレンガもある。職人も増えた」
イブキ「まあ、やるだけっすね」
壱与「そういうこと。でも、まだ先の話だね。今は目の前のことをやろう」




