第2章:鬼道の進化と村の井戸
基礎編をすべて修めたことで、いよいよ「応用編」へと進むことになった。
基礎編の最終日、アイは提案していた。
『今度は卑弥呼様も連れてきてね。丘の上に棒を固定して、できればこれを毎日書き留めて欲しいんだ』
卑弥呼の許可のもと、丘の上に一本の垂直な棒が立てられた。太陽の影を観察する一年がかりの仕事だ。
アイは春分、秋分、夏至、冬至の概念を教え、毎日測った影の中で最も短い位置(南中)を比べ、夏至や冬至を割り出す方法を伝授した。
これを見た卑弥呼は目を見開いた。
「これは、鬼道の秘技ではないか……」
鬼道とは、過去からの膨大な経験則による未来予測(天候や吉凶)の伝承だ。科学的に見ればおかしな部分も多かったが、太陽観察による疑似太陽暦の導入は、卑弥呼の鬼道を劇的に強化することとなった。
太陰暦の場合の季節のズレが、疑似太陽暦によって補正され、田起こし等の予測が、より正確に行えることで、民からの支持も向上して行く事になる。
そんなある日、同室の巫女であるワカから相談を受けた。ワカは幼馴染の行商人見習いから、自分の故郷の不穏な噂を聞いていた。
「井戸の水量は豊富なはずなのに、なぜか水位が下がって水が出ない」というのだ。
これは卑弥呼案件となり、ナツ同行のもと、壱与とワカ、そして卑弥呼が指名した親方クラスの職人が現地へ向かった。
親方「底の方から、水音がするんだが」
ワカ「あ、ホントだ。でも暗くて見えない」
壱与「ワカさん、これ持って、私はこっち。……ワカさん、私の鏡に光当てられますか?」
ワカ「え、ええ? ……これで良いか?」
壱与「親方さん、これで見えませんか?」
親方「おお! 凄えぜ。良く見えるぜ!」
ワカ「私も見る!」
壱与「あ、ワカさんが動いたら光がズレちゃいます」
ワカ「そうだった」
などと騒ぎながらも井戸を調査した壱与達は、底付近に不自然な流出口(亀裂)を発見する。
職人がそこを塞ぎ対応を完了させると、さらに壱与は笑顔で言った。
「せっかく持って来ましたし!」
そうして設置されたのが、教材として学んだ「手押しポンプ」だった。深井戸から楽々と水が湧き出す様子に、村人は神の技だと平伏した。
解決後、卑弥呼の指名により、ワカは正式に壱与の補助的な立場に任命される。




