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決闘

騎士、グレン。

彼の槍術は、もはや武技という枠組みには収まらない。一突きで大気を圧縮し、その衝撃波だけで山脈の形を変えるという。戦場において彼が歩いた跡には道ができ、彼が立ち止まった場所は不落の要塞となる。

だが、その「力」の根源にあるのは、徹底した自己犠牲と狂信であった。

「……リアム様、覚えていますか」

決闘を翌日に控えた夜。ギルドの修練場で、一人槍を磨くグレンの脳裏に、18年前の光景が蘇る。

魔物が村を襲ったあの日。幼かったグレンは、巨大な牙を持つ魔獣の前に立ち竦んでいた。

だが、その時。隣にいたリアムが、恐怖で引き攣った顔(グレンには「慈悲深い怒り」に見えた)で、震える指を魔獣に向けたのだ。

直後、魔獣は原因不明の爆発を起こし、肉片となって霧散した。

「……俺たちのリーダーは、神に選ばれた男だ」

その日から、グレンの槍はリアムという神を守るための「杭」となったのである。

「グランよ。貴様の目は節穴だ。リアム様が放つ『無能のオーラ』こそ、強者が到達した無我の境地だと、なぜ気づかぬ」

グレンの槍から放たれた一突きが、闘技場のダミー人形を、概念ごと消滅させた。


現在、ギルド【マスターピース】は、かつてない熱狂と殺伐とした空気に包まれていた。

受付嬢のサオリは、王国中から殺到する「決闘の賭け」の注文を捌きながら、無機質な笑みを浮かべていた。

「倍率は……リアムさん勝利が1.01倍。グランさん勝利が500倍。……ふふ、当然ですね。リアムさんが負けるなど、太陽が西から昇るよりあり得ないことですから」

その脇で、リアムは今にも泡を吹いて倒れそうだった。

(……1.01倍!? 全国民が僕の勝ちに全財産賭けてるってこと!? もし負けたら、僕、文字通り国民全員に殺されるんじゃ……)

「リアム様ぁ! 明日の勝負服、選んできましたよ!」

リリーが持ってきたのは、純白の法衣。

「リアム様、マッサージしましょうか? どこを触ってほしいですか?」

マリーが獰猛な笑みで、リアムの太ももを揉みしだく。

さらに、紫髪の魔女イブが杖を鳴らしながら乱入した。

「ガハハ! リアム様! 明日の決闘、もしあのグランとやらが少しでも汚い真似をしたら、私が闘技場ごとあの男を消滅させてやりますからね!」

「イブ、それはやめて! 犯罪だから!」

リアムの制止も、彼女たちには「慈悲深い配慮」としか受け取られない。

そこに、白衣を翻した茶色のゆるい天然パーマをふわふわとなびかせる女――薬剤師のアクアが歩み寄る。

彼女は白衣に眼鏡、おっとりとした雰囲気を纏っているが、その瞳の奥にはマッドサイエンティストの狂気が宿っていた。

「リアムさぁん。明日のために、特別な『栄養剤』を作ってきました。……これを飲めば、どんな苦痛も感じなくなりますし、心臓が止まっても動き続けられますよぉ?」

「……それ、毒じゃないの?」

「ふふ、愛の結晶ですよ。……あ、でも夜に飲むと、少し『体』が熱くなりすぎるかもしれませんけどぉ」

アクアが眼鏡を指で押し上げ、艶めかしく微笑む。

リアム、グレン、マリー、リリー、カエデ、イブ、アクア。

最強パーティの七人が一堂に会するその光景は、王国の終末を予感させるほどに、凄まじい威圧感を放っていた。


夜更け。一人、宿舎のバルコニーで月を見上げていたリアムの背後に、気配もなく「それ」は現れた。

「ホッホッホ……。良い月じゃのう、リアムよ」

「……ギルドマスター」

白髪と髭の老人、賢者ムドー。彼はリアムの隣に並び、柔和な、しかし一切の感情を感じさせない瞳で月を見上げた。

「ワシも長く生きてきたが、これほど面白い舞台はそうそうない。王国第2位のグラン……奴は、お主の『正体』を見破ったつもりでおる。滑稽なことよな」

「……ムドーさんは、僕が本当は……」

「お主が何者であるかなど、些細な問題じゃ。大事なのは、お主が【マスターピース】の象徴であるということ。……もし明日、お主が無様な姿を晒せば、ワシが18年かけて積み上げたこのギルドの名声が汚れる」

ムドーがリアムの肩に、カサカサに乾いた手を置く。

その瞬間、リアムの全身を、氷のような魔力の波動が駆け抜けた。

「負けたら……ワシの地下迷宮で、死ぬまで『教育』し直してやるから、安心するがよい。ホッホッホ……」

ムドーは霧のように消えた。

リアムの膝が、カクカクと音を立てて震え出す。

(……逃げられない。グランに殺されるか、ムドーさんに壊されるか。二つに一つだ……!)


自室に戻ったリアムを待っていたのは、イブとアクアの二人だった。

「リアム様……決闘の前、しっかり『魔力』を循環させないとダメですよ」

イブがネグリジェを脱ぎ捨て、全裸でベッドに跪いている。

「リアムさぁん、私の特製栄養剤……直接、私の口から飲ませてあげますねぇ」

アクアが白衣をはだけさせ、下着をつけていない豊満な胸をリアムに押し当てる。

「あ、あの、二人とも……明日は大事な日なんだから、休まないと……」

「馬鹿にするなぁ! リアム様の緊張を解くのが、私の役目だと言っているだろう!」

イブがリアムをベッドに押し倒し、慣れた手つきでベルトを外す。

「ふふ、アクアの薬……効いてきましたかぁ?」

アクアがリアムの首筋に舌を這わせ、耳元で熱い吐息を漏らす。

彼女の薬のせいか、リアムの身体は自分の意思に反して、芯から熱く、疼き始めていた。

「イブ……! アクア……っ!」

「リアム様、今日は……首を締めるだけじゃ足りません。私の……中まで、貴方の『毒』で侵してください……っ!」

イブがリアムの指を、自らの湿ったアナルへと導き、貪欲に締め付ける。

「あはぁ、リアムさん……。私の口、寂しいですよぉ? ほら、あなたの『特等席』……食べさせてくださいねぇ」

アクアが眼鏡を外し、欲情に濡れた瞳でリアムの男根を包み込み、掃除機のような吸引力で愛撫を始めた。

「んっ……ぁ、ぁぁっ!!」

最強の魔女の緊密な締め付けと、マッド薬剤師による魔薬を絡めたテクニック。

二人の美女による執拗な「奉仕」は、夜が明けるまで続いた。

夜明けの光が部屋に差し込む頃。

そこには、快楽の果てに抜け殻となったリアムと、栄養剤(惚薬)の影響で異常に元気になった二人の少女の姿があった。

「さあ、行きましょう。……我らが神、リアム様。……世界に、貴方の『真実』を見せつける時です」


王都闘技場。

収容人数五万人を超える客席は、一箇所の空席もなく埋め尽くされていた。

中央の舞台。そこには、大剣を地面に突き立て、目を閉じて精神を統一するグランの姿がある。

「……来たか」

グランが目を開ける。

反対側のゲートから、ゆっくりと……というより、腰が抜けそうなので慎重に歩いてくる黒髪の青年、リアム。

その後ろには、グレン、リリー、マリー、カエデ、イブ、アクア、そしてサオリ。

最強の布陣が、まるで死神の行列のように付き従っている。

観客のボルテージは、最高潮に達した。

「リアム! リアム! リアム!!」

(……怖い。みんな、そんなに叫ばないで。今すぐ地面が割れて、僕を飲み込んでくれないかな……)

「始めよう、リアム。貴様の化けの皮を……私が、全王国民の前で剥いでやる!」

グランが巨大な魔力を解放する。

対するリアムは、ただ震えながら、無意識に右手を前に出した。

その背後で、**【最強の守護霊】**が、これまでにないほど禍々しく、その瞳を見開いた。

王国史上、最大かつ最悪の「勘違い決闘」の幕が、今、切って落とされた。

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