小さなすれ違いと、心の波紋
翌日、学校。
夏海は朝から落ち着かない気持ちで教室に入る。
昨日の悠真とのデートの余韻がまだ胸に残っていて、何度も手元のノートに視線を落としては心を落ち着けようとする。
(悠真……昨日のこと、ちゃんと覚えててくれてるかな……)
そのとき、教室の入り口に里奈の影を見つける。
彼女は少し笑いながら、でもどこか緊張した様子で夏海を見つめていた。
(里奈……どうしてここに……?)
夏海は無意識に肩をすくめ、目を合わせないようにする。
その様子を見て、里奈の表情が一瞬だけ曇る。
「……あの、夏海ちゃん」
小さな声で呼ばれ、夏海は振り向く。
「な、何?」
声が少し震える。
里奈は深呼吸をして、少しずつ言葉を紡ぐ。
「昨日……悠真くんと一緒にいたでしょ?
あの……ごめん、勝手に気にして……」
夏海は驚きつつも、少し肩の力が抜ける。
「ううん、大丈夫……別に、悪いことしてないし」
そのやり取りを、教室の隅で美月がこっそり見ている。
にやりと笑い、目を輝かせながら二人を観察する。
「ふふふ……やっぱり面白い展開になっとるわ。まだまだこれからじゃな」
放課後、悠真が夏海を呼び出す。
「夏海、ちょっと話したいことがあるんじゃ」
その声には真剣さと少しの戸惑いが混ざっている。
夏海は胸の奥で小さく高鳴るものを感じながら、うなずく。
二人で校庭の隅へ歩きながら、悠真がぽつりとつぶやく。
「わし……里奈のことも気になる部分があっての……夏海に迷惑かけるかもしれん」
夏海は息を整え、微笑みながら答える。
「わたし……悠真が迷ってるなら、ちゃんと考えていいよ。
でも、わたしも悠真と一緒にいたいって気持ちは変わらない」
悠真はその言葉を聞き、少しだけ肩の力を抜く。
「……ありがとう、夏海。わしはお前と一緒に歩きたいんじゃ」
その瞬間、遠くで里奈が二人の様子を見つめ、胸の奥がざわめく。
「まだ、諦めない……私にも、まだできることがあるはず」
美月は影からこっそり笑みを浮かべ、目を細める。
「ふふ……まだまだ、面白くなりそうやわ」
夕陽に染まる校庭で、三人の心は小さな波紋を描きながら交錯する。
すれ違いと想いの揺れはまだ完全には解けない。
でも、少しずつ近づき、少しずつ理解し合うための一歩が始まったのだった。




