交差する視線と、心の決断
休日の街。夏海は少し早めに家を出て、悠真との待ち合わせ場所に向かっていた。
胸の奥がざわざわして、足取りが少し重い。
昨日の帰り道、悠真と少し距離を感じたせいか、心の揺れが収まらないのだ。
(悠真、今日はどんな顔してくれるかな……)
角を曲がると、悠真がすでに立っていて、手には小さなカフェの紙袋が握られていた。
「お待たせ、夏海。ちょっと寄ってみたいとこあるんじゃ」
彼の声は柔らかく、でも少しだけ真剣さが混ざっている。
夏海は胸がドキドキしながら頷く。
「うん……行こう」
二人で歩きながら、少しずつ心の距離を確かめるように歩幅を合わせる。
だが、夏海の視線の端には、いつもどこかで里奈が影のように見ている気配があった。
(あれ……もしかして今日も見てる?)
胸がぎゅっと締め付けられる。
カフェに着くと、悠真は紙袋を差し出す。
「夏海、これ……ちょっとしたお礼じゃ」
袋の中には、二人の好きなスイーツが入っていて、夏海の頬が自然に赤くなる。
「ありがとう……嬉しい」
夏海はぎこちなく笑いながらも、手を伸ばしてスイーツを受け取る。
その手の温もりだけで、胸が熱くなる。
しばらくカフェで過ごした後、二人は近くの公園に移動する。
ベンチに座り、夕陽が差し込む中、悠真がふと真剣な顔で夏海を見る。
「夏海……正直に言うけど、わしの気持ちは夏海だけじゃない。
里奈のことも……少し気になる部分があるんじゃ」
夏海は一瞬、胸が冷たくなるのを感じる。
でも次の瞬間、深呼吸をして小さく笑う。
「わかってる……でも、それでもわたし、悠真と一緒にいたい」
悠真はその言葉に少し驚き、そして真剣な表情で頷く。
「……わしもじゃ。夏海と一緒にいたいんじゃ」
その瞬間、遠くの茂みの影から、里奈が二人をじっと見つめている。
心の中で複雑な感情が渦巻く。
(夏海……悠真と一緒なの……でも、諦めたくない……)
美月もまた、街のカフェからこっそり二人の様子を見守る。
「ふふ……ついに、みんな動き出したな。楽しみやわ」
その表情には、少し意地悪で、でも嬉しそうな笑みが浮かんでいた。
夕陽が赤く沈み、二人の影が長く伸びる。
胸の高鳴りと微妙な距離感、そしてまだ残るすれ違いの可能性。
今日の出来事は、三角関係の中でそれぞれの想いを確かめる大事な一歩となった。
夏海は小さく息をつき、心の中で誓う。
(怖くても、揺れても、前に進む……悠真を絶対に逃さない)




