揺れる思いと、はじめての告白
翌日の放課後。
夏海は部活の後、校舎の裏庭で一人、息を整えていた。
胸の奥がまだざわざわして、心臓が落ち着かない。
悠真に自分の気持ちを伝えた昨日のことを、何度も思い返してしまう。
(わたし……ちゃんと伝えられたんだ……でも、まだ不安もある)
あのとき悠真が見せた笑顔、手の温もり、全部が心に焼き付いている。
嬉しいはずなのに、少し切なくて、少し怖い。
――悠真の心の中には、まだ里奈のこともある。
「おい、夏海!」
声に振り向くと、美月がにやにやしながら近づいてきた。
「なんやその顔。まだ悩んどるんか?」
夏海は顔を赤らめて首を振る。
「違う……でも、ちょっと考えてるだけ」
美月はふふっと笑い、肩を叩いた。
「ま、ええわ。今日はわしがお手伝いしてやるわ。ちゃんと行動せんと、悠真、里奈に持ってかれるで?」
その言葉で夏海の胸がぎゅっと締め付けられる。
(美月……やっぱり分かってるんだ……)
でも、その気づきが逆に勇気を与える。
夕暮れの校庭に、悠真が現れる。
「夏海、ちょっと話せるか?」
その声だけで、胸の奥がドクンと跳ねた。
「う、うん……」
二人は木の陰に並ぶ。
夏海は息を整えながら、勇気を振り絞って言葉を紡ぐ。
「わたし……悠真のこと、ずっと好きだった……」
悠真は少し驚き、でもすぐに真剣な表情で見つめ返す。
「……わしもじゃ。夏海が好きじゃ」
その瞬間、世界がゆっくりと止まったかのように感じる。
胸が熱くなり、手のひらが自然に触れ合う。
夏海は小さく息を吐き、涙が頬を伝う。
「嬉しい……でも、わたし、ちょっと怖い……悠真の気持ち、全部はまだ分からないから」
悠真は少し考え、そして優しく笑った。
「それでええんじゃ。焦らんでいい。わしはお前と一緒に歩きたいだけじゃから」
その言葉で、夏海の胸のざわめきが少しずつ静まる。
でも心の奥では、まだ里奈の存在が揺らめいている。
その瞬間、遠くから視線を感じる。
里奈。
静かに、でも確かに夏海と悠真を見つめるその瞳には、複雑な感情が滲む。
「……まだ、わたしにもチャンスはある」
里奈はそう自分に言い聞かせると、足取りを固め、校庭の端に消えていった。
美月はその様子を遠くで見て、にやりと笑う。
「うふふ……いいぞ、夏海。初めての告白、ちゃんと届いたわね。
けど、ここからが本当の戦いやで?」
夕陽の赤が二人を包み、胸の鼓動と心の揺れが重なり合う。
友情と恋、すれ違いと覚悟、すべてが絡み合った三角関係の始まり。
夏海は小さく深呼吸をして、自分の心に誓った。
(怖くても、諦めない。悠真のこと、絶対に逃さない……!)




