胸の決意と揺れる思い
放課後の校庭は夕陽に染まり、風がほんの少しひんやりしていた。
夏海はベンチに座り、制服の袖を握りしめる。心の奥でざわざわする気持ちを落ち着けようと、何度も深呼吸を繰り返す。
昨日見てしまった光景が、頭の中で何度も再生される。
悠真と里奈が、ほんの一瞬でも親しげに笑い合っていたあの距離感と笑顔。
胸がぎゅっと締めつけられて、心臓が飛び出しそうだった。
美月がにやにやしながら近づいてくる。
「ほーら、まだ揺れとるなぁ。夏海、顔真っ赤じゃん」
「そ、そんなことない!」
慌てて顔を背ける夏海に、美月の目は透かすように見つめる。
「まあええわ。あんたがどうするか、ちゃんと見届けるけぇ」
翌日、部活の後。
夏海は意を決して悠真に話しかけるタイミングを探す。
心臓は張り裂けそうで、手のひらは汗でびっしょりだった。
「悠真……あの、ちょっといい?」
悠真はにこっと笑ったが、どこか真面目な顔で頷く。
「おう、何かあったんか?」
夏海は一瞬ためらった。でも胸の奥で、勇気が少しずつ膨らんでいくのを感じる。
(もう逃げたくない。ちゃんと気持ちを伝えるんだ)
「わたし……あの、悠真のこと……」
言葉を探していると、悠真がそっと手を伸ばして、夏海の手に触れた。
全身に電流が走る。
「えっ……?」
声が震えるのを感じる夏海。
悠真は真剣な眼差しで彼女を見る。
「夏海……わし、お前がどうしたいか、ちゃんと聞きたいんじゃ」
その瞬間、背後で小さな影が動く。
里奈。じっと二人を見つめながら、胸の奥で複雑な感情が渦巻いていた。
(悠真……夏海ちゃんと……?)
体が緊張し、胸がざわつく。
諦めるわけにはいかない。
「まだ、わたしにもチャンスはある……」
里奈は影から少し前に出るが、まだ二人に気づかれない距離で見守る。
夏海は深呼吸を一つして、勇気を振り絞る。
「わたし……悠真が好き……ずっと、好きだった」
悠真の目が一瞬驚きに見開かれ、すぐに真剣で優しい笑顔に変わった。
「……わしも、夏海が好きじゃ」
夕陽の光が二人を包み、心臓の鼓動が二人だけのリズムになる。
でも悠真は少し考える。
(でも、里奈にも少し……気持ちが残っとるんじゃよな)
微妙な想いの揺れは残るけれど、今は夏海を真っ直ぐ見つめることが大事だった。
遠くから見守る美月は、にやりと笑った。
「ついに動き出したわね。見届ける価値あるわ」
友情も恋も絡み合った三角関係。美月だけが冷静に楽しんでいるようだった。




