月夜の兎はどう跳ねる?
この話には、玉兎の身体の異変と、鎌鼬の陰謀が含まれています。
苦手な方は風が泣く前に回避を!
そうでない方は風が泣くなんて慣れないことをすると言ったせいで悶える私でも嘲笑したあとゆっくりしていってくださいね!
引き摺られるままに月の光のさす方へ連れていかれる。
考えるのを止めてされるがままになっていると引っ張っていた少女が振り向く。
「そういや、名前いい忘れてた・・・。
ま、いいよね?私だし。
私の名は風間 太刀。
二つ名は限りなき颶風とかいうのを名乗ってる。
ま、あいつらと戻ってきた時に2時間で考えただけだけど。」
――2時間!?
二つ名を考える時間のあまりの短さに呆然とする。
――こちらは一週間以上悩み続けているのに・・・。
風間さんは口が開きっぱなしになっているのを見てクスリと笑い、ない胸の隙間から何処からともなく竹の水筒を何本も取り出す。
――あれは確か初めに貰った袋のなかにあった奴じゃ・・・?
「酒、要る?」
「・・・・・・。」
――もしかして・・・この人は僕が幻想入りさせられた事にかなり関係があるんじゃ・・・?
「ねぇ?ねぇってば!」
――なら、あいつらって言ってたやつらが賢者なのか・・・?
「・・・・・・いいよ。
無視すんなら。」
「ふぇ?」
考えることに夢中になっているうちに機嫌を損ねてしまったようで風間の目がかなり怖くなっていた。
「ちょっ・・・。
何かわからないですけどすみませんっ!」
「理由が分からないのなら許さないっ!
っと思ってたけどいいや、どーでも。
そろそろ目的地の月池に着くし。」
顔を真っ赤にして怒っていたのが嘘のようにいきなり声に抑揚が無くなって初めの喋り方に戻る。
「月池・・・?」
「真ん丸な池で、月の石が底に敷いてあるのサ。
月光の反射がかなり綺麗だよ。」
「月の石!?」
――妖怪たちが月へと攻め込んだとされている幻想の史実、月面戦争では石なんて運ぶ暇は無かったはずなのに・・・。
「驚いてるねぇ。
けど、私としてはかんたんなことなんだよ?
風さえあれば何処にでも行けるんだ、鎌鼬だから。
月の都に風があったおかげでいつでも侵入は簡単さ。
あのバカ共は毎回私にきづけないんだから笑いぐさだねぇ。
やっぱり死ぬ事を知らない奴はバカにしか成れないノサ!」
少女はケラケラと狂ったように笑いながら月をけなす言葉を吐き続ける。
依姫、玉兎、その他の月の都勢力をけなしおわった所でようやく落ち着いたのか、
また声の抑揚が無くなって感情が一気に感じられなくなる。
――この人、感情の起伏激しすぎでしょ・・・。
「ま、月の都の話はここらにしとくとして、
やっぱり月は見て愛でるものなんだよ!
私の一番好きな場所で見せてあげるんだ、感謝のあまりにポックリいくなよ?
・・・・・・さて、
ここが話題の月池さ。
思う存分楽しみな!」
背中に感じる明るさが最高潮に達したかと思った瞬間に投げられる。
「うえぇぇえっ!?」
水に落ちる前に体勢を元に戻し、
なんとか濡れる被害を長くなっている髪が濡れるだけにとどめられた。
「いきなり投げるなんてひどいじゃないで・・・。」
そこまで言ったところで言葉が出なくなった。
物理的には出るのだろうけれど、目の前に広がった世界に目を奪われてしまっていたのだった。
洞窟の天井にまるでそのためだけにあつらえたかのような穴が開き、
そこにはめ込まれるように大きな満月が妖しくも言葉奪われる美しき光を差し込ませる。
そして、その穴の真下には白とも灰色ともつかぬ色の小石が敷き詰められた池が穴とぴったり同じ大きさに見えるように作られていて清水で満たされている。
月の光をもってして照らされたソレ、はまるで地上の満月のようであり水底の石の無秩序な並びすらも芸術品の群れであるかのような煌めきを放っている。
とにかく、それは美そのものだった。
「ふわあぁぁ。」
「綺麗だろ?
部下たちを総動員させてあれこれさせた甲斐があるってもんだよ!
・・・・・・で、酒の味はどうだい?」
「え?
・・・ぐっ。
ううぅぅぅぅぅっっっ!」
月の光に照らされていた体が風間の言葉をきっかけにして熱を放ち始める。
光のせいだと薄々気付いているというのに上下の月から目を離せない。
思考を乱される。
得体の知れないモノに頭の中を掻き回されているみたいに気持ちが悪い。
・・・なのに、心地がいい。
雲の上でふよふよと浮かんでいっているみたいに気分が高揚している。
矛盾した感覚に頭をぐちゃぐちゃにされて気が狂いそうだ。
「いったい・・・・・・何・・・が・・・。」
そこで、意識が途切れた。
「何をしているっ!
風間ァ!」
何処かから響くアーサーの声が耳に響いていた。




