金月ノ夢兎
この話は、アーサー本気モードと、兎の狂気が含まれます。
苦手な方はお月見の準備でもしながら回避を。
そうでない方はゆっくりしていってくださいね!
あの方から連絡を受けて現場に向かってみれば、ついた頃には既に大変な事になってしまっていた。
玉兎には満月の光に含まれる微弱な狂気すら毒となり得る。
此処で増幅された光なんて浴びたら死ぬかもしれないというのにっ!
「何をしているっ!
風間ァッ!」
――ここの場所にだけは来させてはいけないと主人から頼まれたはずの貴様が何故っ!
あの方から頂いた純白の曼珠沙華を懐へ仕舞って使い慣れたメイスを取り出す。
前回の異変やら日常的に使っていたごつめな物ではなく、本命の金細工の白銀色のメイスである。
「猫妖精の騎士王 アーサー参る。
カリバーンッ!」
ミスリル銀と魔力で強化された金の塊が空気を切り裂いて幼き見た目をした諸悪の根源に襲いかかる。
――玉兎を助けても奴が起きていればまたそこへ引きずり込みかねない。
そう、判断したからであるが・・・。
「おぉぅ。怖い怖いねえ。
・・・・・・けど、攻撃をもうちょい真面目にしろ。
つまらん。」
鎧で着飾った少女三人が音もなく現れ無言で打撃を封殺する。
「チッ!鎌鼬どもかっ!
王鎧ブリテンズロック!」
スペルを発動させるとともに
メイスと同じ材質の鎧に身を包んで鎌鼬達の刀を防ぎカウンターで白銀の光玉をぶつける。
間合いを取れただけで相手は無傷だ。
短期決戦にしないといけない今回はこいつらといささか相性が悪すぎるな・・・。
こいつの部下の鎌鼬は風を集めて傷を回復させていくので厄介極まりない。
「うあぁぁぁっ!」
意識を失っていた筈の夢殿が突然叫び声を上げる。
銀髪が波立ち、月光を集めたような金色へ染まる。
激しく頭を掻きむしりながら悲痛な叫びを喉が裂けんばかりに上げ、銀の髪が気持ち悪さを感じるような金へ染まり切ると共にまた気を失う。
・・・そして目を静かに開く。
――遅かったか・・・・・・。
緩やかに開かれた目は、紫水晶のような澄んだ紫色だった瞳が、ヘドロのような濁った黒へと染まっていた。
「アハハハハハハッ!」
かきむしって乱れたままの髪を振り乱し、狂笑をまき散らす。
穏やかであった面影が悦びの表情に塗りつぶされ、
何処を見ているか分からないような目をしたままにコチラを視る。
「キャハハハハ!
ナンカイルーっ!
双銃デュアルリボルバー!」
「面白いっ!夢兎が堕ちたらこんなふうになるんだ!
同胞どもかかれっ!宴の時間だ!
風宴 つむじの夜会!」
腰に差していたリボルバーに濁った色の魔力を注いで二丁の拳銃へ分離させていきなり撃ってくる。
そして、それを向かい打つ鎌鼬達。
――アレってもうちょい後で出る奴のはずじゃ!?
「コールナイトケットシー!
ガウェイン!ランスロット!」
「「承知!」」
漏れてコチラに飛んできた弾を白猫と黒猫の騎士達が大盾で弾を二人がかりで弾いて、
大きく後ろへ吹き飛ばされる。
――アレ?
「アーサー殿、あ奴の攻撃は重過ぎるですぞ!?」
「奴は神か何かなのですか!?
神力を使うなんて知らぬのですっ!」
「なんだとっ!」
――あの方からもそんなことひとつも聞いてないぞ!?
「ライオネル!
主人を呼んできてくれ!
恐らく長くは持たぬっ!」
キジトラ柄の猫をマントの下から引っ張り出して連絡用として放り投げ、
後ろから飛んできた弾をメイスで叩き潰す。
――風間もかなり苦戦しているようだし、
桜様か荒神さま辺りが来なければなんとかできないだろう。
私にできることと言えば奴を此処に止めて置くこと位だ。
「お前ら、行くぞ!
円卓の猫騎士団!」
マントの下に開いておいた入口からわらわらと騎士ケットシー達が湧き出て金の兎へ弾を投げつけていき、
それに指揮を加えて弾幕を成す。
――どれぐらい持てばいいのだろうかな・・・。
撃墜されていく猫や鎌鼬達を眺めながら、
この絶望的な状況の打開策を探る。
――――うん、絶対に単位が時間に映る前に落ちるわ。
助けて、主人。




