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第24話 初めてのお客さん!

メイメイと俺は、お互いの名前を一度ずつ呼び合った後、呆然とその場に立ち尽くし、ただ見つめ合っていた。


「ヤリスだって?!」


メイメイの後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきて、

やがて扉を越えて拠点の中に姿を現したラムダさんとそのパーティーメンバーたちは、信じられないといった表情で、呆然と俺を見つめ始めた。


俺は自分の目を信じられず、メイメイと、その後ろに立つラムダさんのパーティーメンバーたちを交互に見た。


キノコを食べすぎて、幻覚を見ているのか?

やっぱり毒キノコだったのか……。


でも、幻覚にしては、メイメイの目に浮かぶ涙があまりにもリアルだった。


「あ……あの……粗末なところですが……中へどうぞ……」


誰も口を開かないので、俺はぎこちなく両腕を伸ばし、拠点の中に入るよう身振りで示した。


「ヤリス!!」


メイメイがいきなり俺に飛びつき、息が詰まるほど強く抱きしめた。


「うっ……息が、息が苦しい……」


彼女の感触、体温は、何よりも本物だった。


「このバカ! どれだけ心配したと思ってるの?! けがは? 大丈夫なの?」


メイメイは俺を抱きしめるのをやめ、しばらく俺の体に触れながら、状態を確かめ始めた。


「はは、俺は大丈夫だよ、メイメイ! それより、どうやってここまで来たんだよ!」


思いがけない再会に、思わず声が弾んだ。メイメイと顔を見合わせていると、ラムダさんが微笑みながら近づいてきた。


「本当に予想もしなかったことだな……まさかヤリス、お前が初めて『開かずの扉』の向こうを発見した人間になるとは……」

「え……? それってどういう……あ! でも、どうしてそっちの扉から入ってきたんですか?! 『光の柱』から歩いてきてたんじゃないんですか?!」


『光の柱』という言葉を聞いた途端、ラムダさんとメジさんの表情が変わった。


「ははは、どうやら話すことがたくさんありそうだな!」


ラムダさんは微笑みながら、俺の肩を何度か叩き始めた。


〈ぐうう~〉


「あ……あっ!」


メイメイのお腹の音が、はっきりと響き渡った。

メイメイは恥ずかしそうにお腹を押さえ、顔を赤くして、うつむき始めた。


メイメイは空腹を我慢できない性格なのに……彼女のお腹が鳴るのは、初めて聞いた。


いつもお腹をしっかり満たしている友達だったからだ。


「ははは、お腹が空いたのか、メイメイ?」

「う……うるさい! カロリーを補給する時間もなかったんだから……」

「それじゃあ皆さん、先に食事にしますか?」

「おお! あるのか、食べ物が!」


俺の言葉を聞いたラムダさんとパーティーメンバーたち、そしてメイメイの表情が、一瞬で明るくなり始めた。


◇ ◇ ◇


まったく予想もしなかった、突然のお客さんの訪問!


彼らがなぜ扉の向こう側から現れ、なぜそこにメイメイまで混じっているのかは、大いに疑問だった。


ひとまず、食事を用意する前に少し聞いた話では、

ラムダさんも、俺がここにいるとは思っていなかったらしい。

ただ、痕跡が『根』で途絶えていたことから、ほかの根のどこかへ転移したのではないかと考え、それで急いで来たのだという。


俺が本当に根を伝ってダンジョンのどこかへ転送されたのなら、長くはもたないだろうから。


でも、『開かずの扉』の前まで来ても俺の痕跡は見つからず、絶望していたところ、この扉を塞いでいた『根』がすべて消え、突然『開かずの扉』が開き始めたのだという。


『根』……いったい、ラムダさんの言う根って何なんだ……。


まだ何がどうなっているのか、まったく見当もつかないけど……お客さんが来たのだから、まずもてなすのが宿屋の息子の務めじゃないか。


何はともあれ、あれほど待ち望んでいたラムダさんのパーティーだ!


ここで暮らすのは、俺一人ではなく、全部で8人になったわけだから。

今回の料理は、大量調理の華と呼ばれるシチューにするつもりだ。


もちろん、宿屋「スターウッド」の『高カロリー特製シチュー』には及ばないだろうけど……。

俺だって基本はできるんだぞ!


脂と肉が程よく混じった氷竜のあばら肉を、食べやすい大きさに切って鍋で炒めた後、

氷竜のあばら肉はいったん取り出し、氷竜の脂で切っておいたジャガイモを炒める。

ジャガイモの表面に火が通ったら、水を入れてから、


「点火!」


点火スキルで火力を集中させ、素早く水を沸騰させる。

水が沸騰し始めたら、取り出しておいた氷竜のあばら肉を入れ、

ジャガイモに火が通ったと思ったら、魔力キノコと粗く挽いた小麦粉を入れ、とろみがつくまで煮て、


刻んだニンニクとハーブ、コショウ味の実の粉を入れ、最後にラムダさんのパーティーメンバーの『ムジ』さんからもらった『超圧縮塩』で味を調えれば……。


「ヤリス……何か手伝うことある……?」


『完成』と叫ぼうとしたところで、空腹で死にそうな顔をしたメイメイが、厨房の扉を開けて入ってきた。


「無理するなって、メイメイ! 座ってなよ」

〈くん、くん〉

「へえ……いい匂いね? 何、これ?」

「ああ、肉のシチューを作ってみたんだ」

「お肉?! お肉もあるの?!」


メイメイの目が、これまでになく大きく開き始めた。


「ふふふ……期待していいぞ、メイメイ。今まで食べたどんな肉よりも、おいしいはずだから」


◇ ◇ ◇


俺が用意した拠点の食堂に座り、シチューを食べ始めた人たちの表情が幸せそうで、俺まで笑みがこぼれた。


食事をしながら、俺はそれまでよく知らなかったラムダさんのパーティーメンバーたちの名前と役割を、一つずつ知っていった。


- メイメイ:女/俺の親友

「ん~、おいしい!! ありがとう、ヤリス!」

【経験値 +40】


- ラムダさん:男/ラムダパーティーのリーダー

「いやあ、これはうまいな、ヤリス!」

【経験値 +20】


- ナランさん:女/海を渡ってきた暗殺者。狩りと追跡担当、偵察の達人。クール。

「 ……味は、いい。」

【経験値 +10】


- ヒリットさん:女/ヒーラー、恥ずかしがり屋に見える。

「私の分まで……あ……ありがとうございます……」

【経験値 +20】


- ムジさん:男/パーティー内で戦闘以外のすべてを担当する人。豪快だ!

「干し肉と魔獣の肉ばかりだったからな……久しぶりにまともな肉料理を食うと、涙が出てくるぜ……」

【経験値 +30】


- テンさん:男/パーティー内のタンク兼近接攻撃担当。ラムダさんより体が大きい!

「この肉、どこかで食べたことがあるな……この味、覚えがあるんだよな……」

【経験値 +20】


『やっぱり、人に料理を作ってあげても経験値が入るんだな! これは結構実入りがいいんじゃないか?』


- メジさん:男/150歳を超えると思われる老人、[大魔法使い]。この国で学べる魔法の93.2%を習得したと聞いた。

「待て……このキノコは……」

【経験値 +20】


シチューを食べている途中で、その中のキノコを見つけたメジさんは、目を細めてキノコをじっと観察し始めた。


「あの……メジさん? 何か問題でも……」

「ほほ、いえ、ヤリス君……ただ……このキノコ、生のものを確認させてもらえますか?」

「あ! もちろんです。まだたくさん残ってるんですよ! 待っててください!」


俺は厨房へ駆けていき、料理に使った残りのキノコを持ってきて、メジさんに渡した。


「?! いや……こ……このキノコは……」


キノコの姿を確かめた瞬間、細めていたメジさんの目が、かっと見開かれた。


「え……な……何か問題でもあるんですか……?」


メジさんの反応に、皆がシチューを食べるのをやめ、俺とメジさんを見つめ始めた。


「ヤリス君……本当にこのキノコを食べて暮らしていたんですか……?」

「え? あ……はい。結構おいしかったですよ~。まあ……最後のほうは飽きちゃいましたけど……」

「いったい、どれくらい小分けにして……」

「はい? 小分けにはせず、そのくらいのサイズのものを、一日に30個くらい食べてましたけど……」

「30個?!」

「メ……メジさん、やっぱりこれ、何か問題のあるキノコなんですか……?!」


メジさんはしばらく驚嘆するように俺を見つめ、それから口を開き始めた。


「このキノコは、周囲の魔力を吸収して濃縮し、一生成長を続ける希少なキノコ、『永生キノコ』です。空の光の力がある地上では決して育てられず、中級ローラーで構成されたパーティーが1か月以上かけて下るほど深い、深い地下ダンジョンで、一つか二つ、ようやく見つかるほど希少なものです……このキノコ一つが、王都で作られた最上級魔力ポーション2本に匹敵する値段なのですよ……」

「ええ?!」


魔法用品にはあまり詳しくないけれど、王都製の最上級魔力ポーションが、竜狩りやボス戦でもなければ使えないほど高価な代物だということくらいは知っていた。


そして、その魔力ポーション一本は、なんと小作農の2週間分の賃金に相当したと記憶している。

そんなキノコを、これまで一日に30個ずつ食べていたなんて!!


「このサイズに育つには、少なくとも数十年はかかるのですが……大事なのはそこではなく! この大きさの永生キノコに濃縮された魔力なら、魔力コントロールを学んでいない一般人は、たった一つ生で食べただけでも、体内に広がる魔力量に耐えられず、『魔力中毒』になるはずなのです!」

「ええ?! じゃあ、あのぴりっとするのは魔力のせいだったんですか? でも……俺は平気でしたけど……」

「それが疑問なのです……いったい、なぜ……」


メジさんとラムダさんは、またしても訝しげな目を俺に向けた。


「え……? 魔力中毒って?」


メジさんの話などお構いなしに、シチューを頬張っていたメイメイが、不思議そうに尋ねた。


メジさんは『魔力中毒』について、少し説明してくれた。


簡単に言えば、腹を壊すようなものだ。ただし、かなり危険な腹の壊し方。

自分の器を超えるカロリーや魔力を一度に取り込むと、うまく蓄えたり変換したりできず、体に新たな『穴』が開いてしまう。そして、そこから体内の魔力が、死ぬ寸前まで漏れ続けるという、恐ろしい現象らしい……。


メジさんによると、その穴はお尻の割れ目にできるらしい。……いや、そこって、俺が想像している『あの穴』のことだよな?


焼く、煮る、蒸すといった調理をすれば、濃縮された魔力が水分で薄まったり、いくらか空気中へ抜けたりするとはいうけど……こんな恐ろしいキノコを、これまで平気で食べていたなんて……鳥肌が立ち始めた。


でも、これまでは本当に何ともなかったのに……新しく得た能力のせいか? とも考えてみたけど、この永生キノコは、能力を得る前からずっと食べていたものだった。


◇ ◇ ◇


その後、メジさんから怪しむような視線を受けながら食事は終わったけれど、

まだ解けない疑問が山のようにあった。


それでも、焦ってあれこれ尋ねたりはしなかった。

メイメイもラムダさんも、俺を心配してダンジョン攻略を急いだせいで相当疲れがたまっていたようで、俺が用意した寝床に横になるや、皆ぐっすり眠り始めた。


「明日は、ちょっと案内でもしてあげようかな……」


そうつぶやきながら、俺も石像さんの下で眠りについた。

目を閉じると聞こえてくる、拠点のホールに響くほかの人たちの寝息といびき。


思わず、口元に笑みが浮かび始めた。

もう、一人ではなかった。


明日、目を覚ましたら――いよいよ『宿屋ヤリス』の記念すべき一日目が始まる!


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