第22話 解体作業が必要だ!
「ぐぬぬ……! はあ……駄目だ、完全にお手上げだ……メェは口であんなに簡単に開けたのに、なんで俺にはできないんだ……!」
「……」
そんな疑問が湧いた俺は、本の表紙を歯でくわえて引っ張ってみたが、まったく無駄だった。
その後、本を開けられそうなスキルを思い浮かべてみたが、関連するスキルは目の前にまったく浮かんでこなかった。
「絶対に何かあるんだよな、この本……ああ……中にはかなり役に立つことがたくさん書いてあったのに!」
俺はしばらく疑問を抱きながらぶつぶつ言った後、本を包んでいた布と一緒に、本を拠点へ持ち帰った。
俺の疑問と好奇心ばかりが募る本だったが……魔力の活用について新たな視点を得る助けになったのだから、それだけでもありがたい!
「石像さん~、本をよろしくお願いします。たぶん、これから忙しくなる予定なので、前みたいに長くお話はできませんが……戻ってくるときに、氷竜ステーキ! 持ってきますね! 味はなかなかのものですよ?」
持ってきた本を石像さんの足元にそっと置いた俺は、のこぎりとほかの道具を持って、拠点を出た。
しばらくは『肉屋の主人ヤリス』として生きていかなければならなかった。
◇ ◇ ◇
拠点の外へ出た俺は、手早く木の板と木の枝を組み合わせ、粗末だが使う分には問題のない『そり式の木製荷車』を作った。
これから拠点まで運ばなければならない氷竜の部位が、かなり多かったからだ!
歯、鱗、肉、内臓、骨、皮、そして最後に……『宝玉』まで。
氷竜一頭から取れる部位をすべて、そっくりそのままの状態で村まで持っていけさえすれば……スターウッドのような宿屋を、さらに20軒建てられるほどの値打ちがあった!
ただ、普通、ダンジョンという場所で生き残るには、荷物の重さと機動力がかなり重要だから。
竜を仕留めても、市場まで届くのはせいぜい歯や皮膚、鱗と宝玉くらいだった。
竜は空を飛ばなければならないため、骨はかなり軽かったが、その強度はどんなモンスターの骨よりも優れていたため、さまざまな装備や武器の素材として人気があった。
現代の素材でいうと……『チタン』のような感じだろうか?
竜の歯は鋼鉄の鎧すら一気に貫くほど鋭く、硬く、
竜の鱗は、そんな竜の歯さえも簡単に防げるほど頑丈だった。
竜の皮は並の刃物では貫けず、そのうえ強靭で丈夫で、各種属性への免疫もあったため、皮も逃すわけにはいかなかった!
「ああ……! 竜がくれる贈り物……こいつらで、とんでもないものを作れるんだぞ! 想像するだけで興奮してくる!」
俺は鼻歌交じりに、のこぎりに魔力刃を使って竜を解体しながら叫んだ。
まずは作業の邪魔になる鱗を、魚をさばくように一枚ずつ剥がし、
その次に、臓器 → 皮 → 肉 → 骨の順で解体を始めた。
竜は、これまで地上で狩ってきた動物とは違って規格外に大きいという点さえ除けば、解体や骨を外す作業に大きな難しさはなかった。
解体して、部位がたまったら拠点へ運び、戻ってまた解体する。それを繰り返した結果、46日目に始めた解体作業は、48日目の昼頃にあらかた終わった。
「ふう……やっと……一番うまいおかずだけが残った……」
そのおかずとは、ずばり『氷竜の宝玉』だった。
竜の宝玉は普通、人の手ほどの大きさのものが、左右の肺の間に二つあると聞いた。
ただ、竜それぞれの強さや個体によって、宝玉の数や性質、さらには大きさまでも異なるという。
人が持っている玉の大きさや形がそれぞれ違うのと、同じ理屈じゃないだろうか?
とにかく、最後まで宝玉を氷竜の中に残しておいたのは、『氷竜の宝玉』が冷蔵庫のような役割を果たしてくれたからだった。
ここは温泉のすぐ隣で、蒸し暑い。つまり、腐敗が早く進むということ!
竜の肉は竜が死んだ後も肉自体に魔力が巡っていて、微生物の増殖をかなり抑えてくれるが、だからといって、いつまでも放置しておくわけにもいかなかった。
竜の宝玉は、定期的に魔力さえ注入してやれば、割れたり損傷したりするまで、その宝玉特有の性質が維持される。
だから、きちんと管理さえすれば一生でも使えて、魔法使いや魔剣士の補助装備として、かなり値打ちのあるやつなのだ!
俺は解体作業の間ずっと、定期的に竜の宝玉に自分の魔力を注入しておいた。そのせいか、作業の間ずっと氷竜の周囲には、霜がつくほど冷たい気が漂っていた。
「それじゃ、持っていこうか?」
俺は氷竜の肋骨の内側、肺と肺の間にぽつんとぶら下がっている宝玉を切り離すため、手を当てた。
「あっ! 冷たい!!」
宝玉の表面はドライアイスのようなすさまじい冷気を放っていて、俺の指にくっついてしまった。
「ああ! 取れる、指が!」
肉に食い込む冷気に慌てた俺は、指にくっついた氷竜の宝玉を剥がそうと、何度も手を振った。
「ふう……もう少し遅かったら、凍傷で指を失うところだった……そりゃ、息一つで温泉まで凍らせるやつなんだから、素手でつかめるわけないか。何か方法が……」
トングでつかもうにも、粗末なトングでは宝玉を安定してつかめず、地面に落として割ってしまいそうだったし、
布で包もうにも、持っている布切れをすべて重ねても、手が凍傷になりそうだった。
それほど、宝玉が放つ冷気は鋭く、強烈だった。
「ふう……何か方法が……」
「……」
「……あ! あった! パンツ!」
〈メ……メェ?!〉
俺はその場でズボンを脱ぎ、はいていた『メェの毛で作ったパンツ』を脱いで、そっと宝玉に当てた。
「メェの毛なら……いけるかもしれない!」
俺は手に持ったパンツでゆっくりと宝玉を包み始めた。パンツで宝玉を包むと、それを持つ手に宝玉の殺人的な冷気はまったく伝わってこなかった。
「やっぱり、そうだと思った! メェの万能な毛! すごい!」
俺は地面に落としておいた短剣を拾い、宝玉と肺をつなぐ筋繊維を慎重に切り始めた。その作業を繰り返し、『氷竜の宝玉2個』をパンツに包んだ後、肋骨の内側から抜け出した。
「はは、見ろよメェ! お前の毛、玉を2個も入れてるのに平気だぞ!」
俺は宝玉の入ったパンツを、この様子を見守っていたメェに掲げて叫んだ。
〈メェ?! メェ!!!〉
メェは突然俺に駆け寄り、俺の脚に頭突きをし始めた。
「あっ……痛いぞメェ! どうしたんだよ!」
〈メェ! メェ!!〉
メェがなぜ怒ったのか、俺にはまったく理解できなかった。
◇ ◇ ◇
49日目。
朝起きると、氷竜の首肉を角切りにしたものを焼いて脂を出し、そこでキノコと薄切りのジャガイモを炒め、『コショウ味の実』と『砂糖味の茎の搾り汁』を加えた、たっぷりの朝食を楽しんだ。
「ん~! うまい! 塩がないのが唯一の欠点だけど……朝から温かく焼き上げた肉を食えるなんて、最高じゃないか!」
朝食を済ませて拠点の外に出ると、干しておいた『竜の皮』の状態を少し確かめ、それから温泉へ行き、氷竜の肋骨をほんの少し切り取って戻ってきた。
氷竜の肋骨は長くて尖っているため、一本を丸ごと研磨して『カタナ』のような刀にしてしまったり、あるいは細かくして『矢じり』にしたり、腕当てや脚当て、胸当てや盾、調理道具の柄にしたり、カップにしたり!
使い道が実に尽きない素材だった!
ただ、『魔力刃』と『のこぎり』の組み合わせでも、チタンのような氷竜の肋骨を切り取るにはかなりの時間がかかった。特にこの骨を保管する場所もないため、残りはここに置いておき、必要なときだけ取りに来て使うことにした。
ああ、そうそう。俺が突然なぜ氷竜の骨や皮を確かめ、集めているのかというと……。
今日やることは、ずばり『冷蔵庫作り』だったからだ。
いや、厳密に言えば『冷蔵倉庫』が正しいのかな?




