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第19話 努力!

「あ……あれ?」


俺は光の柱からの光に目を細めたまま、もう一度、自分に近づいてくる物体を見た。


空へ飛び上がったそいつは、まばたきをするたびに少しずつ大きくなっていた。


「あ……ああ、嘘だろ……?!」


〈グオオオオ!!〉


耳をつんざくような咆哮とともに、そいつは両翼を大きく広げて滑空し始め、

そのときようやく、俺はこれが現実であることを直視した。


「本物の竜だ……」


〈シュウウッ〉


そいつは咆哮を終えるやいなや、まっすぐこちらへ滑空してきた。


「あ……ああ……! に……逃げろ、メェ!」

〈メェ?!〉


〈プフゥゥゥゥゥ〉


「避けろ!」


そいつは『氷竜』だった。

大型のトレーラートラックよりも大きな氷竜は、メェに向かって走る俺のほうへ『アイスブレス』を吐き出し、俺は間一髪でメェを抱えて跳び、ブレスを避けることができた。


「あ……いてて……あっ! 作物が……! いや! それどころじゃない……! とにかく拠点の中へ……」


〈プフゥゥゥゥ〉


氷竜は、まるで俺の意図を見抜いたかのように再びブレスを吐いて拠点の入口を凍らせた後、

俺の大切な畑に着地し、収穫を控えた小麦の匂いを嗅ぎ始めた。


「ああ……だめだ! やめろって!」


そう叫ぶと、氷竜は鋭い目を一度瞬かせ、再び大きく息を吸い込み始めた。


「ひいっ!」


それを見た俺は、メェを抱えて森の中へ駆け込むしかなかった。


『今まで、本当によく耐えてきたのに……もうすぐラムダさんのパーティーが着くはずなのに……』

『たった一言で、こんなふうに何もかも終わるのか……?』


「ぐすっ……俺の……俺の45日間には何の意味もなかったのかよ! 俺の畑……水路……鍛冶場……鉄器……その全部が……」


メェを抱え、茂みをかき分けて森の奥へ逃げている間、生まれてこのかた流したこともない涙が、ぽろりとこぼれ始めた。


『甘すぎた……ここはもともと、こういう場所なんだ……今までは運がよかっただけだ……氷竜みたいなやつが、いくらでもいておかしくない場所なのに!』


「ぐすっ……俺の努力が……拠点が……」

〈メェ……〉


「ぐっ……心配するな、メェ! お前をあいつに食わせたりしないから」


俺をじっと見つめるメェに、俺は無理に笑ってみせた。

その瞬間、メェは俺の腕の中で暴れて抜け出すと、どこかへ慌ただしく走り始めた。


「メェ?! どこ行くんだ! こっちに来い!」

〈メェ!〉


ほどなく、メェはある木の下で立ち止まり、前脚を使ってしきりに地面を掘り始めた。


「メェ! こんなことしてる時間はないんだ! 早くどこかに隠れないと……」

〈メェ~〉

「ん……? これは……」


メェが掘った穴の中には、布に包まれた何かが入っていて、

メェは歯を使って穴の中からその包みを取り出し、広げ始めた。


「?! これ……本……?」

〈メェ!〉


メェは舌と唇を使って本のページをめくり、まるで俺にそれを読めと言うかのように、俺の襟をくわえて何度も本のほうへ引っ張った。


メェが開いたページは、初めて見る文字で埋まっていたが、

なぜか、その文字を難なく読むことができた。

そして、本に書かれた文字を一行、また一行と読み進めるにつれ、心の中で何かが湧き上がり始めた。


「……?! 待てよ……これなら……守れるかも……?」

「……! そうだ! あれを組み合わせれば、ひょっとしたら通用するかもしれない!」


それは、可能性だった。


古書のページを熟読した俺は、少しの間、畑のほうを見た。

遠くに見える氷竜は、俺が耕しておいた畑を遠慮なく踏み荒らし、小麦を食べていた。


〈ぐっ〉


それを見ると、ここで過ごしてきた日々の苦労や楽しさが、走馬灯のように流れ始めた。


このまま逃げて隠れてしまったら? ひとまず、生きてはいられるだろう。

ただ、氷竜が小麦を全部食べた後に帰っていき、ここには二度と戻ってこないという保証はない。

ただ、俺とメェだけがここに残り、いつ戻ってくるかもわからない氷竜に怯えながら、拠点にこもって飢え死にしていくだけだ。

前に進めないまま。


「今逃げたって、解決することなんて何もない……先延ばしにするだけじゃ、何も成し遂げられない……!」

「よくも俺の努力の成果を、好き勝手に……絶対に許さない……」


俺は拳を強く握ったまま、つぶやいた。

その瞬間。


〈ピロン〉


「ん?」


〈ピロン、ピロン、ピロン、ピロン、ピロン、ピロン〉


普段は一つずつ現れる選択肢が、今回は一度に7個も現れ始めた。

魔導書に書かれた内容を理解し、氷竜に立ち向かう『覚悟』を固めた瞬間から、これを実行するにあたって俺が考えていた能力が、次々と浮かび始めた。


「よし……これが俺に必要だったものだ……俺の答えは『うん』だ」


ポイントの割り振りを終えた俺は、計画を少しの間、頭の中で整理した後、

すぐに作戦に取りかかった。


「暴れるのもそこまでだ……」


◇ ◇ ◇


「おい! この卑怯な作物泥棒! こっちだ、こっち!」


俺は鍛冶場に立てかけておいた鉄の鍬を手に取り、拠点の前を横切りながら、小麦を食べていた氷竜に向かって叫んだ。


〈グルル……〉


氷竜は、聞いただけで気分が悪くなるような喉をこする音を立ててこちらを見たが、すぐに俺を無視して、また小麦を食べ始めた。


「無視するなって! この図々しいやつ!」


俺は近くにあったメェの贈り物で作った肥料を丸め、氷竜の鼻に正確に命中させ、


すると氷竜は、怒りに満ちた様子で再び咆哮し、俺に近づいてきた。


「今だ! 『疾走』!」


【身体強化(脚)+1 = 累計2】

【疾走Lv1:魔力を消費して脚を強化し、2倍の速さで走れる。】


俺はわざとぎりぎりのところで氷竜の前を通り、森の中へ駆け込んだ。


氷竜の狙いを、地上を走る俺に引きつけておくためだ。空へ飛び立つ暇を与えず、『あと少しで捕まえられる』と思わせたかった。


そして、脚の強化と疾走の相乗効果はすさまじかった。

一歩で数十メートルも走る氷竜だったが、

森を横切っている間だけは、かろうじて距離を離すことができた。


俺を追って森に入ってきた氷竜も、その巨体と生い茂る木々のせいで、簡単には翼を広げられないようだった。


そうして拠点の左側の森を横切り、温泉に着いた俺は、持っていた鍬と『スマッシュ』を使って温泉の近くに分布していた黄色い硫黄を砕き、湯に混ぜてから、温泉の反対側へ移動した。


〈ドンドンドンドンドン!〉


氷竜が走ってくる音は、だんだん大きく響き渡り始めた。


「くっ……時間が足りない……!『魔力増幅』!『魔力抽出』!」


【魔力増幅Lv1:魔力の体積を増やし、使用可能な魔力を増やす。(前提:効率的魔力変換)】

【魔力抽出Lv1:自分の魔力を抽出できる。】


俺は硫黄を混ぜた温泉の湯に手を入れ、二つのスキルを同時に使った。


湯の中に少しずつ俺の魔力が広がっていくのを感じた。


竜の鱗は普通の鉄器では貫けないというのが、ここでの常識だ。


人間の力とは比べものにならないほど強靭なモンスターや魔物に対抗する、人間の唯一の武器は『魔力』。


人間が『魔力器官』を持ち、魔力を扱えるようになったのは、ある意味では偶然ではないのかもしれないと思った。


「生き残るためには……発達させるしかなかったんだ……自分だけの武器を……」


〈グワアアアン!〉


氷竜は、俺の予想よりはるかに速かった。

行く手をふさぐ森の木々をすべて押しのけながら俺の前まで来た氷竜は、一目見ただけでもひどく怒っている様子で、興奮したように鼻からしきりに冷気を噴き出していた。


「生き残るために……今までの努力と成果を全部注ぎ込む。どうせ失敗したら死ぬんだ! だから……かかってこい、この怪物!」


俺は覚悟を決め、目の前に立つ氷竜に向かって叫んだ。

すると氷竜は、俺の言葉に応えるかのように、岩も一口でのみ込めるほど大きく口を開き始めた。


「来い!!」


俺は両手を温泉の湯に入れたまま、氷竜に向かって叫んだ。


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