第17話 鉄器時代に突入!
拠点の外へ飛び出した俺は、まっすぐ製錬炉へ走っていった。
「よいしょっ」
持っていた石英の鍬で製錬炉の側面を掘り崩してから、中をのぞき込んだ。
「うっ……まだ熱いな。仕方ない」
俺は水を持ってきて中を軽く濡らしてから、石英の鍬で中を掻き出し、まだ温かい塊鉄を一塊もぎ取り、水に浸して冷ましてから、両手で包んでみた。
『ひとまず塊鉄になっているなら、不純物より鉄の含有量のほうが多い。ここは発想をリバース! 塊鉄の中の不純物だけを、魔力分離で分離してみるんだ』
「魔力分離!」
その瞬間、手の中に魔力が集まり、羊毛を分類したときに似ているが、どこか違う感じの触手が伸びていくのを感じ、
しばらくすると、鉄の表面に埋まっていた不純物が抜け出し、地面にぱらぱらと落ち始めた。
「おお、本当にこんなことができるのか?! ただ……見たところ、表面だけって感じだな」
魔力が塊鉄の中へ入っていく感覚はなかった。
「探索! 手に持っている塊鉄の中に隠れた不純物を探したい」
確かに不純物を感じ取れるようになった。ただ、正確な量はわからないので、これでは表面の不純物を取り除くだけでも、魔力分離を使いながら塊鉄を持ち続けなければならないところだった。
「ええい、もう知らん! 探索にポイント投資!」
〈ピロン〉
【探索 +1】
【探索Lv2:探したい『何か』が『周囲』にどれほど存在するかを感じ取れる。】
「おお、感じる、感じる……! これ……まだこんなに残ってたのか? ただ……まだ硬い鉄に囲まれた不純物までは取り除けないみたいだな……」
表面の不純物は塊鉄の隙間を通って確実に抜けていると感じたが、内部にはまだかなりの量の不純物が残っているのを感じた。
「この工程さえうまく終わらせておけば……鉄を叩いて不純物を抜く工程なしで、もう一度鉄を溶かしさえすれば、少し形を整えるだけですぐに使えるようになるんだから……こういうときは攻めの投資が正解だ! 魔力分離にポイント投資!」
〈ピロン〉
【魔力分離 +1】
【魔力分離Lv2:魔力分離の効率と性能が向上する。】
魔力分離がレベル2になると、不純物が抜ける速度が目に見えて上がり、内部に閉じ込められていた不純物も一つ、また一つと抜け出し始めた。
そうして、それ以上不純物が出なくなると、俺はすぐに製錬炉の隣に用意しておいた簡易の鍛造炉に木炭を載せて火をつけ、不純物の抜けた塊鉄を入れて熱し始めた。
塊鉄が十分に熱くなったら、先端を粘土で覆った木の火ばさみで熱した鉄をつかみながら、石で大ざっぱに作った金床の上で、石のハンマーを手に……。
「スマッシュ!」
〈ヒュッ〉
〈ピロン〉
【『スマッシュ』にポイントを追加する。〈うん〉〈いいえ〉】
「え?! 本当にあったのか? スマッシュ?!」
熱した鉄を叩くためにハンマーを振り上げながら、叫んだだけなのに……。
また別のスキルが目の前に浮かんでしまった。
「まあ、いいや!スキルだろうが何だろうが、全部ポイントを振ってやる!答えは『うん』だ!」
〈ピロン〉
【スマッシュ +1】
【スマッシュLv1:2倍の力で腕を1回振るえる。】
「2倍?! これもすごいスキルじゃないか! それじゃ、遠慮なく……スマッシュ!」
〈カン!〉
〈カン! カン! カン! カン!〉
スマッシュを使うと、何度も叩かないうちに、きれいな四角い形ができ始め、
熱した鉄がこれ以上ないほど四角く整うと、俺は持ってきたたがねで中央に穴を開け、そこに作っておいた木の柄を差し込んで、『最初の鉄のハンマー』を完成させることができた。
「ああ……感動的だ……こんな辺境で本当に作ることになるとは思わなかったぞ、『鉄の道具』……!!」
こうして俺は、正式に『鉄器時代』に突入した。
◇ ◇ ◇
25日目。
本格的に、すべての作業が加速し始めた。
朝に水を汲んでキノコを採るのは、これまでどおり。
ただ、ほかのことよりも鉄器の完成に集中することにした。
昨日、ハンマーを先に作っておいた理由は単純だった。
『鉄のハンマー』で『鉄鉱石』を細かく砕き、鉄分の多い鉱物を選り分けやすくする。
塊鉄や鉄鉱石を持ち、魔力分離で成分を抽出すれば、きれいで確実だが、塊の中から不純物や鉄の成分が抜け出すには、魔力と時間がたくさん必要だ。
だから、鉄の成分をできる限り外に露出させ、抜け出すまでの過程を短縮する。
魔力分離を覚える前に作っておいた塊鉄は、そのままにしておくともったいないので、平たくして仮の金床として使い、
鉄鉱石を細かく砕く! 魔力分離で鉄分の多い鉱物だけを選り分ける!
そうして精製した鉄鉱石をもう一度製錬し、できた塊鉄から魔力分離でスラグを取り除く!
そうして純粋な鉄の塊ができたら、もう一度鍛造炉に載せて熱し、火ばさみとハンマーを使って形を整える……!
〈カン! カン!〉
「ああ……妙に興奮する……」
ハンマーを打ちつけるたびに、熱した鉄は俺の思いどおりの形になっていった。
「そして、形が完璧に整ったと思ったら、刃の部分だけ水に浸して冷ます」
〈ジュウウウッ〉
そもそも、刃物の刃などを水で急激に冷やすと、ひびが入ったり歪んだりする危険があると、メイメイが教えてくれたことがあった。
だから普通は油で鉄を冷やすのだが……今はほかに方法もないし、それにこれは厚みのある道具だから、ある程度は変形を防いでくれるだろう。
「それでも、完成した鉄器を水で冷やす方法をメイメイに教わっておいてよかった」
そして、柄を差し込む穴が冷める前に、仕上げに柄を取り付ければ……。
「鍬……完成!」
その後は……何日もの間、鉄器ばかりめちゃくちゃ作ってしまった。
25日目の午後には『鉄の斧』を作り、喜びを抑えきれず、『斧二刀流のバーバリアン』のように、これまで使っていた石英の斧と鉄の斧を両手に持ってポーズを取ってみて、
「双斧のヤリスか……悪くないかも?」
〈メェ?〉
「は、はは……見てたのか?」
26日目にはピッチフォークを作り、さらに細い鉄の棒を熱して打ち延ばし、『鉄の釘』まで作った。
メェの毛を整えてやってから拠点に戻り、分類した毛を『紡錘』を使って糸にする作業をして、
27日目と28日目には、『シャベル』と『フライパン』作りに着手!
鉄を延ばす作業なのでかなり時間はかかったが、すでに作業工程も習熟度も向上していたせいか、難しいという印象はなかった。
「ああ……俺……ついに焼いたもの以外も食べられるようになるのか……汁物が恋しい!」
それだけにとどまらず、合間には木炭作りや鉄鉱石の作業も並行! 鉄の斧に鉄の鍬、それに『スマッシュ』があるので、作業が10倍は楽になった気がした。
そうして忙しく暮らしているうちに、いつの間にかメェを通じてポイントもさらに3ポイント得ていた。
使えるポイントは全部で3ポイント!
「仕事はきついけど……ここでの悠々自適……悪くないかも?」
拠点の前でメェと一緒に座り、仕上げの作業として木の桶を作っていた俺は、しばし、人生を生き尽くした老人のような表情で、遠くに光を放つ柱を眺めながらつぶやいた。
「ふふっ……すっかり慣れたな……」
なぜだかわからないが、自然と笑みがこぼれた。
ただ……俺はこの平和に浸り、一つの事実を少しずつ忘れていっていた。
ここは普通の冒険者では挑むことさえ考えられない、国家級の地下ダンジョンの中だという事実を。
そして俺は、あの静かだった地下ダンジョンの中で、誰よりも騒がしく暮らしていたということを。
これからの暮らしも、悠々自適で平和なものになると思っていたが……。
ここの住民すべてが、メェのように親切なわけではなかった。




