第16話 早く先に進みたい!
24日目。
今日は朝、目を覚ますなり乾燥キノコを持って、すぐに拠点を出た。
「行ってきます!」
当分、悠々自適はお預けにすることにした。
メェと乾燥キノコを分け合って食べながら経験値獲得! まだ使っていないポイントが4ポイントも残っていた。
寝る前に考えた結果、今日はできるだけ多くのことをやってみて、行き詰まったり、きつくて進めるのが難しかったりする作業にポイントを投資してみることにした。
まずは【身体強化(脚)】に『1ポイント』を投資した。
歩くことも走ることも立っていることも、ここでの基本的な行動なので、投資しない理由はなかった。
【身体強化(脚)0.5(左)+0.5(右)= +1】
「お……おお! なんか体が脚についていけない感じだ……!」
ポイントを投資した後、すぐに水路作業を進めている場所まで走ってみたのだが、脚が先に行き、体は仕方なくその後を追いかける感じだった。
「何なんだよ、これ!!」
しかし、脚の力は確実に強くなり、筋肉が疲れる速度も前より遅くなった一方で、肺活量はそのままなので、死にそうだった。
「はあ……はあ……後で絶対、上半身のほうにも投資しないと……」
水路の工事現場に着くと、少し息を整えてから石英の鍬に『魔力刃』を使ってみた。
成功さえすれば、水路の完成までにかかる時間を大幅に短縮できるはずだ!
だが、結果は……大失敗。
まず、柄が長いせいなのか、短剣に魔力刃を使ったときとは、魔力が伝わる感じがまったく違っていて、
念のため鍬の石英の刃の部分を握って魔力刃を使ってみたが、
石英は魔力の振動に耐えられず、ひびが入ったり割れたりしてしまった。
「まあ……予想はしていた。だが、立ち止まっている時間はない!」
帰り道、川辺で粘土をさらに掘ってから、急いで拠点へ戻り、木炭の製造場の隣に設けた仮の鍛冶場で、あらかじめ焼いておいたレンガに一つ一つ粘土を塗りながら、製錬炉を作り始めた。
俺が作った製錬炉は、簡単に説明すると、炉の上から木炭と鉄鉱石を順に入れた後、
側面の送風口から空気を送り込んで木炭の温度を上げると、
鉄鉱石から分離した鉄は製錬炉の下のほうでスポンジのような塊になり、溶けたスラグは傾斜した排出口を通って外へ流れ出る構造だった。
送風口には、本来ふいごを使うのが楽なのだが……。
今はどれだけ考えてもふいごを作る方法がなかったので、粘土で作った平たい円形の枠の中に、薄い木材と枝を編んで作ったプロペラを入れ、その軸に紐を巻き、紐を引っ張ると自然に回転力で空気が入る送風機と送風管を作って取り付けた。
俺が作った製錬炉は、一度使うと壁の一部を取り除いて塊鉄を回収しなければならなかったので、できれば一度にたくさんの鉄を作りたかった。
製錬炉を積み終えると、掘ってきた鉄鉱石のうち、できるだけ小さい欠片だけを集めて炉に入れた。
大きすぎる鉄鉱石は、石のハンマーで砕くにも限界があった。
木炭に火をつけ、鉄鉱石と木炭を交互に入れ、空気を送り込み、見守り、また木炭と鉄鉱石を追加し、合間には木炭作りも並行して進めた。
この作業を繰り返していると、昼に鳴った腹時計が夕方ごろにまた鳴り、
そこでようやく、今日の俺にできる製鉄作業は終わったのだとわかった。
すでに全身は汗まみれ、服も気持ち悪かった。風呂と洗濯が切実に必要だったので、温泉へ行って少し体を浸して戻ると、いつの間にか現れたメェが拠点の近くに横たわっていたので、毛をもう少し刈ってやった。
【経験値 +120】
【ポイント +1】
「どうだ、メェ? 少しだけだけど、役に立ったか?」
〈メェ~!〉
メェはまるで俺に見せるかのように、前より自然に首を下へ下げてみせた。
これでメェの首の下の部分だけは、自由を取り戻したように見えた。
その後、メェと夕食に食べるキノコを少し採ってから拠点に戻り、簡単な夕食。
吐き気なんて、とっくになくなっていた……。腹が減って疲れてくると、何でもいいから食べられることに感謝する謙虚な気持ちが、また戻ってきた。
「ああ~、でも……やっぱり食べたいですね、肉~、パン~、ルートビア!!」
キノコを食べている間ずっと、石像さんに駄々をこねてみた。
夕食の後は、休む間もなく『糸作り』に取りかかった。
だが……糸作りは、見た目ほど簡単な作業ではない。
まずやらなければならない作業だけでも、
刈る → 選別する → 洗う → 乾かす → 繊維をほぐして整える → 糸を紡ぐ → 撚り合わせる
刈って、選別して、洗って、乾かすところまでは何とかできたが……。
乾燥したメェの毛をほぐさなければならなかった……。
まるでスチールウールのように、硬く絡み合ったあの毛を!!
最初は薄い木で作った粗末な櫛で梳かしてみたが、櫛は折れてばかりだった。そこで厚くしてみると、今度は毛の中にまったく入らなくなった。
その次は一本ずつ、手でほぐし始めたのだが……。
「これは違う!!」
2時間ほど地面にしゃがんで毛をほぐしていた俺は、メェの大切な羊毛を地面に投げ捨ててしまうほどの精神状態になっていた。
「ああ……鉄の櫛を作るにしても……それは俺のスミシングスキルじゃ絶対に無理だし……何か、絡まったものを優しく分離する方法はないかな……石像さん、何かありませんか?」
〈ピロン〉
「ええ?! 何か来た!」
【『魔力分離』にポイントを追加する。〈うん〉〈いいえ〉】
「おお……魔力分離だって……? この、一向に進む気配のない労働から抜け出せるなら……俺の答えは、うん!」
〈ピロン〉
【魔力分離 +1】
【魔力分離Lv1:魔力を使い、手の中にあるものを『分離』あるいは『分類』できる。】
「おお、このスキルなら!」
俺はすぐに、地面に投げ捨てられていたメェの毛の塊を両手の上に載せ、スキルを使ってみた。
「魔力分離!」
手に凝縮し始めた魔力が、やがて何千何万もの触手になり、でたらめに絡まって固まっていたメェの毛を、一本一本ほぐし始めるような感じだった。
「おお……おおお! ほぐれてるぞ! すごいじゃないか、このスキル?!」
俺は、陽炎のようにゆらゆらと揺れながら、一本ずつほぐれていくメェの毛を、しばらく興味深く眺めていた。
「ああ……なんだか焚き火を見ているようでもあるし……気持ちが落ち着くな……」
「……」
「……待てよ……これ、もしかして……」
ある考えが一つ、頭の中にひらめいた。
「そんなこともできるんじゃないか……?」
「ああ……いや、『できるんじゃないか』じゃない。きっとできる! 絶対できるぞ!」
今日は食事の時間以外、一日中働いていた。
毎日疲れを癒やしてくれた温泉も焼きキノコも、今日の疲れを完全には取ってくれなかった。
だが……全身に広がる疲れに打ち勝つ、『発見』と『実験』の楽しさ。
それが俺に疲れさえ忘れさせ、再び拠点の外へと向かわせた。




