第15話 ヤリス2.0!
「メェ、どこにいるんだ~? いい知らせがあるぞ!」
ポイントの投資を終えた俺は、メェを探して森の中へ入った。
〈メェ~〉
メェは木の陰で鼻をくんくんさせていた。
「メェ! いい知らせだ! ついにお前の毛を刈ってやれるようになったぞ! 拠点の前に行こう!」
俺はメェに、こっちへ来いと手招きした。
〈メッ……〉
メェはしばらく木の下をちらちら見ながらためらっていたが、やがて俺に近づき始めた。
「ふふ……動物って、ときどき俺の言葉がわかるみたいなんだよな……」
俺はメェと一緒に拠点の前に戻った。
用意するのは、メェを寝かせるための乾いた葦と短剣、そして俺の魔力と新しく手に入れた能力!
魔力なんて、体の回復や熱量としてしか使ってこなかったけど……実際に目の前で結果として現れる『魔法』みたいなスキルを使うことになるんだと思うと、
いい意味で心臓が震え始めた。
〈ごくり……〉
「これで俺も……魔法使いになるのか……? 30歳になる前に魔法を使えてよかった……」
俺はゆっくりと短剣を抜いてみた。メェも俺の意図がわかるのか、毛に覆われた重い体を再び葦の上に横たえ始めた。
俺はゆっくりと目を閉じ、叫んだ。
「魔力刃」
〈ブルブル……〉
「おお……」
〈ジイイイン!〉
「何かが違う!」
目にははっきりと見えなかったが、刃が振動しているのは確かだった。
何かちくちくとした温かい気配が、手のひらを通して刃に伝わっていくのを感じた。
「正式に魔力の使い方を習ったこともない俺が! 魔力を使ったんだぞ!」
ただ、これは単にスキル名を叫べば自動的に発動する、という感じではなかった。
それよりも、頭の中に『魔力刃を使う方法』が突然浮かんで、その考えが自然と行動に移される感じだった。
『魔力刃』が発動するときの感じは、丹田から魔力を引き出して右腕を通じて手に集中させ、その魔力をコントロールして刃を薄く包み込み、微細に振動させる感じだった。
頭の中に入ってきた原理を思い浮かべてみるだけでも、これが並のスキルではないことはよくわかった。
誰かがきっと数か月、あるいは数年練習して、ようやく身につけた技術だろうに……。
俺はただポイントを投資しただけなのに、こんな高度な技術まで自然に使えてしまうことに、驚くばかりだった。
「これも……チートといえばチートだな……」
と言いながら、俺はゆっくりとメェの顔の下、首のあたりの毛をつまみ、刃を差し入れた。
〈ジイイイン〉
〈メェェ~〉
感触は、まるで電気シェーバーで毛を剃っているような感触だった。
「おっ! 確かに、前と違って切れてる感じがする!」
だが……メェの毛は、予想よりはるかに手ごわいやつで……。
俺は夕方になるまでかかって、メェの首の下の部分の毛を刈ってやるのがやっとだった。
「はあ……はあ……これ……かなり疲れるな……ごめんな、メェ……今の俺じゃ、このくらいが限界みたいだ……」
メェの皮膚を引っかかないように長いこと集中しすぎたせいか、スキルを使うのをやめると、何だか力が抜けて、その場にばたりと大の字に寝転がってしまった。
「スキルを使えることと、どれだけ使い続けられるかは別だからな……まあ、当たり前の話か? ああ~、今日中に全部刈ってやりたかったのに~」
〈メェ~〉
【経験値 +100】
「お……経験値が結構多いな? ありがとう、メェ」
〈メェ~〉
〈ごろごろ〉
「ん?」
メェはゆっくりと体を転がして、横になっていた俺に近づいてきて、
いつの間にか俺の隣にぴったりとくっついてしまった。
メェのふかふかした毛並みとぬくもり……それだけで、疲れがすっと抜けていくようだった。
「ああ~、こんな感じなら、たまにはこういう土の上に寝転がるのも悪くないな~」
◇ ◇ ◇
メェの毛を全部刈ってやれなかった残念さとは別に、メェの毛は、それ自体にもかなり研究する価値があった。
拠点に戻り、夕食に採っておいたキノコを全部焼いて食べた俺は、石像さんの前であれこれテストをした。
-テスト1。毛の強度
メェの毛を1本長く引き出し、用意した2本の木の枝に結んでつないだ後、両手で枝を握って思い切り引っ張ってみる。
「ぐぬぬ……!!!」
引っ張っている感触は、まるで糸ではなく、太い鉄の棒のようなものを長く伸ばそうと、馬鹿みたいに引っ張っているかのようだった。
〈パキッ!〉
2本の枝の真ん中が、きれいに切断されてしまった。
「おいおい……冗談だろ……? たった1本だぞ……? そのうえ……この丈夫な地下の木の枝に勝つっていうのか?」
次は左右それぞれに枝を2本ずつ結びつけ、同じやり方で引っ張ってみた。
「今度はフルパワーで……! ふうっ!」
〈ティン~〉
今度はギターの弦が切れるような軽快な音とともに切れたが、毛を結んでおいた枝の真ん中は、かなりえぐれていた。
「す……すごい……」
-テスト2。毛の耐久度。
俺は、自分にできるあらゆる方法でメェの毛を攻撃してみた。
短剣で上から突いてみたり、魔力刃で斬ってみたり、さらには火をつけてみたりもした。
その結果、メェの毛には火もつかず、
1本ならどうにか切ることはできたが……毛の塊の状態では、どんな攻撃も通じないかのように、毛は何ともなかった。
「まあ、1本だけでもあの強度だからな……束になったら無敵だろうな……」
◇ ◇ ◇
メェの毛は軽くて、しなやかで、水も防ぎ、火も防ぎ、さらには刃まで防いで、ふかふかで温かい……。
「こんなありえない素材が、普通の羊から採れるのか……?」
一瞬、メェは本当に『羊』なのかと、少し怖くなった。
だが、そんな恐ろしいモンスターなら、とっくに俺を食べていたはずだ。そう考えて、すぐに気を取り直した。
「メェの毛なら……すごいものが作れるようになる。切れないのに弾力のある糸、ロープ、斬れない布、ふかふかの座布団や布団に、鞄に、靴下に、それから……それから……!!」
作るべきものが次々と浮かんできて、俺は頭を抱えるしかなかった。
「ああ……駄目だ……作りたいものが山ほどできちまった!! 頼むから止まれ、ヤリス!!」
今すぐにでも糸を作ってしまいたかったが……糸を作るにも準備が必要だった。
そのうえ、すでに農作業のための水路が必要で、その水路を作るために鉄の道具が必要な状態で、その鉄の道具を作るために製錬炉が必要な状態で、その製錬炉を作るためにレンガと粘土が必要な状態だった。
そのうえ、ここに来るハイローラーたちのために、宿屋の準備という別の仕事まであるのだから……。
「ああ……確かに、このままじゃ駄目だ」
このままだと、仕事をあれこれ広げるだけ広げて、何ひとつ完成させられない可能性が高いことに気づいてしまった。
「よし。ケチケチ生活はここまでだ。ポイントをどんどん使って、素早くビルドアップしていってやる!」
その夜、俺はこれまで寝る前までやっていた木の食器作りや器作りはせず、眠る直前まで、素早く発展するためのポイントの投資方法と、効率的なスケジュールを考え始めた。
目を閉じて開けるその瞬間から、『ヤリス2.0』の始まりだった。




