第13話 木炭が必要だ!
「うりゃっ! うりゃっ! うりゃっ! うりゃっ!!」
木に斧を一振りするたびに、俺の気合いの声が森の中に響き渡った。
そして、石英の斧を8本も折って、ようやく、
〈ミシッ……ミシッ……ミシミシッ……ズズーッ〉
〈ドーン!〉
俺の胴回りほどの太さの木が、ついに倒れた。
「はあ……はあ……ついに……化け物みたいなやつめ……」
一振りに全身全霊を込めなければ、木に斧の刃は刺さらなかった。
そんな『本気のスイング』を数百回もしたら、疲れて何もできなくなり、そのまま地面に寝転がってしまった。
石英の刃は思ったよりよく持ちこたえてくれたが、問題は、鉄の斧とは違って柄に石英の刃を紐で固定した斧なので、力と抵抗に耐えきれず、刃が木に刺さったり、紐が緩んだりして、折れることがしょっちゅうだったことだ。
「それでも……どうにか切り倒せた……でも疲れすぎだろ……こんなんで、木炭だの『家具』だの作れるのかな……」
急に途方に暮れた。
「何かいい方法はないかな……」
そのとき。
〈ピロン〉
【『効率的魔力変換』にポイントを追加する。〈うん〉〈いいえ〉】
「効率的魔力変換?! またガイドシステムが反応したのか? 何なのかはわからないけど……『探索』みたいに、今の状況に役立つってことだよな?」
今回の悩みは短く終わった。
もう、ガイドシステムの『おまかせ』が、まるで俺にぴったりの投資先を教えてくれる資産管理の専門家のように感じられ始めたところだった。
「うん!」
〈ピロン〉
【効率的魔力変換 +1】
【効率的魔力変換Lv1:魔力が筋疲労の回復に影響する。】
「お……おお!!」
ポイントを振った途端、腹の中で何か熱いものが渦巻くように感じ、その感覚がやがて円を描きながら全身に入り込んでいくのを感じ取れた。
体がだんだん熱くなり始めたが、暑いとか苦しいとか、そういう感覚ではなく。
筋肉の隅々を巡りながら、優しくマッサージをしてくれるような感覚だった。
やがて、全身を巡りながら渦巻いていた熱が消えると、生まれて初めて感じるようなすっきりした感覚と爽快感が、全身に広がった。
「体が……体がすごく軽い! まるで自分の体じゃないみたいだ!」
間違いなく人生最大の戦いを終えた直後だったが、今の元気があれば、あの戦いをあと数百回でもできそうな気がした。
「こんなに力がみなぎってるのに、ここで止まるわけにはいかない!」
俺はすぐに鋸を持ってきて、地面に倒れた木を切り始めた。
〈ギコギコ!〉
「うりゃ、うりゃ、うりゃ! 人間チェーンソー、ヤリスの鋸さばきを見ろ!」
〈パカッ! パカッ!〉
「うりゃ、うりゃ、うりゃ! 薪割りなら、俺がスターウッド最速だったんだぞ!」
〈カッ! カッ! カッ! カッ! カッ! カッ! ボッ!〉
「切り分けた薪を、作っておいた穴に入れて火をつける! 重要なのは……木は燃やしつつ、酸素の供給を制限して、完全に灰にならないようにすること!」
俺は、木炭にする薪と一緒に入れておいた乾いた枝や硫黄、乾かしておいた葦や草が、ある程度安定した火力を生み始めると、
穴の上に、あらかじめ木の枝を編んだ骨組みに粘土を塗って作っておいた蓋を載せた。
蓋を載せると、やがて白い煙が中央の穴から噴き出し始めた。
「肝心なのは、空気の流入を調節しながら炭化を進めること!」
これもまた、メイメイが俺に無理やり叩き込んだ知識だった。
スターウッドの村は、それほど大きな村ではなかったので、ほとんどの店では必要な物を自給自足しなければならなかった。
普通、ダンジョンの近くの村は、ダンジョンでしか手に入らない各種『古代アイテム』や、モンスター、魔獣、そこに棲むボスが落とす珍しく強力な素材が、ダンジョンの外へ出て、初めて『市場』という場所にたどり着く場所なので、たいていは豊かで、サービスも充実している。
ダンジョンで採れる素材を売れるように加工する店だとか、ポーションを専門に売る店だとか、装備の手入れをする店だとかが、ダンジョンに挑む冒険者やローラーに便宜やサービスを提供し、彼らの落とす金でダンジョンの近くの村の経済が回る。
ただ、俺たちの村は少し特別だった。
ここは『ホライゾン級』、あるいは『国家級超大型ダンジョン』に分類される『時を喰らうダンジョン』。
それだけ、ここで採れる素材もかなり『ユニーク』なものだったので、この村で売ったり加工したりするよりも、都市や『王都』まで運んで、そこで処理していたため、村には金が回らなかった。
ここのダンジョンに挑む人たちは、すでに固く覚悟を決め、装備も必要な物もそろった状態で宿屋に着いていたのだから。
それでも挑戦する人は多かったので、宿屋と鍛冶屋だけは商売がうまくいっているほうだった。
そんなわけで、メイメイの家の鍛冶屋は定期的に、木炭にする木材を俺たちに頼んできた。宿屋の閑散期には、俺が直接薪を作り、鍛冶屋へ持っていった。
メイメイは父親を手伝って自分でも木炭を作っていて、俺は彼女に捕まり、無理やりその仕事を手伝わなければならなかった。
〈ヤリス! こういう昔ながらの方法で木炭を作るときは、絶対に蓋と穴の間に隙間があっちゃ駄目!〉
〈ヤリス! 蓋の穴が大きすぎるじゃない!〉
〈ヤリス! 蓋の穴から青い炎が出てこそ、うまくいってるってことだから、絶対に忘れないで!〉
やがて、穴から立ち上っていた白い煙が次第に収まると、青い炎が勢いよく噴き上がり始めた。
「ふっ……」
どこからか彼女の声が聞こえてくる気がして、笑いが漏れた。
「ああ、メイメイ……今になって、お前のありがたさを感じ始めたよ……お前は……未来が見えてたんだな……」
彼女に心から感謝した。
たぶん……俺の能力で経験値に換算するなら、1,000くらいはやりたい気分だった。
◇ ◇ ◇
木炭の作業まで終えて拠点に戻った俺は、いつもの倍の空腹を感じた。
それで夕食に、いつもの3倍もキノコを食べて、ようやく空腹が収まり、何かが充電されるような気がした。
「ふう……使った分は補充しておけってことか。心配するなよ~」
俺は腹を何度かぽんぽんと叩いてみた。
その後、『To doリスト』を更新した。
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〈必要なもの〉
- ベッド(たくさん必要になるぞ……)
- 布団と枕(大量生産が必要になった)
- 器(作っている途中! ただし大量生産が必要!)
-食器(合間に木を削って作っているところ!)
-テーブル(木材が十分にあって、板を作れれば。)
-水桶(木の板に余裕ができたら進める!)
-鉄器(鍋……フライパン……斧……+鍬、つるはし、シャベル、ピッチフォーク、ハンマー、釘まで……!)
-炉(鉄も取り出せて、器も焼ける!)
〈やるべきこと〉
1.食料の確保(農作業を始めたばかりだから、もうすぐ……! いつか狩りもできるかな? 何か飛んではいるんだけど……)
2.周辺の探索(右の端と左の端が気になる。忙しくて探索できなかったけど、いつかは!)
3.種の正体の確認(完了。ただし、どんな作物なのかはまだわからない!)
4.農地の手入れ
5.鉄鉱脈探し(完了)
6.堆肥の大量生産
7.水路作り(思っていたより、必要な道具が増えた)
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◇ ◇ ◇
23日目。
朝起きて、真っ先に畑を確認してみた。
やっぱり、俺の考えは間違っていなかった……ここには何か、とんでもない秘密がある。作物が育つ速さが想像を超えている。
まるでキノコが育つように、日ごとに成長していた。
この種が特別なのか? それとも堆肥が? それとも土が?
ただ、こんな学術的な疑問よりも大事なことは。
これから何か月も待たなくても、もうすぐ別の食材を味わえるかもしれないということだった……!
その後は、さらに経験値を得られる方法を研究してみた。
メェに乾燥キノコをやって少しずつ得る方法もいいが……今の能力で得られるポイントの力を知ってしまった以上、少しでも早くポイントをためておきたかった。
そして……俺はその方法を研究している途中、メェがほかの羊とは明らかに違う『特別な羊』だということを知った……。




