第12話 製錬の準備が必要だ!
俺が持っている『鉄でできた物』は、錆びた蝶番と短剣、鋸くらいだ。
これで実験してみる。
まず、錆びた蝶番は足元に、短剣は10mほど離れた場所に置いて『探索』を使ってみる。
『鉄でできた何かを見つけたい……』
『……』
『……ん?』
何も感じなかった。
「え……?」
俺はかなり戸惑った。こうして『探索』スキルの探索範囲を調べようとしただけなのに……。
「何が問題なんだ?」
頭をかきながら、じっくり考えてみた。
「探したい『何か』……『近く』にあるかどうかを感じ取る……ふむ……」
「……あ! まさか!」
俺は床に置いた蝶番と短剣を再び手に取り、拠点の外へ向かった。
〈メェ~〉
拠点の前では、メェが横になって休んでいた。
「ちょうどよかった! メェ、ひとつ頼みがあるんだけど……」
〈メェ~〉
俺はメェのふかふかの毛の中にそっと蝶番を置いた後、メェから少し離れてから、ポケットに入っていた乾燥キノコを遠くへ投げ、その後すぐに後ろを向いて目を閉じた。
〈メッ! メェ!〉
メェが起き上がり、小刻みな足取りで歩いていく音が聞こえ始めた。
【経験値 +4】
『今だ! 鉄でできた何かを見つけたい!』
その瞬間、今は後ろがまったく見えない状態なのに、まるで目で見ているかのように、背中のほうに蝶番があることを感じ取れた。
「やっぱりそうだったんだ! 拠点の中で実験したときは、俺が自分で床に物を置いたんだから……『すでにそれがどこにあるのか知っている状態』で、それを探す行為とは見なされないんだ!」
この点は、後でかなり役立てられるかもしれないと思った。
例えば『物の盗難』のような状況では、俺は自分の物がどこにあるのかわからないから、『探している状態』になるんだ。
「ふふふ……それじゃ、そろそろ採りに行こうか……鉄鉱石。」
◇ ◇ ◇
心当たりはあった。俺の友達は鍛冶屋の一人娘。彼女は鉱石が好きだった。
彼女からうんざりするほど頻繁に、何度も聞かされた話が、思わぬところで役立つことになるとは想像もしなかった。
褒めてやるぞ、俺の記憶力! ありがとう、メイメイ!
鉄鉱石は、一度見つければあり余るほど手に入る。
鉄は、この異世界の地中にも広く分布しているはずだ。
そうでなければ、地上で鉄器があれほど普通に使われているはずがない。
鉄鉱石は硬いというイメージとは違い、石で作った道具でも十分に掘り出せる!
ただ……その道具がいくつ必要になるのか、どれくらい大変なのかは、まだ未知数だった。
時間があるたびに少しずつ葦を編んで作った籠型の背負い袋に、予備の石英の鍬を入れておき、拠点の左側、温泉の方向へ足を向けた。
石英の帯があるということは、その周辺に鉄鉱石が存在する確率も高いということだった。
「よし、始めてみるか……」
『鉄鉱石を見つけたい。』
俺はいつも石英を掘っていた岩壁に着くと、全身を岩壁にぴったりとくっつけ、ゆっくり横へ移動し始めた。
見た目は少し滑稽だったが、俺の探索スキルの探知範囲がどれくらいなのかはっきりしない状況では、ほかに方法がなかった。
わずかな痕跡も見逃したくなかった。
「ああ……感じる、感じるぞ……! ただ、奥すぎるところにあるのは駄目だ。できるだけ岩壁の外に露出しているやつを探さないと……」
ただ、しばらく岩壁を抱きしめていると……鉄鉱石が『ある』という感覚は確かにあったが……それだけだった。
「やっぱり、まだレベルが低すぎるせいなのか……あるかないかくらいじゃ、まったく見当がつかない! 何か方法が……」
「……?! もしかして、こんなこともできるのかな?」
『俺の手に一番近い鉄鉱脈を見つけたい。』
と考えを変えた後、俺は再び手で岩壁を探りながら移動し始めた。
その瞬間……!
「これか?!」
俺はすぐに、手が触れた一か所に『鉄鉱脈』があることがわかり、背負っていた籠から石英の鍬を取り出し、そこを掘り始めた。
「ああ……発見!!」
周囲の岩石とは対照的な黒ずんだ赤い模様は、メイメイに無理やり見せられた本の中の鉄鉱脈の姿とそっくりだった。
◇ ◇ ◇
「ああ~、完全に疲れた~。せめてもの救いは、すぐ隣が温泉ってことだろうな……」
俺は用意しておいた石英の鍬3本を全部折って、ようやく作業を終えられた。
それでも……かなりの量の鉄鉱石を確保できた。
ただ、ここからが本当の始まりだと言えるだろう。
鉄鉱石を使える鉄器にするために必要な道具は……想像を超えていたからだ。
入浴を済ませ、鉄鉱石とともに拠点へ戻った俺は、記憶をたぐり寄せ、メイメイに教わった『塊鉄の製錬』の方法を拠点の壁に書き始めた。
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第1段階:鉱石の準備 → 鉄鉱石から不要な石や土を取り除き、細かく砕く → 必要:石のハンマー、水
第2段階:焙焼 → 鉱石をあらかじめ加熱して水分などを取り除き、製錬しやすくする → 必要:火、木
第3段階:炭作り → 木を酸素が不足した状態で加熱し、『木炭』を作る → 必要:木、土(石炭は近くにないかな? はは、欲張りすぎだろうな?)
第4段階:製錬炉作り → 『粘土』と石で高温に耐えられる炉を作る → 必要:粘土、石
第5段階:鉄の還元 → 鉄鉱石と木炭を入れ、空気を送り込んで酸化鉄を『金属鉄』に変える → 必要:木炭、ふいご
第6段階:塊鉄の回収 → 製錬炉から不純物の混じったスポンジのような鉄の塊を取り出す → 必要:火ばさみ
第7段階:鍛錬! → 熱い鉄の塊を繰り返し叩いて不純物を減らし、道具の形にする → 必要:ハンマー、金床、鍛造用の炉
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「うっ……全部書いたら頭が……やることが倍になった……」
これが、一番早く『鉄器』を作る方法だった。
『塊鉄』は、地上で使っていたものと同じ品質の鉄では決してなかった。
塊鉄はただ、鉄鉱石を粗く製錬して不純物が混じった状態でも、使える程度にはなっている鉄にすぎない。
地上にいたなら、鉄鉱石を専門的に製錬してインゴットにしておいたものを、再び溶かして型に流し込んだり、
熱したインゴットを叩いて成形したりして、滑らかで、耐久性も強度もずっと優れたものにできるが、
今の俺は、いくら頑張ってもそんなインゴットまでは作れそうになかった。今の最善は、この程度の錬鉄!
メイメイは、塊鉄1kgを得るには鉄鉱石がおよそ10kg必要で、鍛錬を終えるとその量が20%ほど減ると言っていた。
それに必要な炭の量も、鉄鉱石に対して1対1!
「長い戦いになりそうだな……ふふふ……」
だが何だか、かえって笑いがこみ上げてきた。
◇ ◇ ◇
21日目。
朝から俺は小川へ向かい、流れの遅い場所や、流れが曲がる内側で、難なく『粘土』を手に入れられた。
普通の砂とは違い、手にくっつく灰褐色の土が粘土だ。
粘土が見つかったことで、先延ばしにしていた『器』も作れそうだ!
粘土を適量、手ですくって籠に入れ、拠点に戻って久しぶりに簡単な器を作ってみた。
その後は器を外で乾かしながら、一晩かけて作っておいた石英の鍬で、近くの地面を掘り始めた。
一日を終える前に一度畑へ行ってみたんだが……もう芽が出ていた……成長速度はこれで合ってるのか?
22日目。
朝になってようやく、俺はメェを通じて新たに1ポイントを得られた。
今回のポイント獲得で得た情報は、かなり大きかった。
最初のポイントを得たときの経験値は100、2回目のポイントを得た時点では経験値110と推定。
ポイントを得るほど、次のポイントまでに必要な経験値も増える!
成長とは、限界を超えること。やっぱり、いつも同じ量の経験値だけでは、その限界を超えられないってことだろうな~。
経験値は持ち越される。つまり、前回『1ポイント』を得て、『経験値3』が残っていたんだが、今回、合計107の経験値を得ると、新たなポイントを得られた。
『もし今みたいに必要量が10ずつ増えるとしたら……これから一週間で2~3ポイントくらい得られるってことか? メェを幸せにしてやれるサービスを、もっと増やしてみないと……』
そして、一生ずっと地上の木ばかり切ってきた俺と、地下世界の木との真っ向勝負が、ついに始まった。
これまでは、硬いにもほどがある地下世界の木の頑固さに、手を出すことすら考えられなかったが……。
もう避けられなかった。俺は前に進むために、大量の木が必要だった。
これまでに、俺の力と体力はかなり上がった状態。そこに、いざとなればポイントで役に立つスキルを取る。
用意したものは、石英の斧たった15本……。
「今日中に切り倒してやる……うりゃっ!!」
〈ガン!〉
気合いを込めて振り下ろした俺の最初の斧の一撃は、きれいに木の奥へ食い込んだ。
確認してみると、なんとブックマークが2件も増えていました……ふふふ。
ブックマークの一つひとつが本当に嬉しくて、しばらくその数字を眺めてしまいました。
作品に興味を持ってくださって、心から感謝しています!
これからの物語も、ぜひ楽しみにしていてください!




