第11話 鉄鉱石が必要だ!
キノコへの疑問を残したまま、俺は実験用の畑を確認するため、拠点の外へ出た。
〈メェ~〉
「おっ! おはよう!」
拠点の横で何かを噛んでいたメェは、お尻を振りながら俺に近づいてきていた。
「あちゃちゃ……キノコを忘れちゃったな。ごめん! 畑に寄ったら、すぐ持ってきてやるよ!」
〈メェ!!〉
畑に向かった俺は、すぐに堆肥と混ざった土をつかみ、手の中で優しく転がしてみた。
「すごい……まだ一日も経っていないはずなのに……ぱさぱさだった土が、もう肥沃な土地になった……これなら、すぐ植えてみてもよさそうだ!」
俺はすぐに拠点へ走り、種の入った木の板と、メェにやる乾燥キノコを持って出てきた。
メェはキノコの匂いを嗅ぎつけたのか、しきりに俺にまとわりつき始めた。
「ははは、本当に俗物だなお前? でも待て~。お前にキノコをやるのは計算が必要なことだから、むやみにやれないんだよ!」
メェと一緒に畑へ向かった俺は、30粒の種を適度に離して畑に植えることに成功した。
その後、いちばん重要なことを進めた。
昨日得た経験値は、合計58。メェに乾燥キノコを一つやるごとに、10、9、8、7……この順で獲得量が減っていく。
10単位でも50単位でもなさそうなので、今日は100単位に合わせてみる。
「楽しむ準備はできたか、メェ?」
俺はポケットから乾燥キノコを取り出しながら言った。
〈メ……! メェ!〉
メェは、ものすごく腹が減っているようだった。
いつもなら生のキノコを食べていたはずなのに……俺がメェに悪い癖をつけてしまったんじゃないか?そんな親心にも似た心配が、一瞬頭をよぎった。
「ほら、一つ~」
〈もぐもぐ……メ……メェ~!〉
【経験値 +10】
「ほら、二つ~」
〈もぐもぐ……メェ~!〉
【経験値 +9】
「よし! よく食べるな、メェ! これもおいしく食べてくれるよな?」
そうしてメェにキノコを渡し、メェが今日の『6個目』のキノコを噛み始めたとき……
【ポイント +1】
「お……おおお!! ついに手に入れた、ポイント!!」
俺は、初めてのポイントを手に入れることができた。
◇ ◇ ◇
計算してみると、最後にやったキノコで得た経験値は5。
合計経験値は103だった。
つまり、今のところ1ポイントを得るには99~103の間の経験値が必要だということだが、これも推測にすぎない。
「100単位なのかな……なら、これから二日に1ポイントずつは得られるってことか?」
でも、これもまだ早まった判断はできなかった。
普通のゲームなら、レベル1から2に上がる経験値と、2から3に上がる経験値は違うのが常だったから。
俺はひとまず拠点へ戻り、ポイントをどこに使うか、しばらく考えてみた。
そもそも、どの能力にポイントを振ればいいのかを示す選択肢も、今すぐ習得できる能力の一覧も見当たらない。
つまり『カタログ』がなかったので、何をすればいいのか途方に暮れた。
「ステータスに書いてある能力しか強化できないのかな? いや、それにしては、基本ステータスはここで暮らしているうちに、かなり順調なペースで上がっている。『特殊能力』で苦労して手に入れた『ポイント』を、ただ基本ステータスを上げるために使うのは、かなりの無駄だ……」
頭がずきずきしたので、俺は石像さんの足元に頭をつけて、横になってしまった。
「ああ~、何かヒントみたいなものはありませんか、石像さん~」
俺は冗談半分に、少し不満をこぼしてみた。そのとき。
〈こつん〉
「ん……?」
音のしたほうに顔を向けると、扉の前に立てておいた石英で作った鍬が、扉のほうにこつんと倒れていた。
「そうだ……今は寝転がってる場合じゃない! 給料をもらったあと、すぐにどこに使おうかな~と悩んで、着もしないキャラクターTシャツを衝動買いしてしまうのは、素人のすること。このポイントが必要な瞬間は、必ず来る。今は財布の紐を締めて貯金! 悩む暇があったら働け、ヤリス!」
俺はその場で勢いよく立ち上がり、倒れた鍬を持って、拠点の外へ向かった。
「ありがとうございます、石像さん!」
俺は石像さんに軽く挨拶してから廊下へ向かい、ふと立ち止まった。
前にもこんなことがあった気がしたからだった。
俺は扉を完全に出る前に、石像さんを振り返った。
「ただの偶然なのかな? 何か、助けられている気がする……」
◇ ◇ ◇
今日やることは、まさに『水路』の作業。
正確ではないが、今の水源は拠点を出て右へおよそ1km行かないとたどり着けないので、これからの農作業を考えれば、必ず必要になる作業だった。
そのうえ、水の消費量もかなり多い状態で……毎回あの重い木桶を持ち、引きずって往復するのでは、カロリーの消耗も、体の疲れもかなりのものだった。
まあ、おかげで体力と力は少し上がったけど。俺は筋トレをしにここへ来たんじゃない!
「千里の道も一歩から!」
水路の構想を練り終えた俺は、意気揚々と、小川の上流側にある岸辺へ最初の鍬を打ち込んだ。
でも……
「全然ダメだ!!」
水路工事は、計画と意気込みだけではできないことだった。
最初の5mほどは小石を取り除くくらいで済むのでよかったが、水路が森に入った瞬間。
「まったく刺さらない……」
森の木々はすでにこの地に根を張れるだけ張っていて、その根は地面の下であちこち絡み合っていた。土は固く、そのうえ木の根と所々に隠れた石の塊にかなわず、石英の鍬の刃は折れたり飛んだり……
「このままじゃ、一生荷運び人だ……はあ……」
絶望して地面に座り込むと、ため息が自然と漏れた。
「ああ~、どこかで鉄の道具を手に入れる方法はないかな……『鉄鉱石』さえ何とか手に入れられれば、作れそうなんだけど……鉄」
その瞬間。
〈ピロン〉
「ん?」
【『探索』にポイントを追加する。〈うん〉〈いいえ〉】
「ええ?!」
異世界のシステムが、俺に応えたように見えた。
「手に入れられるようになるのか……鉄……?」
俺は『うん』を選ぶ前に、ほんの少し考えた。
この能力が本当に本当に必要なのか、確かめる最後の過程だった。
でも、いくら考えても、鉄は俺に絶対に必要な鉱物だった。
「うん」
「これでいいのか?」
〈ピロン〉
【探索 +1】
『うん』と言うと、少しして目の前に文字が現れた。
【探索Lv1:探したい『何か』が『近く』にあるかどうかを感じ取れる。】
「お……おお!! 説明はかなり大ざっぱだけど、とにかく見つけられるようになるってことか!」
ぞくぞくする感覚が、全身に巡り始めた。
『余分なポイントがある状態なら、必要に応じて「おすすめ」もしてくれるシステムみたいだ……』
『待てよ……これ、まさか……! これまでは何に使うのか、まったくわからなかった【ガイドシステム】ってスキルのおかげなのか?』
少しずつ、能力の仕組みがわかってきた。
「この世界に意味のないスキルはないってことか……よし、じゃあ一度使ってみるか? 『探したい』ものを感じ取れる……なら、何か心の中で望めばいいのかな……」
『鉄鉱物を見つけたい~』
心の中でこれを思い浮かべた瞬間、かすかではあるが、この近くに鉄があるかないかくらいは感じ取れた。
確かに足元にも鉄はあった。だが、その反応はアリほどに小さかった。どうやら、土の中に粉のように細かく混ざっている鉄分らしい。
「ああ……これくらいじゃ足りない……何か方法が……」
ふと、折れた石英の鍬が目に入った。
「そうだ……森じゃなく、岩壁を見て回ろう。石英も、そうして見つけたんだから!」
俺は石英の鍬も放り出したまま、すぐに拠点へ走り始めた。
「試してみることを思いついた!」




