第5 隣
「おはよう! Y君 いつもはやいよね」
「…あ おはよ ま 家は近いけど」
「… そうなんだー やっぱり近いと楽だよね」
「ぁあ そう」
「…」
会話は難しいものだ。個人的には、不意にそれが途切れることを
恐れてはいけないと思う。
入学してどのくらい経っただろうか。いまだ俺は、この隣のロリとしか
まともに話せていない。
顔のせいだろうか。今思えば、俺の顔といなり寿司を結び付けた大家は
実は正しいのかもしれない。
隣はよくしゃべる。天真爛漫、天衣無縫といった感じだ。
この俺に話しかけてくるぐらいだ。色々な人と話している。
あだ名でも呼ばれている。俺はあだ名で呼ばれたことなどあっただろうか。
おそらくコウノトリを信じているだろう。
いや こうみえて、夜な夜な汚いオッサンと情事にふけているかもしれない。
それは有りなのか。 なんだか隣のロリがロリビッチに思えてくる。
駄目だ。偏見は良くない。心を狭くする。
ロリがロリビッチになることは、和食がフレンチになるようなものだ。
そこに優劣はなく、その美味しさは決して変わらないはずである。
よって俺は、その汚いオッサンを尊敬するべきなのだ。
貞操観念について個別的に考察していると、時間が過ぎていた。もう昼か。
部活の勧誘だかなんだか知らないが、先輩たちが騒ぎながら教室に入ってくる。
そんなことをしている暇があったら、練習した方が良い気もする。
が もはやこれは一種の行事なのだ。
勧誘のビラを、バレー部とバスケ部と総合政策学部からもらった。
多分、自分は背が高いからだと思われる。
勧誘はありがたいが、既に俺は入る部活を決めている。
昼休みは短い。昼飯を買いに行かなくてはならない。
高校に入ったのだから、やっぱりいろんな人とお話ししたい。
でも いまいちかみ合わない人が隣にいる。
ちょっと、いやだいぶ不思議な人だなって、はじめて会ったときから
思ってしまう。
何度か会話しているけど、いつも変なところで途切れてしまう。
私の話し方がわるいのかも。
自己紹介のときはどうしたんだろう。なんかのポーズかと思った。
でもなんだか面白かった。
隣の席のY君は、いつも表情が読めない。何を考えているのかわからない。
感情がすぐに出る私とは大違いだ。
とっても背が高い。私は150もないので、ちょっと羨ましい。
意外とはっきり話すから、ちょっとびっくりする。
会話も続かない。けど なんだかきになる。 変な感じ。
「ねえ るーこ ちょっといい?」
後ろから呼ばれる。るーこはあだ名だ。
深瑠子 だからるーこだ。 誰が考えたんだろう。
このあだ名をY君が呼ぶ時って、、。
……でも、まだ名前を呼ばれたこともないけど。
思っていることは、大抵の場合、すれ違う。
フラグにも建築基準法があれば、なお良いだろう。




