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第21 真ん中通るは

部屋の中で、二人の高校生が古典の問題集を解いていた。 

  

この部屋だけで、Yが住んでいるアパートの号室よりも 

広そうである。

 

「むッあぁああああーー だりーィーーー」 

「あーも、ぅるさいよ、あんた」 

「えーぇ、いーじゃん、声出した方が気持ちいいっていうし。」 

「……やめろや...バカ」 

「あは、悪かったって。そのきはアッチ系は苦手だもんねーー」 

「...いいから問題解けよ。」 


「いやだってさぁ、あたしたちモダンな現代人じゃん? 

なんで少納言の気持ち考えなならんの?」 

「科目であるから、しゃーないじゃん。」 

「係り結びとかイミフだわ。…あーーやってられんわ。」 


この二人は、少し前に登場した、二段階右折をしなかった 

二人組である。 

基本テキトーなことを言っているやつが短髪大平原で、 

切り返している方が長髪造山帯となる。 


「息抜きだー、息抜き。 休憩せんと。」 

「え? さっき休憩したばかりやん。」 

「過労死防止せんと。 あーーつッぅかれたー」 

「過労じゃなくて怠惰で死にそうだな、なつは。」  

 

問題を解くのは進まなくても、会話は続く。 

この二人は、かつて小学校の同じクラスであったことがある。 

片方はすぐ転校したので、ともに過ごした期間は長くは 

なかったのだが、お互いに不思議と気が合った。 

その転校していった片方が、もう片方が通っている中高一貫校に 

高校から入学してきたので、二人は、再開を果たした。 

  

「なーーぁ、山手線ゲームしない?」 

「なんで」 

「いやさあ、なんか、山手って古典ぽくない?」 

「意味わからんわ。」 

「じゃーーやらんの。」 

「やらんわ、たわけ」 

 

丸いといっても実際の路線図は結構いびつである。 


「わかったよ、じゃ中央線ゲームでいいいよ、もうっ」 

「なんや中央線ゲームって」 

「あえ? 知らんの?中央線ゲーム。ヤバっwありえねーwW」 

「いや、知らなくてよかったわ、このうつけ」  

「あーも、細かいなぁー そのきちゃんは、」 

「ちゃんづけするな」 

 

乗れば名古屋まで行けるらしい。 


「はいはい。そーですか。じゃ、身延線ゲームでいいわ」 

「…やや西にシフトしてんじゃねーよ。 

だいたい、乗ったことあんのかよ、身延線?」 

「ぁたりめーーよ、身延とはズッ友だかんね。」 

「今から身延で土下座しろ、マジで」 

  

「んじゃ、麻雀やろーよ」 

「勝手にやってろよ。…てかルールしってんの?」 

「…っツモ! なんつって」 

「お前は人生からアガるべきだな。」 

「あはあああはhっ やっぱ、キレが違うなぁー 

いやさぁ、そののツッコミスキルが錆び付いてたら 

どうしようかなー  とか思ってたわけ。」 

「……はいはい、そうですか」 



古典は既に忘れられ、二人は菓子に手を付ける。 


「…なんかさぁ、こうしていると思い出すよね。」 

「あ? 何を?」 

「あいつだよ、あいつ。小学校のときの」 

 

「…! ...ああ、あいつね...いたね…そんなやつ…」 


「あたしさ…あいつよりアレなやつと、会ったことないわ。」 

「…私も...そうかも…」 


誰の事だろうか。 


「ぬふぁふふふ、そーのちゃんさーー あれでしょ?」 

「…何よ…。」 

「好きだったでしょ、あいつのこと」 

 

「!!! そん、しn、そんなわけないでしょ、お」 

「わっかりやすいなぁあ」 

 

「…うるさい、うるさいよボケなつ」 

 

「まーまー大丈夫だって。そのきが一途なムッツリだってこと 

街中みーーんな知ってるからさぁあ」 

 

「へ、hえn、変なこというんじゃないよ、変態」 

「あちゃーー、自己紹介しちゃったねぇーーそのきちゃん?」 

 

「…! 、こいつっ…!」  

 

このままいくと古典ではなく、保健体育になりそうである。 


この二人が小学校で同じクラスであった頃、もう一人、この二人と 

三人組的なものを構成していたやつがいた。 

そいつは常に無表情で、そして各人の想定を容易に凌駕していく 

若干問題のある児童であった。  


 

もしかしたら、その児童に、心当たりがある人がいるかもしれない。 


 

そいつも生きていたら、おそらく高校に入っているはずである。

 

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