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17.王都への旅路①

あんまりぶらり旅じゃないので、タイトルを変更しました。


 レイは不思議な人だ。 


 野盗に捉われて人生を諦めていた私たちのもとに現れた人。

 元村人でまだ若いのに、アンバランスなほど知識を持ち、その知識で事も無げに私たちを救ってくれた。

 手を尽くして人間らしい生活を取り戻させてくれたし、街に戻る手助けもしてくれた。


 私は、手足を縛っていた縄をほどき、抱き起して薬を飲ませてくれた彼の手の暖かさを決して忘れないだろう。

 一生かけても返せないほどの恩ができたと、そう思っている。



 今、私たちは月宗街道メインストリートを北に移動している。

 もうそろそろ一ヶ月くらい経つだろうか。


 彼の行商人としての旅に同行すると、そのバイタリティに圧倒される。

 いつも何かをやっている人なのだ。


 さっきは路傍の草を薬草だと言って採取していたし、休憩時にはそれを広げて乾燥させ始めるだろう。夜にはいつも素材を使って調剤しているし、最近は紙に書き物もしていて休む時と言うのが無い。


 でも不思議なことになぜだかそれを止めようと言う気にならない。

 たぶんそれは、どんな行動もどこか楽しげにやっているからだと思う。

 やることがたくさんある人特有のせかせかした感じもないし、柔らかいと言うか凄い人特有の鋭さみたいなのが無い。威圧感も無い。ついでに威厳も無い。


 ……だから、私みたいな村娘でも普通に付き合えるんだろうなぁ。


「ファミーネさんここ間違ってる」

「ご、ごめんなさい……」


 隣では、ファミーネが書き付けの誤字を指摘されて恐縮している。


 この旅がスタートした頃から、私たちは読み書きと薬学の勉強を始めたのだ。

 だいたい今みたいに昼の大休憩の時や、寝る前に少し練習をしている。


「そんな謝らなくても良いって。別に間違えたからって、晩御飯のデザート抜いたりしないから」

「や、やめてよぉ」


 そういえばようやく私たちも彼への敬語をやめて、年齢相応の付き合いができるようになってきた。

 私とファミーネは同い年の十八歳だから彼とは三歳差はあるけど同年代だしね。今の気楽な付き合い方は結構気に入っている。


「デザート抜きにしないよ? あと二回間違えたらおかず抜きとかにもしないし」

「もーやめてったらぁ。うぅ……私の方が年上なのに……」


 年下のレイにいじられて涙目のファミーネはどう思ってるかな?

 たぶん、この子も今の関係を悪く思ってはいないと思う。


 今はちょうどいじられて可哀想な感じになってるけどじゃれ合いの範疇だし、普段はむしろレイに絡んでいくのはファミーネの方なのだ。

 この子の場合、レイ相手なら割とすぐに男性恐怖症を改善できそうな気もするほどである。


 というより、私にまでレイがあーだレイがこーだと報告しに来るのはやめてほしい。彼女なりに尊敬しての行動だろうけど、そのうち「レイが水飲んでた」とか「レイが歩いてた」とかでも報告しにきそうだし……。


「はいレイ、私の分できたよ」

「……オッケー。カティアさん問題無し。薬箱の右上に飴入ってるから、食べてていいよ」

「あたしは別に甘いものにつられたりしないんだけど……」

「いいからいいから。午前中も結構歩いたし、疲れてるから美味しいと思うよ」

「……そうね。じゃあ、もらおうかな」


 私が薬箱の方に向かうと、後ろからまたファミーネをいじるレイの声が聞こえ、「ふえぇえん」という情けない鳴き声が続いた。


 取り出した飴を口の中で転がしながら、私は木陰に腰を下ろして目を閉じる。

 ほんの一ヶ月前までの苛烈な日々を思えば、何て幸せな生活だろうか。


 私は一度恨んだ神様に手のひらをかえして感謝しながら、口の中の甘さをしばらく味わっていた。




 ■ □ ■ □ ■ □




 順風満帆という言葉は今の俺にこそふさわしい。

 そう自惚れそうになるほど、旅は順調だ。


 現時点で旅を再開してかれこれ二ヶ月くらいだが、転換点は一ヶ月くらいのところにあった。


 まず、カティアさんとファミーネさんが、等級外ポーションを作れるようになったのがそれくらいの時期だった。他にも細々こまごまとできることが増え、今まで俺一人で行っていた作業が三人がかりでできると言うのは非常に大きかった。


 次にそれに関連して、一ヶ月くらいしたころに俺は馬車を購入した。

 これは 遺跡のそばで採取した質の良い薬草から作ったポーションを売り切ってまとまったお金ができたからというのもあるが、単純に作れる薬が増えて荷物が増え、移動速度に影響を与えていたのが理由であった。


 さすがに女性の体力で水物であるポーションを何リットルも運ぶのは厳しいよな。

 俺ですら、薬箱の重さに耐えかねていたし。

 しばらくは同行してくれていたジュリアスたちに手伝ってもらっていたんだが、さすがに甘え過ぎていたので思い切って購入に踏み切ったのだ。

 御者のやり方は、はじめジュリアスの御付きの人(ガチで使用人らしい。流石貴族)に教えてもらっていたが、今ではもう慣れたものである。


 馬車の購入は、輸送力の増大に伴う収入の増加と、移動速度が上がったことによる旅程の短縮へと繋がった。

 賦活化装備を追加で買うことができたし、予想より一ヶ月以上早く王都に到着できそうな感じだ。

 まあ旅程の短縮については、ジュリアスたちが野営時の見張りとかで協力してくれるおかげで、いちいち旅籠に泊まる必要が無くなったのも大きいんだが。


 ところでジュリアスたちは、どうやら王都までついてきそうな感じである。

 彼ら自身目的地が王都であり、護衛の依頼とかを受けていちいち依頼主と折衝をするより俺たちと行く方が気楽でいいとのことだ。

 街に立ち寄る度に討伐系の依頼も受けているし、こちらも順調そうで何よりである。


 ちなみに俺もたまに彼らの討伐依頼に同行していたりする。

 さすがに戦闘能力が違う(ジュリアスは今レベル15らしい。同時期に冒険者になったはずがどうしてこうなった)ので、毎回と言う訳には行かないが。

 その際に召喚術を見せたらちょっと引くぐらい喜んでいたので邪魔ではなかったと思いたい。役に立てたかどうかは不明である。



 最後に俺のレベルについて。

 ようやくレベル7に上がって、現在のステータスは以下の通りである。



====================

■名前:レイモンド

年齢:十五歳

性別:男


レベル:5  → 7

体力 :38  → 48

魔力 :17(+1) → 40(+3)

力 :12    → 13

防御 :10    

速さ :7    → 8


クラス:召喚士

アビリティ:学識

メインスキル:召喚ランク1【クロウ】ランク2【ピクシー】

サブスキル:狩猟学レベル1/3、薬学レベル1/3、

      生物学レベル1/5、魔法軽減レベル3/5


適正スキル:魔力増強、目利き


装備:皮の篭手(右手、魔力+1)、真鍮の指輪(左手、魔力+1)、銀のサークレット(頭、魔力+1)


次回レベルアップまでに必要な経験値: 267/1200

経験値取得条件:召喚回数×召喚ランク

====================



 うーん、魔力が上がったのはいいけど、他のステータスは伸びないし必要経験値が伸びすぎてどうにも良くない。


 まあ次のレベルアップで魔法軽減がレベル4になり、魔法の消費魔力が四割軽減イコールクロウの召喚に必要な魔力が1になるので、状況としてはとんとんと言う感じか。


 レベルアップについては、王都到着に向けていくつかの策を考えている。


 一つは「魔力増強」以外の、魔力を増やすサブスキルの取得だ。

 「魔力増加」と言うらしく名前が超紛らわしいのだが、パーセント増加の「魔力増強」に比べて「魔力増加」はレベルごとに一定数魔力が増加するらしい。

 その分レベル上限が低いということだが、それでも低レベルのうちはこちらを取得したい。もちろんこの辺はアカデミーに行って取得方法の詳細情報を得てからにはなるが。


 二つ目は魔力回復ポーションによる召喚回数の増加だ。

 かなり力技にはなるが、これも上手くいけば有効な方法になると考えている。

 問題はこの魔力回復ポーションの流通が、国の方針で最前線に集まるように仕向けられていると言うことだ。これにより今俺がいるような場所はもちろん、王都にたどり着いたとしてもかなりのお金を掛けないと入手が困難なのである。


 しかもジュリアスたちに聞きだしたところによると、材料自体も似たように流通制限がされていて、手に入り辛いから自分で作るとのも難しい。

 

 俺は結論として、新しい材料で魔力回復ポーションを作ることにした。

 つまりは新たなレシピの作成である。


 そういうことをジュリアスに話したら、


「キミ、もしそれができたなら論文モノだし、国に勲章がもらえるレベルじゃないか」


 と言ってもの凄い笑われたが、俺は至って真剣である。

 今のところ糸口はゼロだが、ほんのちょっとでも魔力を回復する素材があれば、それを濃縮するなりなんなりやりようはあるだろう。

 そう言った素材について、村々で口伝を収集したりしているし、もちろんアカデミーに着いてからいろいろ調べたりする予定だ。


 それにもしジュリアスの言うように勲章ものだとしたら、故郷に錦を飾るのにこれ以上ない土産になるだろう。

 稼いで、家族に楽をさせてやる。その初心は今でも忘れてはいない。


 日々は採取や薬品づくりで過ぎていくが、夢は膨らむばかりだ。

 王都に着くのが楽しみである。




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