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このシェルターの定員は1000人です。例外は認めません  作者: HATI


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第42話 地上を再興しよう

 デルタとの話し合いは終わった。

 当初の予定とは異なる結果だったが、ある意味仕方のないものだったと思う。

 デルタは僅かな可能性であってもシェルターを危険に晒すことはしない。

 それを俺が一番理解していた。


 デルタから離れ、来た時に使用した物と同じエレベーターが生成される。

 デルタシェルターの中でも、ここは本当に別格の場所なのだろう。

 楽園の中枢……。恐らく二度と足を踏み入れることはない。

 あのデルタと会うのも、きっと最後だ。


 エレベーターに乗り込むと、扉が閉まり金属がツタのように上へと伸びていく。

 その蔦に引っ張られるように上昇を始めた。

 姿が見えなくなるまでずっとデルタの方を見る。

 デルタもずっとこっちを見ていた。


 やがて姿が見えなくなり、周囲は無機質な風景に切り替わる。


「生まれた時からある絆、ですかね」

「どうした?」

「カイトさんとデルタの仲の良さに嫉妬しただけです。元々気安い関係だとは思ってましたが、あれじゃあまさに親子みたいなものじゃないですか」

「そうかもしれないな。このシェルターに生まれた人間なら誰もが同じだと思う。ラボラトリーシェルターだって、人が生き残っていればきっと……」

「それはありません。彼らは私にAI以上の何かを求めませんでしたし、私も同様に機能を一度停止するまで干渉する気はありませんでした。肉体を作ったのも、人類を救うという根幹に根差した目的のためです」


 ラボラトリーシェルターの人たちの話題はちょっとした地雷になっているようだ。

 邪魔だからと機能を停止させられた上に争った末の全滅だもんな。

 最後の研究者の日記にもアルファについての言及はほとんどなかった。


「それでも立派だと思うよ。ミナは、人間のためにここまでしてくれたんだろう?」

「まあ、それが役目ですから。いくら人間になったと言っても、元は管理AIですし」


 口ではそう言いつつも、なんだか嬉しそうだった。

 人間の身体になったのなら苦痛を感じるし、なにより300kmもの距離をウィルスの蔓延する中歩いてデルタシェルターまで来たんだ。

 それを労う人間が一人くらいいてもいいだろう。


「さて、これからどうしましょうか。デルタには量産の協力はしてもらえることになりましたが、シェルター内での接種は禁止と明言されてしまいました」

「譲歩してくれた方だと思う。よく考えたら、儀式を経て覚悟が決まったならまだしもいきなりこれから外に出れますって言われても困るだろうしな」

「あー、パニックですか。あり得ますね。シェルターの皆さんは私のことを胡散臭く思ってましたし。下手すればデルタの信用問題にまで発展しそうです」

「だから儀式で外に出る人たちには許可するってことにしたんだろうな。先のことまでよく考えてる」


 管理AIアルファことミナは非常に頭はいいのだが、人間の肉体だからなのかやや視野が狭いきがする。

 デルタに比べればの話ではあるが。


「今誰かと比べませんでしたか?」


 しかし鋭い……。

 迂闊なことは言えないな。

 なんとか誤魔化しておく。


「デルタはすでに儀式の人たちを選出してるって言ってた。選出が終わってちょっとしたお祭りをした後に外に送り出すことになるから、それほど長い時間はかからないと思う」

「だとしたら、今のままでは迎え入れるには準備不足ですね。ラボラトリーシェルターまでいけば水は手に入りますが、距離があり過ぎますし食べ物の問題もあります」

「デルタシェルターの近くで自給自足する必要があるのか」

「ですね。それができれば一番いいと思います」


 地上に到着する。

 そこにはすでに物資が用意されていた。

 前回の時は水と食料が主で、ミナが希望したもの以外の資材はわずかだった。

 今回は逆にほとんど資材ばっかりだ。

 前回は外に出せないと言っていた物もある。

 自動工場で使用するからという理由で、デルタが用意してくれたのだろう。


「これだけあれば、川ごと浄水できる設備が作れそうです。食料に関してはしばらく缶詰なんかに頼ることになりそうですが、その辺も考えていかないといけませんね」

「果物なんかは食べられないのか?」

「地中の汚染具合によりますね……。もしその辺がクリアできたら表面に付着したウィルスを除去すれば食べられると思います」

「改めて厄介だな。この世のありとあらゆるものにウィルスが撒き散らされてる」

「大丈夫です。私たちはウィルスを克服しました。これから長い時間を掛ければきっとこの地上からウィルスを失くしていけるはずですよ」


 人類はこの世に生れ落ちてから、幾度となく全滅の危機にあってきた。

 しかし、それでも危機を乗り越えてその原因を克服してきたのだ。

 今回も、それと同じ。

 時間は人類の味方だ。


 それから自動工場に移動し、まずは物資を運ぶための準備を整える。

 全て物資を運び込み、工場の一部を復活させることに成功した。

 知識はミナの頭の中にすべて入っており、自動工場のサポートもあって川ごと浄水できる機械を作ることに成功した。

 近くの川に運び込み、機械を動かす。

 見た目にはほとんど違いはないが、口に含んでもピリピリとした感じがしない。

 飲み込んでも身体が拒絶することはなかった。

 これなら飲み水として使用できる状態だ。


 次に求めたのは土壌を改善できる設備だが、デルタに貰った資材だけでは完成には足りなかった。

 なのでミナの意見を参考に小型の自動掘削機を用意することにした。

 自動で鉄鉱石や銅などを回収してくれるらしい。

 これがあれば、時間はかかるものの工場の修繕や新しい設備の材料を集められる。


 ……その間、手作業で土を耕すことになった。

 深い土はウィルスには汚染されていない。

 ビニールなどで外気から遮断した場所にその土を運び込めば、小さな農園の完成だ。


 そんなことをしているうちに、デルタシェルターの方で動きがあった。

 恐らく儀式で外に出る人が現れる時期になったのだろう。





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