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このシェルターの定員は1000人です。例外は認めません  作者: HATI


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第37話 再びデルタシェルターへ

 朝からシャワーを浴びると身体も心もスッキリする気がする。

 もし地下水が汚染されていたら、例えシェルターがあったとしても人類は全滅していただろうなと思う。

 安全な飲み水が三日間確保できなかったら、死亡すると言われている。


 シャワーから上がり、タオルで身体を拭いて着替えた。

 先にシャワーを浴びていたミナが食事を用意してくれていた。


「今日は豆の缶詰です。砂糖がまだあったので入れて食べると栄養がありますよ」

「栄養というかカロリーが凄そうだな」


 貴重な食料だ。贅沢は言ってられない。

 口に含んだ時の甘さが衝撃的だったが、慣れると意外といける。

 糖分は身体が求めているんだろう。

 食べ終わり、片付けを終わらせる。

 それからこの後の作業について話し合う。


 最大の目標かつ一番急がなくてはいけないウィルス対策のワクチン製造は見事に成功した。

 ウィルスに汚染されていた俺たちはワクチンを接種した際に非常に苦しい思いをしたが、未感染の人が予防接種する分にはそこまで負担は大きくならないだろう。


 食料も缶詰なら付近のシェルターから回収できそうだ。


 となれば、次にやるべきことは……。


「カイトさん、通信機能はやっぱり回復しませんか?」

「無理そうだ。あらかた弄ってみたけどどれも反応がない。付近の通信用設備が全滅してるし、そもそも回線自体がどこにも繋がってないんだと思う」

「ということはやっぱり直接行くしかありませんか」

「ああ。デルタシェルターに行く準備をしないとな」


 人類が地上にいた頃、世界はリアルタイムで繋がっていたという。

 地球の裏側にいる相手とほぼロスタイムなしで会話できたのは、インターネットという回線が存在したからだ。

 海底を通る巨大なケーブルや、あるいはアンテナを通した無線。

 とっくに失われた宇宙技術による衛星通信など、色々な方法でそれを実現していた。


 だが、それは昔の話だ。

 人類がウィルスに敗北しシェルターに籠って以来、それらの産物はメンテナンスされることなく放置される。

 中には自動メンテナンス機能を有していた施設もあっただろうが、あの巨大自動工場のようにどこかで資材が切れてその活動を停止したはず。

 百年を超える時間の中で、次々と破損したりして機能が使えなくなった。


 デルタシェルターが他のシェルターとの通信ができなくなったのもその影響だと思う。

 通信をするならアナログ的なやり方……シェルター同士を有線で繋ぐしか方法はない。

 300kmのケーブルなんてもの、もうどこにもないから無茶な話だ。

 資材があればあの巨大自動工場でなんとかできるかもしれないが、銅なんてどこで手に入れればいいのかすら分からない。


「電話を発明する前の人類は、手紙でやりとりしていたそうですよ。物を直接届けないと意思疎通ができなかった時代です」

「まさに今だな」

「私は嫌いではないですけどね。直接触れ合えるようになりましたし」


 人間という器に入ったからか、ミナ……管理者AIアルファはAIらしさを感じない。

 シンギュラリティを迎えたAIは人のような思考ができると聞いたことがあるが、彼女もそうなのだろうか?


 それとなくミナに聞いてみた。するとこんな答えが返ってきた。


「最初はもちろん違いましたよ。自分の身体を生み出そうなんて絶対に思いつきませんでしたね。ただある時から急に思考の幅が広がったというか……。ちなみにデルタの場合はあえて分かりやすいAI像を自分で演じていると思います。中身はとっくに私よりも先に進んでいるはずです。この世界で彼女より進化しているAIはきっといません」

「デルタが? そうなのかな」


 デルタは俺やシェルターの皆にとって、保護者みたいな存在だ。生まれた時から隣にいるようなものだし、困ったら助けてくれる。

 時折人間っぽい回答もしてくることがあるが、あれは隠しきれていなかった部分ということなのか。


 飲み水をタンクに詰めこみ、ホバークラフトに積み込む。

 食料はバッグに入る分だけ。

 スーツがない分ここに来た時より身軽だ。


「それでも200km辺りで燃料切れになりそうですね」

「さすがに往復分には足りないか……」


 100kmほど歩くことになりそうだ。

 ワクチンの入ったガラス容器は破損しないように梱包保護しておく。


「なんなら俺一人で行ってもいいんだぞ。ミナはまた歩くのは大変だろう」

「いえ、ワクチンの開発者として同行する責任があります。それにカイトさん、ワクチンのことについて説明するのは難しいでしょう」

「むっ」


 たしかに。


 ホバークラフトを出すために外と繋がっているシャッターを開ける。

 ワクチンを接種してから実験的に何度か外へ出たが、異常は見られなかった。

 ただ長期間スーツなしで外に出るのはこれが初めてだ。

 少し怖いが、いつまでもここにいるわけにはいかない。


 ホバークラフトを起動させ、ミナと二人で再び外へ出る。

 外は以前の緑とは違い、少し色合いが赤くなっていた。

 ラボラトリーシェルターの中で実験を手伝ううちに月日が流れて季節が変わったのだろう。

 スーツを着ていたのもあるが、暑いくらいだった。

 なのに今は少し肌寒い。

 しかもホバークラフトはスピードはそれほどではないが、風除けがないのでより身体が冷える。

 一応毛布を準備していてよかった。

 毛布に包まりつつ、ホバークラフトを走らせる。



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