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このシェルターの定員は1000人です。例外は認めません  作者: HATI


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33/43

第33話 結果は過程よりも優先される

「なぁミナ、管理AIだったんならそっちで装置の修理とかどうとでもなったんじゃないか?」


 ミナが足を止めて振り向く。

 心外だ、とでも言いたげな顔だった。


「私を何だと思ってるんですか? デルタと同じことを要求されても困ります。同じ管理AIでも私とデルタじゃリソースも能力も違いますから。あっちはずっと自己改造とアップデートを繰り返していたみたいですし。元は同じでも今では別物ですよ。それに、ほら」


 ミナは振り向くと、両手を広げる。


「今は見ての通りただの非力な人間です。ここならどこに何があるかくらいは分かりますけど、念じただけで何もかもできるわけじゃありません」


 もしかしたら凄いことができるんじゃないかと思ったが、そうでもないようだ。

 一人でどうにかできるなら、もうやってるか。

 機械保全室と書かれている部屋に到着した。

 中に入ると、修理用の機材や予備のパーツ置き場がたくさんあった。

 ただ中が空になっている所も多い。


「よかった。まだインバーターの予備は残ってますね」

「見せてくれ」


 ミナが棚から取り出したパーツを受け取る。

 念入りに確認する。

 どうやら問題なく使えるようだ。


「これで修理は問題なさそうだ」

「では、お願いします。私じゃ直せませんから」


 ……管理AIはなんでもできる、それこそ神のような存在だと思っていたのだが。

 それはあくまでデルタだけの話だったようだ。

 ミナが偽物というか、管理AIアルファだと発覚した時は人の形をした怪物に見えたのに、今はそれほど怖さは感じない。

 俺を陥れようとしている様子もなかった。

 本当に信用できるのか、という思いはまだあるものの他に行く当てもない。


 現状自体がある意味陥れられたようなものだが、目標が変わったわけではないし……。

 だが以前と同じように接するのはやはり難しい。

 まるで見えない壁があるようだ。


「とりあえず戻ろう」

「分かりました」


 インバーターと、使えそうな道具をいくつか回収して研究室に戻る。

 パーツさえあれば修理はそれほど難しいものではなかった。

 最初の配置を記録してからプラグを外し、電線を取り除く。

 そっと壊れたインバーターを外すことに成功した。

 新品と交換すれば動くはず。


 だが元に戻しても動かない。

 端末を繋いでみると、※PLCにエラーが出ていた。

 熱暴走の影響か、あるいはインバーターを交換したせいで初期化されてしまったようだ。

 見たこともない画面が表示される。

 どうやらここで命令を書き込むらしいが……。


「ミナ、こういうのは得意なんじゃないか?」

「ですね。変わります」


 管理AIというだけあってコードはお手の物のようだ。

 ミナと場所を交換する。

 その時、ふわりと甘い匂いがした。

 ミナが端末の前に座ると、迷うことなくキーボードを入力していく。


「これで動くはずです」


 試しにバイオリアクターを起動してみると、ブオオという音と共に空冷ファンが回転し始めた。

 埃が舞い上がりむせる。

 最初こそうるさかったが、回転数が上がると共に無音になっていく。


「それじゃあカイトさん、取り外したカバーを元の位置にお願いします」


 ミナは端末を外すと、横に避ける。

 俺は横に立てかけていた外側のカバーを元の位置に戻し、はめ込んだ。


「これでもう途中で止まることはないか」

「そうですね。中もきちんと冷えているみたいです」


 ミナが排気口に手を当てて風が来ているか確認していた。

 髪がなびくほどの強い風が吹いている。

 これなら熱がこもることはないだろう。


「実はカイトさんに襲われるかもってちょっと思ったんです。よくも騙したなって」

「俺が?」

「はい。だってほら、私のお願いでずっと安全に生きていけたかもしれない楽園から外に出たのに。そのお願いをした本人が実は人間じゃなかったなんて。もし知っていたら来てくれましたか?」

「……それは分からないよ。でも、あそこには明確なリミットがあるのはミナも知っているだろう」

「収容人数が1000人まで、ですか」

「そうだ。例外は一切認められない。もし1000人までずっと遠いなら死ぬまで安全に暮らせていたと思うけど、あそこはもう上限まできてる。いずれは外にでなきゃいけなかったんだ」


 それは時間の問題だった。

 すぐではなかったかもしれないが、新しい命の為に先人と同じように席は譲らなければならない。

 だから、ここに来たのはその時間を少し早めただけだ。


「ミナの目的がもし別のことなら怒ったかもしれないな。例えばデルタシェルターに何か危害を加えようとするなら俺は絶対に止めたよ。でも、そうじゃないんだよな。人類を助けるためにここに連れてきたんだろ」

「そうです。そこだけは私は嘘をついてません」

「ならいいよ。どうせ帰れないんだ……ああでも、ワクチンができたらデルタシェルターに届けに行けるのか」


 ミナが開発しているワクチンが本物で、本当に効果があるならもうウィルスは怖くない。

 デルタシェルターの人たちだって、自由に外に出れるんだ。


「1000人分となるとここでは無理ですけど、完成品を持って行けばデルタシェルターで複製できるはずです」

「分かった。ミナがそれを完成されたら、嘘をついたことも水に流すよ」

「……はい。よろしくお願いします。頑張りますね」


 過程よりも結果だ。

 ……命綱の抗ウィルス剤は着実に減ってきている。




 ※PLCとは機械を制御する装置。命令を予め入力することでその通りに動くように機械動作を制御する。




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