第19話 物資集め
人の勧誘は諦めたので、ミナが必要としている資材や機材を集めることにした。
俺もミナについていくならポイントは残しておいても仕方ないな。
ミナが必要としている分はデルタが用意してくれるので、俺が自腹を切る必要はない。
なので長い距離を移動するために必要なそれっぽい物を自分のポイントで買うことにした。
買えるものは普通にコンビニなどの購買で買い集めて、手に入らないものはデルタに申請して許可が出れば取りにいったりした。
なんというか、旅行に行くための準備をしているようでなんだか楽しい。
それはミナも同じようで、まるで遊んでいるかのような感覚だった。
あっという間に時間が過ぎていく。
1週間が過ぎ、デルタが遠心分離機などを用意してくれた次の日。
<管理AIデルタより皆様にお知らせします。本日の当シェルターの人口は999名です。昨日双子の赤ちゃんが生まれたことをお伝えします。人類が一日でも長く存続できるよう、割り当てられた役割を完遂してください。これは皆様のためです>
999人。まさか双子が生まれるとは。めでたいのと同時に、まだあると思っていたリミットが一気に近づいてきた。
デルタに今妊娠している人がいるのか尋ねる。
<近日中に出産を予定している妊婦が1名。他ありません>
「そうか」
一人生まれたらしばらく増える予定はない。
本来なら999人で止まるはずだったのか。
まるでミナを追い出すかのような……。
いや、こんなことを考えてはいけない。
新しく生まれる子に何の罪もないのだから。
ミナだってきっと同じことを思うだろう。
シェルターの人たちも、ミナがもうすぐ出ていくと考えているのか無理に関わってこようとはしてこない。
嫌な目で見られても無視すればいないのと同じだ。
集めるといっても家に物資を置くのは難しいと判断し、デルタに試しに倉庫を借りたいと申請したら許可が下りた。
小さめの倉庫に水や携帯食料を運び込んで保管する。
「意外とお菓子みたいなのが多いんだね?」
「たしかに。……なるほど。エネルギーを効率的に摂取できるようにこういう感じにしてるらしい」
携帯食は定番のカロリーバーだけではなく、チョコレート(っぽいもの)や砂糖菓子などもあった。
クッキーやスティックようかんというのもある。
栄養はあるが味気ないものばっかりだろうと思っていたのでこれは意外だった。
お菓子ってカロリー高いもんな。ある意味向いているのか。
シェルターにこれだけ色々とあるのも知らなかった。
原料の確保も大変だろうに。デルタが色々と頑張ってくれたのだろう。
しかし、物資だけでもすごい量だな。
これに専門機材も必要なんだろう?
そりか何かで牽かないととても運べない。
機材だけなら背負って移動するのもいいだろうが、水や食料が足りないとここに着いた時のミナみたいに倒れてしまう。
ミナは女の子だから重いものは運べないし、困ったな。
デルタに相談することにした。
<シェルター内に物資を運ぶ車両などはありますが、生産に時間がかかり貴重な部品も多くそれらの提供はシェルター内に影響が出るため許可できません>
「だよな……」
<ですが>
ピッ、と地図が表示される。
<当シェルターの近くに放棄された燃料を含めた完全自動工場が存在します。車両が保管されている可能性はそれなりにあるでしょう>
ここから歩いて20kmくらいの場所だ。
ラボラトリーシェルターとは違う道だが、これくらいならそこまで大きなロスにはならないな。
最低限の荷物を持って移動すればいい。
ダメなら引き返して持てるだけ持って移動することになる。
ただ問題は……。
「それって車が残ってたとしても使えるのか? 燃料にも消費期限とかあるだろうし」
<製造されてから年数が近ければ使用可能です。あるいは工場が稼働していれば原料から製造、精製することもできるでしょう>
ミナが地図を覗き込むようにして口を開く。
「デルタはまだ動いている可能性はどれだけあると思う?」
<大型工場でありロボットによる自動メンテナンスも備えた場所なので、人間が放棄した後も稼働可能な状態はかなり長期間維持されたはずです。何らかの成果が手に入る可能性は30%を見込んでおります>
30%
あまり高いとはいえない数字だが、車が手に入るのならば行かないという選択肢はない。
歩きと車では文字通り天と地ほど差がある。
そもそも車ならラボラトリーシェルターに1日で到着できるはずだ。
「そこって私たちが入れるかな?」
<当シェルターの関係者なら入れるはずです>
「うん。なら決まりだね。まずそこに行って、車が手に入らないか確認する。ダメなら歩いて目指そう」
「もし歩いていくんなら荷物はかなり制限されるな……」
<シェルターの外まで私が遠隔で物資を運びます。もし残された物資は回収しますので>
「そうしてくれ」
物資は貴重だ。残しておいても仕方ない。
「そうだ。ミナ」
「はい、なんですか?」
「車が手に入っても入らなくても、ある場所に途中で寄って欲しいんだ。ここなんだけど」
地図を指さす。
ラボラトリーシェルターに移動する道から少し外れている場所だ。
「ここに何かあるんですか?」
「ここでは儀式で外に出た人たちがシェルターを作ってるんだ。だから、なにかしらあるはず。それを一度見ておきたい」
本来なら俺がいずれ行くはずだった場所だ。
今まで多くの人がシェルターから向かったある意味では墓場といえる。
立ち寄るくらいはしておきたい。
前回から月日が経っているので生存者はいないだろうが。
「分かりました。私もそこを見てみたいです」
「できるだけ早く行きたいだろうに悪いな」
「気にしないで下さい。今更焦っても仕方ないですから。私もちょっと滞在を楽しんでますし。もう少しで終わりですけどね」
デルタに希望者はいないのか改めて聞いてみたが、やはり増えない。
俺とミナでラボラトリーシェルターに行くことはほぼ確定した。
必要な物は揃ったので、1000人になる前に出発しようと話し合う。
……車の運転や、現場で必要な技術に関しては合間でデジタルを利用した体験学習で習得した。




