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このシェルターの定員は1000人です。例外は認めません  作者: HATI


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16/43

第16話 他人から見たミナ

 目がしぱしぱする。

 ちょっと寝不足な感じだ。

 ああでもあの時間は楽しかったから後悔はない。


 仕事場に行くまでまだ時間があるので、ゆっくりと朝食をとることにした。

 ミナもあれから少ししてこっちの部屋に移動してきている。

 出会って間もないのに、まるで長いこと一緒にいたような気持ちを覚えた。


「おいしいですね」

「そうだな」


 オムレツとスープにパンという朝食メニューだ。

 まあオムレツといっても本物の卵ではなくそれっぽい加工品で、本物は食べたことがない。

 肉などと同じく天然卵は高級品となっている。

 それでもミナと一緒に食べると美味しいから不思議だな。


 ミナは今日はショートパンツとブラウスを着ていた。

 昨日は儚いという感じだったが、今日は活発な印象な気がする。


 朝食を食べて一休みしてから仕事場へと向かう。

 ミナがついてくる理由は見学だけではないだろう。

 技士を確保するという目的に沿っているはずだ。


 もしかしたら誰かが外に出ることを希望するかもしれない。

 そうなったらどうしようなんて杞憂を覚えながら二人で歩く。


 ちょうど仕事が始まる前に到着した。

 数日来てないだけなのに懐かしさすら感じる。

 カワハタ先輩の姿があったので、挨拶と長く休む詫びを入れに行った。


「先輩、おはようございます」

「お、カイトか。閉じ込められたって聞いたけど元気そうだな」

「あーあれはビックリしましたね。でもその分報酬も貰えたので気にしてませんよ」

「お前図太いもんな。しばらく休暇なんだろ?」


 ははは、と先輩が笑う。

 いつも通りだ。


「それで先輩、紹介したい人がいるんですけど」

「誰だ?」

「ほら、昨日の放送をした子ですよ。地上から来た別シェルターの」

「……このお嬢さんか。悪いけどちょっと二人で話したいから借りるよ」

「な、なんすか」


 強い力で引っ張られた。

 先輩の顔を見ると、いつになく真剣というか……見たことがない表情だった。


 ミナから離れた場所でようやく先輩が口を開く。


「あの話は本当なのか?」

「え、ええ。デルタも否定しませんでしたし、嘘じゃないと思います」

「デルタがそう判断したならそうか。でもそれを口実に何か別の目的で連れ出すつもりかもしれないだろ? そこまではデルタだって分からないはずだ」

「それは……そうかもしれないですけど」


 ミナはそういう子じゃないと言いたかったが、今であったばかりの先輩に言っても効果はないだろう。

 分かるのは先輩はミナを信用してないということだ。

 なぜこんなに疑うのだろう。


「お前、騙されてるんじゃないのか?」

「落ち着いてください。どうしたんですか先輩。そんなに疑り深い人でしたっけ」

「外に出たら死ぬ。そして一度外に出たら戻ってこれない。誰だって知ってる常識だ。儀式で外に送り出されるなら、このシェルターの未来の為だって思えるからいいさ。でも外から来た得体のしれないやつ相手に一緒に来てなんて言われても信じられるわけないだろう」


 ……いつも話していたはずの先輩が、まるで全く見知らぬ相手に思えた。

 なんでそんなことを言うのだろう。ミナのことは何も知らないのに。


「もしかしたら仲間が外にいて、一人で様子を見に来た後にこのシェルターを乗っ取りにきたのかもしれない。ここは人数制限はあるけど地上からしたら楽園みたいな場所だからな」

「そ、そんなことデルタが許しませんよ」

「かもしれないな。でもデルタの目的は人類を長く生かすことだ。抜け道があるのかもしれない。こんなことならお前に彼女がさっさとできるように協力しておけばよかった」


 完全に俺がミナに騙されているという前提で先輩は話している。

 誤解を解くのは難しそうだ。


「先輩。彼女はそんな様子は全くありませんでした。それに何かするなら外気導入室でもうやってますよ。あそこがシェルターの命綱なのは先輩も知ってるでしょう」

「……とにかく、気を付けろよ。口車に乗せられるんじゃないぞ」


 先輩はそれ以上言わず、仕事に向かっていった。

 ミナは会釈をしたが、先輩は無視するようにして歩く。


 ミナの方に近づくと不安そうにしていた。


「私何か起こらせるようなことしたかな?」

「いや……多分地上からきたっていうのが少し怖いんだと思う」

「やっぱりそうなんですか。もしかしたらって思いました」


 人間は恐怖を感じると拒絶すると聞いたことがある。

 そう考えると先輩の態度はまさにそんな感じだった。

 先輩は結婚して奥さんもいる。

 このシェルターの中でできるだけずっと平穏に暮らしたいと言っていた気がするし。それをもしかしたらミナが壊すと考えたのかもしれない。


 ミナとちゃんと話せば考えも変わると思うが、少し時間がかかりそうだった。

 少なくとも先輩がミナに賛同するということはなさそうだ。


「ちょっと歩こうか。簡単に説明するよ」

「はい。よろしくお願いします」


 先輩の態度はミナを傷つけたと思うが、それを表に出さないようにしている姿が健気だ。

 簡単に設備の説明をする。

 密閉されたシェルター内の空気は、人の呼吸だけで汚染されてしまう。

 二酸化炭素が増えるだけで命の危険があるのだ。

 植物も植えられているのだが、循環にはとても間に合わない。

 この空調設備でシェルター内の空気は清潔に保たれている。

 後は湿度の調整もあるか。カビだらけになったら病気が蔓延してしまう。


「大切な仕事なんだね。カイト君は立派な仕事をしてるよ」

「誇りを持てって言われたことがあるよ。何も無かったらずっとこの仕事をしていくつもりだった」


 それから先輩以外の仕事仲間とも遭遇したのだが、余所余所しい態度がほとんどだった。

 仲が良いわけではないのだが、普段は挨拶くらいはするしこんな反応は初めてだった。

 ミナを見る目は、腫れ物という感じだ。

 俺でも分かるくらいなのだから本人はもっとはっきりと感じているだろう。


 途中からはミナとの会話も少なくなり、自然と家に戻ろうという流れになった。


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