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このシェルターの定員は1000人です。例外は認めません  作者: HATI


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第14話 力を貸してください

 放送室はシェルターの中心に立てられたビルの中にある。

 基本的には使われることのない場所だ。

 デルタ以外はシェルター内で放送することがない。


 たまにちょっとしたイベントをやる時に告知などで使われるくらいだろう。

 カードキーを提示して、部屋の中に入る。

 小さな部屋の中に放送するための機材が置かれていた。

 触ったことはないが、マニュアルが置いてあるのでなんとかなるはず。


 ミナは遅れてキョロキョロと部屋の中を見ていた。


「これって勝手に使っていいの?」

「デルタに申請しないと、拡張機スイッチが入らないようになってるみたいだ。いたずらに使われたら困るし、そりゃそうか」


 マニュアルを軽く読むと注意事項などが書いてあった。

 ここは通信室も兼ねているらしい。ただ現在は使う相手がいない。


「というわけでデルタ。放送室を使わせてくれよ」


 デルタを呼び出すと、デルタのホログラムが起動する。


 <許可します。ですがシェルター内の混乱を避けるため、私が声明を出した後に放送してください>

「うん。それでいいよ」

「だそうだ。やってくれ」

 <承知しました>


 ホログラムが消えると共に、全体放送が開始される。


 <管理AIデルタより皆様にお知らせします。昨日、他のシェルターより一名来客がありました。移住ではなく、遠く離れた別のシェルターに技士を連れて行きたいという要望を受け、募集を許可しました。ただいまその来客より放送が行われます。募集を希望する方は管理AIデルタまでお知らせください。来客は当シェルター内の人口が1000人に到達した場合、外部に出る約束をしておりますので、くれぐれも動揺しないようにお願いします。繰り返します――>


 デルタの音声が毎朝と同じように響き渡る。

 当然一人増えたのは皆知っているだろうから気になっていたはずだ。

 赤ちゃんが生まれたら放送で言うし。


 デルタの放送が終わると、放送室のスイッチが自動で入る。

 マイクに話しかければ声が出るはずだ。

 ミナの方へと向く。

 彼女は意を決してマイクに顔を近づけた。


「みなひゃ……デルタシェルターの皆さん、はじめまして。私はラボラトリーシェルターから来たミナといいます」


 開幕に噛んだが、それをなかったことにしてミナは喋りはじめた。


「別のシェルターから来たと聞いて驚かれたかもしれません。地上の状況は昔と同じく、人が生きて行ける環境ではないです。防護服を着て、300kmほど離れたシェルターから私はここに辿り着きました。私自身外に出るのは初めてだったので、まだ生き残っている人たちがいて本当に嬉しい気持ちで一杯です……」


 持っている端末に反応があった。

 シェルター内のコミュニティルームだ。

 フルオープンなのもあってあんまり使われていないのだが、今日ばかりは別だな。

 次々と住人たちのコメントが書き込まれている。

 その多くは疑心暗鬼というか、本当なのか? というものばかりだ。


「ラボラトリーシェルターはこのシェルターとは違い、生存を目的としたものではなく、地上を覆い尽くし私たちを追い出したウィルスの研究及び対策を目的としたシェルターです。残念ながら生存者は私だけになってしまいましたが、長年の研究が実を結んでようやく効果的なワクチンの開発まであと一歩まできました。あと少しなんです。ですが、装置の故障により完成できませんでした。なので私は修理できる機材と人員を求めて外に旅立ったというわけです」


 隣で聞いているだけでも緊張する。

 きっとミナは俺よりもずっと緊張しているはずだ。

 汗か、あるいは涙かが頬を伝って流れている。


「人類が地下から地上へと戻ることは、私だけではなく皆さんにとっても悲願のはずです。どうか、ウィルスに勝つために私に力を貸してくれないでしょうか? よろしくお願いします」


 ミナは最後に誰にも見えないにもかかわらず深々と頭を下げ、放送は終了した。

 コミュニティルームを覗くと書き込みが多すぎて停止してしまっている。

 ……良いか悪いかは分からないが、反響は大きかったはずだ。

 もしかしたら俺が行かなくても人が集まるかもしれない。

 でも、そうだったとしてもミナに力を貸してやりたいと思った。


 もう以前のような、一人でただ生きていくという生活に戻るということがイメージできない。


「ふぅ。こんなに喋ったの初めてかも」

「お疲れ様。ほら」

「あっ、冷たい……。ありがとうございます、カイトさん」


 冷えた水を渡すと、美味しそうにミナは飲んだ。


「たくさん集まるといいな」

「ですね。人が多いほど復旧も早いと思いますし」


 放送を経て体力を使い切ったようで、椅子に倒れるようにミナは腰かけた。

 回復するまではしばらく付き合ってゆっくりしようか。


 <ところで>

「わっ、びっくりした」

 <驚かすつもりはありませんでした。謝罪します>

「別にいいけど……どうしたの? あ、もう誰か応募してくれたとか?」

 <いえ。当シェルターの3Dプリンターを稼働させるので、必要な機材を提示してください>

「う、うん。これをお願いします」


 端末にあらかじめ入力してあったようで、ミナがデルタにそれを見せる。

 読み込んだデルタはまた消えてしまった。


「ここって本当にどこにでも現れるんだね」

「ああ。多分全ての行動をチェックしてるはずだ」

「それって、君たちは平気なの? AIが相手でも監視されてるって結構ストレスなんだけど」

「そうかな? 生まれた時からそうだったし……。むしろ見守ってくれてるとすら思ってるよ」


 これは俺だけではなく皆も同じはずだ。

 危険な事故が起きてもデルタが機械を止めてくれたりするし、恩恵の方が大きい。

 それにどうせデルタに見られるのは慣れていると思える。


「洗脳みたいなものかな。ああでも管理という意味では凄く合理的……」


 ミナが下を向いて何かぶつぶつ言った気がする。

 声が小さくて聞き取れなかった。


「ごめん、小声で聞こえなかった。何か言ったか?」

「ううん。だから無事だったんだなって思ったの」

「だな。今日はもう帰るか? 疲れただろうし」

「うん、そうだね。また一緒にご飯を食べよう」


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