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 最後に悪役令嬢が断罪される痛快なストーリー。前世では万とあった娯楽作品の中の一つ。あぁ、他人事ならどんなに良かったか。自分の身に降りかかって初めてわかる、悪役令嬢のこの大ピンチ。

 モリアーティ家は王国の闇を背負う悪の一家だ。暗殺、毒殺、尋問なんでも御座れ。裏稼業のスペシャリスト。古〜い歴史ある暗殺一家。ゲームの中では、大体の黒幕として登場し、断罪され没落するのが我が家。

 つまり悪の中の悪。エリート中のエリート悪役令嬢が、私なの。

「一方的過ぎたわね。『仲直り大作戦』の戦略を間違えてしまったわ」

 がっちゃん、とティーポットを取り落としたのは私専属の執事だ。ちなみに彼も攻略キャラクターの一人。名前はジェームズ。主人公の攻略ルートに入ると我が家の機密情報を漏洩するという裏切り者だ。

 そして庭師のネロ。〝庭師〟は我が家では暗殺者のこと。彼はこのまま成長すると暗殺者になり、そして私にいじめられた恨みを晴らすため、最後には私を切り刻むのだ。

 彼ルートの断罪スチルは凄惨を極める。齢10歳にてため息も深くなるというものである。

「とっっても悩ましいわ」

「お嬢様、もうあのような下賎なものを構うのはお良し下さい」

「あら、ジェームズ。勝手に口を聞くことを許した覚えはなくってよ」

「………」

 小さくガッツポーズをするジェームズ。…おかしな執事だ。正午のおやつを嗜みながら、次なる作戦に向け、私は脳みそをフル回転させる。はぐはぐ、うむむ。

 この間みたいに執事や他の使用人がわらわらが駆けつけてしまうような、大事にしてしまったことは不味かったわ。もっとこっそり話しかければ良かった。

 ご覧の通り、執事長筆頭にジェームズがあの日以来めっきり機嫌が悪い。印象、良くなかったわよね。ランナーズハイならぬ転生ハイをかましてしまった自覚はある。

「ねぇ、ジェームズ」

「はい、お嬢様」

「靴が脱げてしまったわ。履かせてちょうだい?」

「光栄にございます、お嬢様!」

 とりあえずジェームズの機嫌を取っておいたわ。この男は簡単なのよね、はぁ。


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