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赤毛同盟の面々は混乱していた。突如、ストップした資金ぐり。見直された王室の警備(その頑強さを言ったら!)。次々と彼等に協力していた者たちが〝逃げていく〟
「いったい何が起こっているんだ」
そこに来てこの襲撃である。闇の中で、仲間がまた一人また一人と消えていく。ぎゃあ、とどこからともなく上がる声。嫌が応にも募る恐怖。
「お前らには悪いがお嬢様の為だ」
暗闇の中、刃が一筋凪いだかもしれない。しかしその時、赤毛同盟のボスの意識は既に途絶えていた。
「全員、捕縛しました」
「ご苦労だったわね、ネロ」
下町に降り立った貴族の馬車。馬車の中から差し出された白い手。ネロは一瞬だけ視線を落とし、躊躇なくその手の甲に口づけた。
「……お怪我は」
「ええ、無いわ。あなたがいるもの」
さらりとした言葉。だが、それだけでネロの瞳が僅かに揺れる。
――その一言で十分だった。
「赤毛同盟の資金源、関係者、裏の連絡網。すべて潰しておきました」
「随分と徹底しているのね」
「お嬢様に近づく可能性は、全て排除しますので」
静かな宣言。そこには忠誠というより、ほとんど“執着”に近い熱があった。馬車の中で、彼女はくすりと笑う。
「……本当に、頼もしいわ」
その言葉に、ネロはわずかに顔を上げた。ほんの一瞬、刃のような男の顔が、年相応の青年のそれに戻る。
「――お嬢様のためなら、何でも」
風が吹く。捕縛された者たちの呻き声が遠くに消えていく中、馬車は静かに動き出した。まるで、何もなかったかのように。




