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「場所を変えてもよろしくって?」

 ヒロインちゃんに尋ねると彼女は静かに頷いてくれた。

「ずっと貴方とお話ししたいと思っていた、と言ったら信じてくれるかしら」

 アイリーンは一瞬だけ視線を揺らしてから、静かに答えた。

「……半分ほどは」

「あら」

 思わずくすりと笑みが零れる。

「正直なのね」

「嘘をつく理由がありませんので」

 淡々とした返答。感情は薄い。でも——ちゃんと人を見ている。真っ直ぐに。

 ゲームではわからなかった彼女の理知的な面。

「では、残りの半分は?」

 軽く首を傾げる。

「……理由があるはずだと」

 短く、しかしはっきりと。

(ええ、その通り)

 内心で頷く。

「ウィキンズって名前に聞き覚えあるかしら」

「!」

 一歩、距離を詰める。

「話が早いわね。弟さんなんでしょ」

 彼女は逃げない。ただ、驚愕に瞳が戦慄いている。

「貴方に聞きたいの」

 声を少しだけ落とす。

「——今の自分の立場を、どう思っているのか」

 沈黙。風が揺れる。遠くで、かすかに軋む音。

(……ネロ、ね)

 気にしないふりをして、視線は逸らさない。

「……光栄だと、周囲は言います」

 やがて、アイリーンが口を開く。

「王子付きの侍女。望まれる立場だと」

「“周囲は”、ね」

 やんわりと繰り返す。

「貴方はどうなの?」

 ほんの少しだけ、踏み込む。アイリーンの瞳が、わずかに揺れた。それだけで十分だった。

(やっぱり)

 確信する。

「——選んだわけでは、ありません」

 かすかな声。けれど、確かにそこにあった。

「そう」

 ゆっくりと頷く。

「なら、話は簡単ね」

 私は微笑む。悪役にぴったりな笑顔で。



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