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「さて、貴方の処遇をどうしましょう。このまま、番頭に引き渡して〝処分〟してもいいのだけど」
私は顎に指を当てて首を捻った。なんて悪役らしい仕草かしら。
「よりにもよってこのモリアーティ家の庭に潜入してきた度胸は買いたいところだわ。貴方、目的は何?」
ネロに頼んで拘束した暗殺者を私は見下ろす。彼は地面に這いつくばり、ネロに刃物を向けられている。
「あんた、王族と毎月出かけているだろ。あの腹黒王子様だよ。俺はあいつと話をつけたいんだ」
「腹黒…貴方、随分な度胸ね。仮にもお兄様はこの国の第一王位継承者よ」
ふん、と鼻を鳴らす暗殺者。まぁ、随分とならず者だこと。
「俺の名前はウィキンズ。あんたは誰のことを言ってるかわからないかもしれないが、ーー王子付きの侍女をしているアイリーン姉さんの弟だ」
「!?」
「姉とは小さい頃に引き離されて以来、会えていない。俺は俺から姉を奪った奴等を許すことができない。だから盗賊の〝赤毛同盟〟の作戦に加担したのさ」
「作戦?赤毛同盟?どう言うこと」
「さあね。これから先の情報をあんたに漏らすメリットがないからな」
グッと彼の後頭部を抑えるネロの力が籠る。「ネロ」と私はそれを短く制した。
「ねぇ、ウィキンズ。取引をしましょう。わたくし、とっても貴方に同情したわ。貴方の姉を取り戻したいのでしょう?」
「お貴族様が平民の話を間に受けるって言うのか」
「うーん、普通に考えたら荒唐無稽な話よ。だけどね、わたくし〝赤毛同盟〟って名前に物凄〜く嫌な予感を覚えるのよ」
「へえ、そりゃまたなんで」
「女の勘よ」
ふんと顎を逸らすと、ウィキンズはぽっかりと口を開けたまま固まっていた。まぁ、わからなくもないわね。私だって前世の記憶がなければ、こんな展開受け入れれなかったでしょうから。




