05
異世界において、聖女というのはどういう立場なのだと聞く。
「邪魔したくないか?今までお前の人生を邪魔したんだ。散々な」
甘やかな提案を吹聴した、悪魔のグム。流石、ネアの弱みというか、やりたいことを代弁してくれる。可愛らしささえ、感じた。
「邪魔したい。破滅させたいな?」
ダメな子だな、と思いながらも歪めさせられてばかりは不公平。
「私にやったことをやり返したい。いいと思う?やっちゃダメかなあ?」
首を傾げて問いかけるが相手は生粋の悪魔。クスクス笑った彼は良いと思うぞと共有してくれる。そういうことを同意してくれる彼が好きだ。
抱きしめられたまま、ゆっくりとその時間を過ごす。彼と聖女を失落させ、この世界に拉致してきた王国も共に崩壊させてしまえばいいとなる。
後ろ盾さえなくなれば、聖女も両親も共に生きるのが困難になるだろうし。一石二鳥だよね、と笑い合う。学校の子達もネアをその時バカにしたので助ける理由もないし。
仮にそんな人たちが一部だったとしても、あんな国に囲われては碌なことにならない。人助けだ、と自分を褒めた。
聖女として任命された元妹は、パレードをするとのことで馬車に乗り、街中を走るらしい。それをうちの魔物を使い、騒動を起こすとのこと。
聖女はなんの役目なのかというと、回復系なのでぜひ怪我をする予定の人を全快させて欲しいところだ。例えば、元両親とか。意図的に時間を起こすには、計画を考えなければならない。
グムはニヤッと笑い「そうこなくっちゃな」とノリノリ。一番やりたいのはネアではなく、彼なのではないかな。少しずつ、緻密に話し合い……頑張りましたと言えるほどの話し合い。
「よし、これでいいよね?」
「ああ。最高だ」
褒められて、的外れではないと自信を持てた。
計画実行日。その日は晴天。晴々とした中、聖女は真白いドレスに身を包む。彼女の両親も、後ろの馬車で我らこそ主役と言わんばかりに豪華な服を着ている。
うちの親、成金趣味だったのか。気持ち悪いなと、正直に眉を顰めた。
「どうだ、気分は」
私の相棒が問いかけてくる。その問いは愚問である。なんせ、最高に楽しく、この日のためにこういう間に合ってきたのかもしれないとすら思ってしまうほど。
グムは可愛い顔を澄ませて、くくく、と笑う。楽しくて、ネアの感情とリンクしていた。聖女の馬車が王城を出て直ぐに、自分達はモンスターを解き放った。
コントロールする為に、こちらのモンスターを使っているのだ。ネアは同じように笑う。唇を三日月にして。避けても構わない。
それくらい、待ち遠しかった。モンスターたちも、主人のネアの心に反応して気合いが入っている。やがて、聖女の馬車がUターンのポイントにくる。
元両親に近寄る魔物。初めから馬車に乗っていた。それと同時に他の馬車にも居たモンスターが迫る。
王子の馬車、王女の馬車。王子も王女も犯罪者。誘拐犯だからだ。初めから許すつもりはなかった。ついでに、この世界に呼び出した国の王も同じ時間に襲撃させる。
グムが直接手を出してもいいぞ、と言ってくれた。ネアはそれに首を振った。ただでさえ、異世界で世話になりっぱなしだ。
この世界に連れてきた罪人には、こちらの力で手を出す。とはいえ、この力も彼がくれたものなので純粋なものではないけど。この力は自分が育ててきたチカラ。
「ありがとう。やらせてくれて」
悪魔に礼を言うと、ネアに微笑む男。
「皆進めてるみたい」
下敷きボードを使うと王や聖女をデフォルメしたキャラが映っていて、上にはbattleと書いてある。
「戦闘中って書いてある。人相手は初めてだけど、こんなふうになるんだ」
「俺がデザインした。ゲームって感じするだろ」
敵側は元家族や王国の中枢。ネアたちは勿論、正義側。見方を変えれば立場は入れ替わるのが世の常。
「きゃあああ!」
「ぎゃあ!」
「うわああ」
「魔物!?」
パレードの、主役たちの悲鳴が聞こえる。しかし、外から中は見えにくいので観衆らの声援の音量も相まって、誰も気付かない。




