04
わざと声を出して被害を被った女として振る舞おう。
「酷い。いきなりこんな事するなんて…………暴力で解決するおつもりなのですか?」
意趣返しにはピッタリだ。震えて怯えた顔を見せたら逃げるように去った。部屋に入ると王子の件をすっぽかしたのを思い出したが、まあ良いかと寝転んだ。
視界の端にグムが待ってましたと現れる。夜に現れるわけではないらしい。
「やったじゃねーか」
「どうだろう。私を排除しにくるかも」
あの元親とあの元姉ならやりかねない。何か適当に罪をつけてやってきそうだ。しかし、それを実行してやる成功率は悪い。ここは仮にも、王族が住む王城だ。
人の目が無いように見えて実は、ずっと監視されている。この部屋だってありえる。
「この部屋は監視されているの?」
グムに敬語抜きで話しかけるのは、会った時に初めて会った気がしないから。このステータス板をくれたのはグムだからかもしれない。
そう言えばグムに対して自分は、不自然に好感度が高いような。お礼を言ったり喜びを感じたり。首を傾げて違和感を探ろうとすると、彼が目の前に近付いてきて頬をゆるりと撫でた。
「いいや、監視されてはいるが俺との会話は奴らに聞こえていない」
グムの目。茶色がかった黄色から、赤く光った気がした。
起きると、夕方になっていた。目をむにゃりと開けて周りを見ると、グムは居なくなっていた。それに寂しさを覚える。
トントンとノックの音。
「居ます。扉の前で用件をどうぞ」
前は、勝手に入ってくるマナーを侵す愚行を働かれたから、事前に言う。例のメイドは入ってくることなく、こちらへ呼び掛ける。
「お夕飯はいかがなされますか?」
そろそろ空腹で気絶しても可笑しくないが、何故か感じなかった。寧ろお腹が満たされていた。ステータスによる補正なのかもしれない。元姉と親と顔を見合わせたくないので、食べないと言う。
「では自室で取られるのはいかがでしょう」
「そうします」
本当はいらないのだが怪しまれるわけにもいかない。メイドが居なくなったタイミングでグムに呼びかけてみる。
「良く眠れたか」
「あまり。ねえグム。私、ステータス版で魔物の組み合わせとかいうパズルゲームをしていたんだけど、知ってるよね」
「それならこの世界では違ったシステムに変わってる。見たのか。それなら話しは早い。魔物の組み合わせをしたものを保存していだろ?それを読み込んで召喚すれば魔物が出てくる」
「え、なんか凄い」
「何を出したいんだ?」
「スライム。この城の食べ物を食べたくないからね」
「ああ、分かる。この城の人間はどいつもこいつも腹に一物抱えてるしな」
グムの言っている意味を吟味。彼は人でないからこそ、情報収集が得意なのだろう。それにしても、何故自分はこんなにグムにとっての良い情報を分かったように解釈しているのだろう。
「魔物って、もしかして人に化けられる?」
こんなに己が強いのなら出来るかもと期待を込めて言うと彼は頷く。説明を聞くと、ネアのモンスターの組み合わせ能力は勝手に自立して強くなっていく。という、システムも組み込まれていて、ネアが強くなったように魔物も造られた瞬間から、自分で鍛えたりしていたらしい。
そんな事は知らなかった。亜空間があってそこで自活のトレーニングをしていたらしく、戦えるのをずっと待っている状態なのだという。スライムを早速、出してみる。
色が赤くて艶々しているので、まるで水ようかんであった。美味しそうでわし掴むと、プルルンと揺れてされるがままである。純情な男の子に見えるのは、流石に幻覚だと思いたい。
罪悪感を感じて、ゆっくり降ろす。恥ずかしさなのか、ふるふるとなるスライムボディ。撫で撫でする。嬉しそうにすりすりしてきて、私も顔が綻ぶ。
下敷きがステータス。育てたモンスターのステータスは、私のステータスとしてプラスされると言われて驚く。ということは、めちゃくちゃ強いということ。
期待に胸が膨れる。スライムを胸に抱っこすると、感触を楽しむ。スライムは大人しく、ふにょふにょされている。
「可愛い」
「俺がデザインした。良いだろ。地球の想像上のモンスターをサンプルに上手いこと、デフォルトしてみた」
得意げに胸をはる気配。こっちも、可愛い気がする大人の男の見た目をしているが、もしかして私と大差無いのかもしれない。
悪魔と言っていたが悪魔の年齢的にも若いのかもしれないと、思案。思案した結果、やはり若いんだなと思う。ネアなんかを選ぶところが、それっぽい。
それからさらに月日が経ち、グムから異世界からの聖女であると認識されている女、私の妹が聖女としてお披露目された。と、聞いた。あんな性格の悪い妹を聖女に担ぎ上げる国は、脳がゆだってそう。
ネアは辟易とした顔を浮かべて、グムを見て会話を繋げる。グムはケラケラと笑って、そうだな?と同意するとソッとネアを抱擁した。
異世界に連れてくるほど己を好いてくれている彼が、自分も好きだ。その好きはまだまだ発展途上であるが、色々助けてくれたからこそ、感謝している。
「やだなぁ、あの子が神聖な聖女様なんて。あの子程毒を持つ最悪はいないと思うんだ。思わない?」
ネアが聞いてみると、うんうんと頷かれる。単に自身の同意をしているフリなのかもしれないけど、漸く理解してれる相手ができるのは、精神的にかなり違う。
彼に愛されてネアは自信をもって、色々やるようになった。彼から受け取った能力も、日々磨いている。
毎日可愛いなと言われ、毎日愛していると言われてトロける程、溺愛といえるものを受け取り続けた。こうも毎日言われてしまえば好きになる。
これからも、永遠に共に居たいと思っているのだ。それなのに、耳に不快な話題がじわりと広がる。彼の本性が悪魔だから、ネアの憎悪を感じたくてわざと話題したのだろう。
そういうところ、悪魔っぽい。悪魔だから、受け入れるしかないよね。現実世界とはまた別の価値観なのだろう。




