06
王族を守る騎士もね。騎士達は外側の敵に対して警戒していて、馬車の中はおざなり。
「悲鳴が上がってるのに中の状態をわかってないのは、計画外だね」
「そうだな。計画ではすぐに発覚して、観衆の奴らも逃げ惑う予定だったんだけどなぁ?残念だ。まぁ、誤差だろうけどな。くく、ふふ」
「まだ、笑うのは早いよ」
耐えきれずに、笑い出す彼。ネアも笑いたかったのに我慢したんだよ。
(それにしても、気付かない)
もう少し、こう……まぁ、いいか。人々がまだ気付かない中、やがて馬車は民衆の目から見えなくなりそうな気配がしたので、計画に少し手を加える。
馬車でさらにモンスターを暴れさせて、血塗れの人達を外へ出るように誘導。
その頃には、モンスター達は下敷きに収納されているので、影も形もない。異変に気付かず終わるかもしれないと思ったが、ようやく見にきていた人達に違和感を感じさせる。
ざわわ、と観客達は血に濡れた人達を見て指を指す。
「おい、あれ、見ろよ」
「見えてる。怪我してるのか?」
ネアはにんまりと笑い、計画の続行に笑みが止まらない。
「いくらグムが連れてきてくれたきっかけとはいえ、彼らはれっきとした誘拐犯。罰を受けないと」
彼らはピンとこないかもしれないけど、誘拐は犯罪。ただでさえそう思われるのに、なぜか異世界から無理矢理連れ去っておいてなんにも起こってないのは、不公平。
悪魔族も納得の理由で仕返しを手伝ってくれる。しかも、両親も姉妹の一人もなにも失ってない。親がいないというは現代であれ異世界であれ、問題が起こる可能性もあった。
それなのに、簡単に縁を切る書類を軽い気持ちで記入したことは、やはりこちらのことなどなにも考えてないのだなとわかる。
彼らも、自分と同じ身になったはなったかもしれない。この世界に来た時点で、戸籍もなにもかもがなくなったのだ。失っているようで失ってない。
姉妹は聖女として現代とは比べ物にはならないような立場になったし、親だってサラリーマンや主婦よりも格上っぽい聖女の親の肩書きを得た。
人間達が騒ぎを漸く理解して、慌てるのを高みの見物。ネアはわくテカして、思わず身体も揺れる。彼も隣で嬉しいのかニコッとしていた。
「きゃああああ」
「うわぁー!」
「ぐわ!」
「ぎゃっ」
人々は混乱して、みんながみんなぞろりぞろりと走っていく。走ると他の人もぶつかっていたり。そうしたら、次々怪我人も出る。うーん?
そこまで考えてなかった。まあいいか。この人たちだって、誘拐の世界の片棒を担いでいるし。
「ネア、次はどうする?回復魔法で一躍英雄聖女にでもなってみるか?」
ネアはふふふ、と笑って首を振る。それも楽しそうではあるけどね。グムはふーんと腕を組んで今回の反省点について小さく声が聞こえている。
確かにスマートじゃなかった。怪我をする民間人達は、もう王族や聖女の心配なんてしてない。やはり目先の祝い事よりも、己の今の我が身ってことかなぁ。
騒動が収まるまで丸3日かかったらしい。その間見ていたけど、聖女達はそこそこの怪我をおっていた。
「な、治して、治してえええ」
「ぐう、治しなさいよ!聖女の力を私達に早く使いなさいっ」
「そうだ!早くしろ!」
怒鳴る親子達。
「こんな大怪我治せるわけないでしょっ!?馬鹿じゃないのぉ!?」
自身の元家族は互いに罵り合っていた。
ふふっ、ふふふっ。
ネアが家にいた頃に、日々見ていた仲の良い家族像はどこにもなかった。これこれ、これが見たかったんだ。対する王族達も聖女を呼べ、なおさせろ、と叫び暴れている。
王も王子も同じように、人前に出られる顔でなくなったのだ。王族は、多少などではなく殆ど顔の良さもあり、国民からの支持を得ていたところもある。
それなのに、王家としての顔が晒せなくなったのだ。恐怖に苛まれるのも仕方ないかな?
そうやって生きていきたのだから、今後の生活に不安を抱いているのに違いない。彼らはやはり自業自得としかいえまい。彼らこそ、異世界人から奪うだけ奪ってなにも失ってない筆頭だし。
ネアは満足に笑うと、グムへ声をかけた。二人で帰る。
「また、たまにアイツらで遊びたいな」
「うん」
悪魔と悪魔に気に入られた人間は、異世界の夜空を空中散歩しに飛んだ。
最後までありがとうございました。連載の⭐︎の評価をしていただければ幸いです。




