第五話
翌日。
私は辻堂(が入った辻村サチ)と立花君に呼び出された。
「辻堂、相変わらずキャラメルなんとか、ってやつ好きだなぁ」
「キャラメルフラペチーノね」
「いや、まあ、つ、辻堂が飲んでるのが何かはどうでもいいんだけどさ」
いや、お前もキャラメルフラペチーノ飲んでんじゃん、辻堂。
ってか、席順が可笑しい。
立花君の隣に辻村さんがちょこんと座っている。
「で、もしかしてもう致したんです?」
「「は⁉」」
顔を真っ赤にして狼狽える目の前の初心っぷる。
相変わらずシャイボーイだな、お前ら。
ホントに男子高校生なのか?女子高生の私の方がざっくばらんなのなんなん?
まあ、女子高の方が下品って話は聞くけどさ。
辻堂が入った辻村サチ、乙女でお淑やかすぎてホントに気持ち悪い。
まあ、辻堂が乙女だから仕方ないか。
「なんでそうなる!」
「え?違うん?」
「い、いや、立花、くんと付き合う話には、なったけど」
「じゃあ、キスはした?」
あ、したな、こいつら。
目線合わせないから、絶対したな。
まあ、いいけど。辻堂と立花君の恋が実ったなら。
「ほなら、俺は安心だけどさ~。二人の恋心知ってた人間としてはさ」
「色々、ありがとう、辻堂」
「ん、じゃあ、俺も二時から用あるから行くぞ?」
辻村サチが「用事?」と首を傾けた。私が絶対にしないやつ~。
「カノジョ。昨日のお姉さんと付き合うことになったから」
まあ、女らしさが辻村サチに欠けてたから元カレも浮気したんだったら、立花君との恋はきっと『辻村サチ』にとって幸せなものになるだろう。
だったら、俺は『辻堂宏樹』として、朝海さんを愛したい。
そして俺は、カフェを出てから急ぎ足で朝海さんの待つ商業ビルに向かった。
一階のエントランスホールでスマホを握りしめてキョロキョロしている朝海さんは、白のオフショルシャツに細身のジーンズ姿。正直、めっちゃ可愛い。
「お姉さん、誰か待ってるの~?」
「もう!宏樹君!」
「あはは、お待たせ!」
俺がおちゃらけてナンパのふりをすると、朝海さんは俺の肩を小突いて笑う。
ああ、たぶん、俺はこういう幸せな恋愛がしたかったのかな。
「呼び出しなんだった?」
「恋愛が成就しました!キスもしたよ♡って報告」
「今時の子は手が早いな~」
はは、と朝海さんは笑ってから、俺を心配そうな顔で見る。
「大丈夫?」
「うん?何が?」
「だって、宏樹君、失恋じゃん」
「失恋は、してないと思うけどなぁ。そんなショック受けてないし。なんならおめ!って感じ」
そして、俺は朝海さんのお暇してる右手を自身の左手に繋ぐ。
朝海さんは、少し驚いた顔をしたけど、すぐに握り返してくれた。
朝海さんの手が小さいのか、俺の手が大きいのか。
なんだか、やっぱり守らなきゃって思ってしまう。
「じゃあ、私、宏樹君独占しちゃお」
「うん、してして!」
俺は、腕に纏わりついてきた朝海さんの頭を優しく撫でた。
可愛い彼女が出来て、俺は幸せ者だなぁ。
うん、辻堂宏樹の人生を歩くのも悪くない。
どうせ入れ替わりは意図的なものとかではないし、原因分かんないから元に戻るかどうかも分かんないもんな。
日野君と辻堂も美味い事行きそうだしよかった、よかった。
俺は、『辻堂宏樹』として、歩んでいく決意をした。っていうか、この人生は俺にとって幸せな日々になると信じて疑わなかった。
だけど、気がかりは俺の身体の中に入った辻堂の事だった。
辻堂は、『辻村サチ』になって、どう思っているのだろうか。
きっと、今は幸せかもしれないけど、もし、『違和感』に気付いた立花君が『彼』を拒絶したら。
辻堂は大丈夫って言ってたけど、たぶん、ショックを受ける。
そんな彼を、『私』は支えられるのだろうか。
「宏樹君?」
「ん?ああ、ごめん」
駄目だな。
なんか辻堂のことばっか、考えてるよ。
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