第二話
朝、私は一瞬此処が、今いる場所が何処か分からなかった。
私の部屋は如何にも女子高生、って感じでピンク基調だし、メイク道具とかももちろんある。
しかし、此処は、明らかに男の子の部屋。
「まさか」
起き上がり、一言を吐き出す。
その「まさか」だ。この声は、『辻堂宏樹』の声だ。
「お、お、おおおおおお、おっしゃ~~~~~~~~~!」
私は早朝から大声を上げ、隣の部屋から壁ドンを受けた。
辻堂は一軒家だったと思うから、壁ドンの主は恐らく彼の妹だろう。
あ、私の中の人大丈夫かな?
私は辻堂のスマホを手に取り、ラインを開く。
ちょうど、ピロン!とラインが入った。
差出人は『辻村サチ』。躊躇いもなく個チャを開くと、「まって、なんか股から血……」。ああ、『辻村サチ』は昨日から生理だ。
私はラインで辻堂に通話を繋げ、自分が昨日から生理であることを告げた。
『……なんで生理の時に』
「いや、生理毎月だからな。女舐めんなよ」
『いろんな場所が痛い……』
「わはは!それで?女になれた感想は?」
辻堂は死にそうな声で『死にそう……』と呟いた。
男子って痛みに強いようで弱いからな~。
私のまだ軽めな生理ごときでめそめそしてたら激重生理痛の女にフルボッコにされるぞ。
「男とは安直な生き物ですなぁ」
『……馬鹿にしてる?』
「私と闘って相手さんを惚れさせたら生理になんてならなかったのに」
『……』
ホント、男ってバカ。
まあ、私も恋は良いんかぁ!って茶化したけど。
でも、入れ替わっちゃったものは仕方ないしな。
「ナプキンの付け方わかる?」
『……分からない』
「教えてあげるから今後のために覚えな~」
私は辻堂に伝わるように丁寧にナプキンの付け方を教えて、リビングの救急箱に痛み止めあるから飲んどいて。と伝える。
『辻村は、俺になってどうなん」
「え?楽しくなりそうだな~ってワクワクしてる!」
『マジか』
初めての生理でグロッキーな辻堂と、これからの事でワクワクしてる私。
とりあえず、お互いの情報交換(家庭状況とか)は済んでいるので、今日は辻堂を生理に慣れさせるためにゆっくりしてもらうことにして、明日駅ナカのカフェで会うことにした。
『お前、早速街に繰り出す気では』
「なはは!よくわかったな!」
『いや、別にいいけど、無茶だけはするなよ』
「ほいほい!あ、私の事好きな子って何クン?デートセッティングしたるよ」
辻堂は私の声で『ぐっ、』と詰まってから絞り出すように、『響。立花響』と告白した。ほう、立花君か。何か私が話しかけると逃げちゃうから嫌われてると思ってたわ。
照れ隠しか。思春期か。可愛いな。
「ん、おけ~。まあ、立花君とひと夏のアバンチュールできるといいね!ぐふふ」
『お前はおっさんか』
私は私の中に入って生理の苦痛を味わっている最中の辻堂にひと笑いして、またなんかあったらお互い連絡しようと言って、通話を切った。
さて、出かける支度をしよう。
「あ、」
私は辻堂の顎を撫でた。
まずは髭を何とかしなくては。
辻堂ってあんま濃くはないけどちゃんと生えてんだもんなぁ~。
さて、トイレも行きたい。アレも見てやるか、仕方ない、仕方ない。
私はこうして自分が男になっていることを徐々に実感していった。
その後、私は支度をして、辻堂の妹に朝の嫌味を言われつつ家を出て、とりあえず隣町のゲーセンに来た。
私は、クレーンゲームが得意だ。
そこで、クレーンゲームで商品を取ろうとしてる女の子の手助けをして仲良くなろう作戦をする!
あ!あの二人組可愛い!
「大丈夫?取れそう?」
「え、あ!イケメン!」
ほう、やはり私の見立ては間違いではなかったのだ!
女の子が二人とも俺にメロメロだ!
「それが~、全然取れなくて~」
「やってあげようか?」
「え~、お兄さん、なんか企んでる~?」
企んでる?っていう割にはきゃっきゃと嬉しそうで全然嫌そうじゃない二人に、これ取れたらこの近くにあるパンケーキのお店行かないか、と提案した。
「お兄さんの奢り?」
「うん、好きなの食べていいよ」
「え~、じゃあ、これ駄目でもついて行っちゃう~!」
辻堂のポテンシャル舐めてたわ。まあ、あとは女心を分かってるからその辺だろうな。
てか、辻堂がバイトしててよかった。可愛いお姉さんたちに奢れるのは最高だわ。これほど幸せなもんはないよね。
私も辻堂のとことは違うチェーン店だけどファミレスで働いてるし、やっぱ、気が合うな。
可愛いお姉さん(専門学生らしい。年上のお姉さんだ!)二人に応援されて、二回でややでかめのぬいぐるみを取った私は、そのぬいぐるみを受け取った方とは違う方のお姉さんに、実はこれも欲しい!と別のクレーンゲームのぬいぐるみを強請られ、華麗にゲットし、はしゃぐお姉さんにプレゼントした!楽し~!気持ちい~!
そして、俺にメロメロなお姉さんを引き連れてパンケーキ屋さんに入ると、お姉さん達からおすそ分けをあーんしてもらった!幸せすぎる……。イケメンって得だなぁ。
「ねぇねぇ、ライン教えてよ~」
「あ、私も!」
はぁ~、人生ちょろ~。イケメンの人生程楽しいもんはないな。
私は、辻堂のスマホに二人の女性の連絡先を追加した。
女だったときはクッソ腹立たしかったけど、男、特にイケメンがするナンパは気持ちええ~。
やはり、私の見立ては間違いではなかったのだ!(二回目)
そして、笑顔でお姉さんたちと別れると、次はどこにしようかな~、と思案していた。
その時、私は滅多に声を聴いたことがないが、辻堂の隣にいつもいる奴の声が辻堂を呼んだ。
「立花?」
「お~、なんか、夏休みでお前変わった?」
「え⁉」
流石いつも辻堂の隣でいる奴、立花君。
この身体の中にいるのが辻堂ではないことに、気づいた?
「いや、俺だって女の子と仲良くすることくらいあるよ」
「あ~、辻村さんとも仲いいしなぁ」
そこでまさかの自分の名前が出てきてびっくら仰天の辻村サチさんだ。
こいつ、マジで私の事好きなんか。
「辻村の事好きなん?」
「お!お、お前、前に言ったじゃん!なんでいま、か、確認するん!」
お~、めっちゃ慌ててら~。
これは辻堂ワンチャン行けるんじゃね?
あとは私のアシスト次第だな!
「なぁなぁ、立花」
「な、なんだよ」
「プール行かん?」
夏休み、と言えば、青い空、回るプール、屋台、水着の姉ちゃん!
そして、ひと夏のアバンチュール!
俺もはしゃぐゾン!
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