第三話
「な!ば!も~~~~~……」
翌日、駅ナカのカフェで立花君をプールに誘った、と辻堂に告げると、要約すると「なんで!ばか!も~~~~~……」って感じの反応を頂いた。
辻堂は、っていうか、身体は私のだけど、辻堂の入った辻村サチはズルズルと机に突っ伏してしまった。
「そんなに好きなん」
「うるさい」
「あ~、あ~、協力してやんね~かんな!」
「う~~~~~~~……」
これじゃ女の子をいじめる悪い男の辻堂が出来上がってしまう。
目の前の女をいじめるのは辞めよう。
俺はスマートなイケメンの辻堂だからな!
「お前ってさ、元の身体の時から立花君にそんな乙女対応なん?」
「なわけないじゃん。必死に取り繕ってたわ。肩組まれたりとかした時、内心悲鳴上げてたわ」
「いや、内心乙女すぎワロタ」
私の中の人、辻堂は「はぁ……」と恋煩いの溜息を吐いて、目の前の男こと私を睨んだ。
「お前は楽しそうだな」
「昨日二人組の可愛いお姉さんの連絡先ゲットしたわ」
「俺もしたことないやつ~」
ま、その姉ちゃんたちから好きな男がいるんだけど、相談に乗って~、とライン来て、いやいや、じゃあ、他の男にライン聞くなよと思った私である。
ってか、辻堂、ポテンシャルは高いのにナンパしたことないってことは、あれだ。
「まあ、辻堂くんは男の子がお好きでしょ?」
「黙れ、マジふざけんな」
「はは!まあ、今の辻堂宏樹は中身女だから話しやすいんでしょ」
身体が男でも乙女の心を持つオネエが女子的インフルエンサーになるように、ようは如何に女心を分かってるかなんだよな。まぁ、女子に興味ない辻堂くんにはいらない知識だな。
「いや、今失礼な事考えただろ」
「いや、てかさ、もっとお互いに演じよーぜ。バレたらヤバいのお前じゃん?」
「ぐぬう」
私は別にいいんだけどさ、バレてマジ社会的に死んじゃうの辻堂なんだよな。
今は多様性って言うけど、そんなんあってないようなもんだし。
同性愛は結局は偏見の目にさらされる。
辻堂は、バレたら居場所を、友達を無くす。社会からの信用も無くす。
だからこそ、辻堂は私になりたかったのだ。
まあ、多少私は男みたいな性格だから大丈夫だけど気をつけな。と辻堂に言って、私も肝に銘じた。
結局、辻村サチは生理三日目(あ、一番きつい日に呼び出しちゃった)だし、少なくともあと四日は生理だから余裕をもって一週間後に私と私の身体イン辻堂と立花君でプールに行くことになった。
立花君に「辻村と二人で行く?」ってラインを送ったら「いや、お前も来て!」と言われてしまった。青春だなぁ。
私は恋愛とか分かんないけど、なんで辻堂は『恋人』になりたいんだろう?
こんな信頼されてるなら、『親友』でもいいような気はするんだが……。
今辻堂の身体にいる『私』と立花君はどうもならんよ。だって、彼は『私』を避けるんだし、まともに話したこともないんだから。
まあ、そんな彼らの恋はさておき。
私はプールで女の子漁りでもするかねぇ。何人と連絡先交換できるかな!
夏休みが終わるのはあと二週間後。一体、どうなることやら。
そして、プールに行く日。
それぞれの家から近場のプールの門の前に一番に着いたのは日野君で、次いで私が到着した。
とはいえ、実は私は辻村の家に一回朝に帰っている。
実の母から、「あら、サチの彼氏?」と言われたが、「いや、学友です」と答えといた。
前、入れ替わってから帰ったときは母も父も不在だったんだよな。
ちなみに私は一人っ子である。
「ごめん、来てもらって」
「いや、辻堂女の子初心者だしね」
問題はメイクだった。
女の子初心者の辻堂には映えるメイクなど出来なくて。
しかし、何度か教えたから少し上達している。
こいつ、さては努力家だな?
「前より上達してんじゃん」
「辻村に恥かかせられないし」
この間はちょっとキツイ言い方したけど、辻堂も色々考えててくれたんだなぁ。
辻村さん、ちょっと感動しました。
「よ~し、辻村さんに任せとき~い!」
「いや、お母さんに聞こえるからそういうのやめて」
「ごめん……」
テンション上がると大声出しちゃう癖やめなきゃな。
辻村サチの悪い癖だ。
ってか、イン辻堂の方がお淑やかになるのなんでなん?
「まあ、辻堂くん乙女だからなぁ」
「え、何の話?」
「今の私がお淑やかすぎるって話よ」
「なんで?」
「イン辻堂だから?」
二人して「「?」」ってなったけど、まあ、仕方ない。
お化粧も髪形も可愛くしてあげると、イン辻堂の辻村サチは頬を赤らめた。
「あ、ありがと」
「うん、これで日野君もイチコロ♡」
「ば、馬鹿じゃないの」
ちなみに、高一で初体験は済ませてあるからその辺大丈夫よ♡と伝えると、辻堂は「ば、ば、ば、ば、ば!」と『ば』しか言えなくなった。おもしろ~。
「なに?そういうことしたいんじゃないの?」
「いや、でも、辻村の身体だし」
「私が大丈夫だって言ってんじゃん。だから、私も好きにさせてもらうよ」
その意味に気付いた辻堂は、顔を真っ赤にした。
こいつ、さては。
でも、観念したのか、「……好きにすれば」と声を絞り出して言ってきた。
高校生だもんね。そういう盛りだもんな。
「うっほほ~い!待ってろアバンチュール!」
あ、しまった。
また大声出しちゃった。
辻堂は私の顔を思い切り顰めた。
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