↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
7/13

第六話 二人のEナンバー

ブレインフリーズ

第六話 二人のEナンバー

 「……兄弟?」

 白瀬涼は思わず声を漏らした。

 演習場の中央。

 二人の少年は鏡写しのように並んで立っていた。

 同じ白いパーカー。

 同じ背丈。

 同じ赤いアイスキャンディー。

 違うのは髪の分け目だけだった。

「E-07が……二人?」

 職員たちにも動揺が走る。

「違います。」

 神崎が低く言った。

「あちらは記録にありません。」

「名前は?」

 神崎が問いかける。

 新しく現れた少年は首を傾げた。

「名前?」

「ないよ。」

「番号ならある。」

 少年はアイスをくるりと回した。

「E-08。」

 その瞬間、職員たちがざわめく。

「E-08だと?」

「存在しないはずだ!」

「記録では欠番だ!」

 E-07は笑った。

「みんな数字ばっかり気にする。」

「僕たちは別に番号なんてどうでもいい。」

「ね?」

 E-08は黙ってうなずいた。

 そしてアイスを一口かじる。

 パキン。

 その音と同時に、演習場の天井から無数の水滴が落ち始めた。

「雨?」

 いや違う。

 天井に結露が発生している。

 それが一斉に落ちてきたのだ。

 室温が急激に下がる。

 白い息が見え始める。

「凍結能力か!」

 職員が叫ぶ。

「違います!」

 女性職員が否定する。

「温度低下じゃない!」

 落ちてきた水滴が途中で止まる。

 空中に静止した。

 まるで時間が止まったように。

「時間停止……?」

 涼がつぶやく。

 しかし次の瞬間。

 水滴は一斉に床へ落ちた。

 何事もなかったかのように。

 E-08は無表情のままアイスの棒を捨てた。

「終わり。」

 神崎は険しい顔をしていた。

「能力が違う……。」

「E-07は見えない力。」

「E-08は時間……?」

「いや。」

 女性職員が首を振る。

「解析できません。」

 その時だった。

 涼の視線とE-07の視線がぶつかる。

 E-07は少しだけ笑った。

「まだ思い出さない?」

「何を!」

「君は忘れてるだけ。」

 E-08も初めて口を開く。

「十三番。」

 その一言だけだった。

 突然、涼の頭に激しい痛みが走る。

「ぐっ……!」

「かき氷を食べてないのに!」

 世界が揺れる。

 演習場が消える。

 目の前に知らない景色が広がった。

 雪だった。

 一面の銀世界。

 白衣を着た大人たち。

 泣いている子供。

 十三人。

 円になって立っている。

 その中心にいる少年が振り返る。

「涼。」

 知らない顔なのに。

 なぜか懐かしい。

「迎えに来るから。」

 その声だけが耳に残る。

「涼!」

 神崎に肩を揺さぶられ、意識が戻る。

 演習場は元のままだ。

 しかしE-07とE-08の姿は消えていた。

「逃げられた……。」

 職員たちが周囲を捜索している。

 涼は荒い息をついた。

「今……昔の記憶みたいなのが……。」

「記憶?」

 神崎の表情が凍りつく。

「それを誰にも話さないでください。」

「え?」

「もし本当に記憶なら……。」

 神崎は言葉を切った。

 そして、小さくつぶやく。

「二十年前の実験は、まだ終わっていなかったのか……。」

 その日の夜。

 施設『零度』の地下最深部。

 誰もいないはずの監視室で、一台の古いブラウン管モニターが突然映り始めた。

 砂嵐の向こうに、一人の老人が映る。

 老人はゆっくりとカメラを見つめ、微笑んだ。

「ようやく目覚め始めたか。」

 その映像は、誰にも見られることなく静かに流れ続けていた。

第七話 雪原の記憶へ続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。