↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
3/13

第二話 氷を追う者たち

ブレインフリーズ

第二話 氷を追う者たち

 玄関のチャイムが二度鳴る。

 白瀬涼はゆっくりとドアを開けた。

 黒いスーツの男女は深々と一礼した。

「おはようございます。突然で申し訳ありません。」

 年齢は三十代くらいだろうか。

 男は穏やかな笑みを浮かべている。

 女性は無表情で、タブレットを抱えていた。

「白瀬涼さんですね。」

「……はい。」

「少しだけ、お時間をいただけますか。」

 男は胸の銀色のバッジを見せた。

 雪の結晶の中央に、青い氷柱が刻まれている。

「私たちは低温現象対策室の者です。」

「……聞いたことありません。」

「一般には公開されていませんので。」

 その一言で、涼は黙った。

 近所の喫茶店。

 三人は窓際の席に座った。

 男はコーヒー。

 女性はアイスコーヒー。

 涼はかき氷を注文しようとして、

「……やっぱりメロンで。」

 男が笑う。

「好きなんですか?」

「暑いので。」

 本当は違う。

 試したいことがあった。

 運ばれてきたかき氷を、一気に口へ運ぶ。

「――っ!」

 頭が締め付けられる。

 来た。

 男は平然としていた。

「始まりましたね。」

「え?」

「今、能力が使えますよね。」

 涼は固まった。

 どうして知っている。

「試してみてください。」

 半信半疑でスプーンを見る。

 浮け。

 スプーンは静かに宙へ浮いた。

 店員が悲鳴を上げる。

 周囲の客も立ち上がった。

 しかし男は驚かない。

「確認終了です。」

 女性がタブレットへ入力する。

「能力発現、確認。」

 キーンが消える。

 スプーンは皿へ落ちた。

「あなたは能力者です。」

 男はあっさり言った。

「ですが安心してください。」

「安心?」

「世界には百二十七人確認されています。」

「百二十七……」

 思っていたより多い。

「皆さん条件付きです。」

「条件?」

「満月の日だけ。」

「くしゃみをした直後だけ。」

「歌っている間だけ。」

「雨に濡れている間だけ。」

「能力には必ず制限があります。」

 涼は思わず聞いた。

「じゃあ俺は。」

「頭がキーンとしている間だけ。」

 男はうなずいた。

「珍しいですが、前例がありません。」

「組織に入れってことですか?」

「違います。」

「観察対象です。」

「……え?」

「危険性が低ければ普通に生活してください。」

「高ければ?」

 二人は黙った。

 その沈黙だけで十分だった。

 店を出た瞬間。

 女性が急に立ち止まる。

「来ます。」

「何が?」

 空気が震えた。

 向かいのビルの窓ガラスが一斉に割れる。

 人々が悲鳴を上げた。

 そして、

 一人の少年が道路の真ん中に立っていた。

 中学生くらい。

 白いパーカー。

 赤いアイスキャンディーをくわえている。

 バキッ。

 道路の街灯が根元から折れた。

「逃げろ!」

 男が叫ぶ。

 アイスキャンディーを食べ終えた少年は、不満そうに舌打ちした。

「もう終わりか。」

 その瞬間。

 街灯が涼へ倒れてくる。

「危ない!」

 反射的に屋台へ走る。

「かき氷一つ!」

 店主は事情も分からず渡した。

 一気に口へ流し込む。

「――っ!!」

 強烈な痛み。

 世界が白く染まる。

 倒れてきた街灯が、

 空中で止まった。

 そのまま、

 まるで見えない手で持ち上げられるように元の位置へ戻っていく。

 少年は初めて笑った。

「へぇ。」

「お前も氷系か。」

 キーンが消える。

 街灯は再び傾き始めた。

 男と女性が同時に駆け出す。

「撤収!」

 少年は路地へ消えた。

 街にはパトカーのサイレンが響き始める。

 男は息を切らしながら涼を見た。

「予定を変更します。」

「あなたを保護します。」

 涼は理解できなかった。

 昨日までは、ごく普通の高校生だった。

 それなのに、今日はもう「能力者」と呼ばれ、謎の組織に保護されようとしている。

 そして、世界には自分以外にも能力者がいる。

 その事実だけが、じわじわと現実味を帯び始めていた。

**第三話 保護施設『零度』**へ続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。