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挫折ばかりだった僕が立て直した人生  作者: 桜影 はる(さくらかげ はる)
8/30

どうしてもいけない学校

しばらくすると、ママが慌てて自宅に戻ってきた。

学校から僕が来ていないと連絡があったようで、大慌てで玄関の扉を開け「りょうちゃん!!」と叫んだママは、リビングでうずくまっている僕を見つけ、安心した表情を浮かべた後僕の頬をぶった。


「どれだけ心配したと思うのよ。ああ よかった」


ママは、僕を抱きしめそう言っていた。


その日の夜、パパが帰ってきてから今日の出来事についての話し合いが始まった。

「学校でなんかあったのか?」と尋ねるパパに、どうしても友達とうまくいっていないことを話す気にはなれなかった。はっきりとは言えないけれども、何とも言えない情けない気持ちと申し訳ない気持ちと両親を心配させたくないという思いが、真実を話すことをためらわせたんだと思う。


パパは理由をしつこく聞いたが、どうしても答えない僕とのやり取りと仕事での疲れが合わさったのか、「今日はこれくらいにしよう」と席を立った。ママもそれ以上は聞いてこなかったけど、僕が寝るまでそばに寄り添ってくれた。


次の日の朝、目覚めた僕は準備を済ませ、気が乗らないまま学校に向かって歩き出した。パパもママも心配そうな顔をしていたが、それを隠そうと明るく見送ってくれた。


15分くらい歩くと学校に着く。正門で6年生の生徒会のメンバーが大きな声で「おはようございます!!」とあいさつをしている。僕もあいさつをされたが、うつむいて通過するのがやっとだった。


下駄箱の前に立ち上履きを手に取った瞬間、又足が震えだした。


やっぱり無理だ・・・・


僕は、上履きを自分の下駄箱に戻し、さっき通った校門を出て自宅に向かった。

幸い、両親も仕事に行ったようで家には誰もいない。子供部屋に戻り、“何かしないと”との思いから教科書を開いた。でも、1人でする勉強はつまらない。1時間もするとベッドの上に寝そべり天井を見上げた。


どうしよう。僕はまだ小学生。これからの人生はとても長い。このまま、ベッドの上に寝転んで過していいはずがない。でも、学校に行かなければという気持ちがあるけど体が動かないんだ。


しばらく、考え込んだ僕は深い眠りに落ちていた。


2時間くらいたっただろうか。目を覚ますと、ママがベッドのわきで縫物をしていた。体操着の名札を縫い付けてくれているのだ。

「ごめん」とだけ言った僕の頭を、ママはなでてくれた。


その日の晩、リビングに僕は呼ばれた。

そして学校に行けない理由を尋ねてくるパパに、素直に現状を話すことが出来ない僕は、昨日と同じ状況が1時間ほど続いた。

パパは“今日こそは”との思いから、学校に行かないとどんな不利益があるかを事細かく話し出したが、僕の心には何も響かなかった。

なぜなら、パパの話は頭では分かっている事ばかりだったからだ。


業を煮やしたパパは、「明日はちゃんと学校に行くんだぞ」とだけ言い残しリビングにあるパソコンを立ち上げ、いつものように仕事の残りを始めた。


しばらく、仕事をしているパパの背中を眺めていると、カタカタとキーボードをたたく音が途中で途切れ数秒間の沈黙が流れた。


きっと僕の事を考えてくれているのだろう・・・

昼間の仕事にも影響しているだろうな。


「パパごめん。僕のために・・・」


思わず出た言葉にママは、「例え学校に行けなくても、その気持ちを持っているりょうちゃんはいずれ立派な大人になれるよ。あせらず頑張ろう!!」と言ってくれた。


ママは、僕をどんなことがあっても必ず守るという決心が浮かばれる、とても頼もしい母の目をしていた。


「おやすみ 」と声をかけ子供部屋に戻ろうとする僕に「一緒に寝てあげようか?」と声をかけてくれたママだったが、本当は甘えたい気持ちをぐっとおさえ、男は強くあるべきだとの思いからその申し出を断った。


「変なところで意地を張るのね。その強い気持ちが違う方向に向いてほしいなぁ」と一言つぶやいたママは笑って、僕を寝室まで送ってくれた。僕は、ママの気持ちが痛いほど良く分かったが、それでも次の日から学校に行くことはできなかった。


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