大きな成長
僕はすぐに自分の部屋に戻りミーサーを呼ぶと、あたりはザワザワしだし、いつものように温かい風が吹き出した。
「ミーサー、来てくれたんだね。今からおじいちゃんに報告したいことがあるんだ。会わせてくれない?」
「いいよ」と答えたミーサーは、そっとおでこを僕の方へ向けそれに触れた僕は、またしても時空のはざまに吸い寄せられしばらくすると、おじいちゃんの前に立っていた。
「おお、りょうちゃんか。よく来たなぁ」
この前会ったときより、少しやつれたように見えるおじいちゃんだったが、久しぶりに面会に訪れた僕とミーサーをうれしそうに歓迎してくれた。
「おじいちゃん、すごいことがあったんだよ!!」
僕は息もつく暇もなく、野球のクラブチームが全国優勝をしたことを一生懸命に話した。何度もおじいちゃんと目が合ったが、とてもやさしい目をして僕の話を聞いてくれている。僕が一通り話し終わるのを見計らって、おじいちゃんは穏やかな表情でこう話し始めた。
「いいかい、りょうちゃん。すべての出来事には必ずその出来事が起こった原因があるんじゃ。良いことや悪いことが起こった時には、その原因をしっかりと追求する癖をつける事が大切なんじゃ。今回の出来事は、りょうちゃんがマー君の“遊ぼう”っていう誘いを受けた事から始まったじゃろ。もし、あの時マー君の誘いを受けなかったらどうじゃった?」
「う~ん、マー君とも親しくなれなかったし、クラブチームのお兄ちゃん達とも出会うことがなかったし、さらに言えば、全国優勝の場面に立ち会うこともできなかったよ」
「そうじゃろ。君が体験した感動は、人を通してりょうちゃんの元に訪れて来た事は分かるかい? 長い人生の中でその感動をたくさん味わいたいと思うのなら、人からの誘いは積極的に受けてみるんじゃ。そうする事で、感動を味わうというチャンスを掴む可能性が一気に広がるんじゃ」
「僕は知らず知らずのうちにチャンスを掴んでいたって事だね。でも、チャンスって気づきにくい所に隠れているね」
おじいちゃんはベッドから立ち上がり、冷蔵庫からオレンジジュースを出し僕に手渡してくれた。
そして冷たいオレンジジュースを一気に飲み干す僕に、「すごいぞ。よく気付いたね」と褒めてくれた。
そして、しばらく沈黙が続いたあと、おじいちゃんは「今の話以外に勉強になった事はなかったかい?」と僕に問いかけた。
しばらく考え込む僕に、ミーサーが「キャッチボールも得意になったじゃないか」と言った。
そのミーサーの言葉に、僕の脳は即座に反応した。
「そういう事か!! 僕は砂場でマー君と仲良くなった時、堅い砂団子を作ることが出来なかったけど、年上のマー君は僕より経験が豊富で、土を混ぜるとカチカチの砂団子を作れることを教えてくれたんだ。クラブチームで球拾いをしている時も、ボールを触ったこともなかった僕に、みんながキャッチボールのやり方を教えてくれて、とても速い球が投げられるようになったし、監督さんのようなパパやママ以外の大人の人と話をしたことがなかった僕に、お兄ちゃん達が挨拶の仕方や敬語の使い方を教えてくれた」
おじいちゃんは、「うん、うん」とうなずきながら僕の話を聞いてくれている。
「おじいちゃんの言いたいことが分かったよ!! 経験豊富な人と同じ空間にいることで、知らず知らずのうちに僕の能力が経験豊富な人に近づいて行くってことでしょ!!」
大切な事に気が付いたことがうれしくて、僕は目を輝かせながらおじいちゃんの問いに答えた。
「その通りじゃ。君の成長のきっかけを作ってくれたのは出会いじゃ。もし砂場でマー君の誘いを受けなかったら、今でも固い泥団子も作れないし、キャッチボールもできないし、敬語も使えない普通の小学1年生のままじゃろ。自分より経験豊富な人と積極的に交わることが成長のスピードを上げるこつという事をしっかりと覚えておくんじゃ」
「・・・・なんだか眠くなってきた。すまぬが今日はここまでじゃ」
そう言って、おじいちゃんは大きなあくびをした後、すやすやと寝入ってしまった。
「ここに来れて本当によかったよ」
僕はとても穏やかに眠るおじいちゃんにお礼を言い、ミーサーと一緒に現実の世界に戻った。
「ミーサー、ありがとう」
「急にどうしたの?」
「ミーサーに会えたことも、おじいちゃんに会えたことも僕を大きく成長させてくれているんだもんね。これからもよろしく」
僕の言葉がうれしかったのか照れくさそうに笑ったミーサーは、いつものように“ふわっ”と消えて行った。
夕食を済ませ就寝時間が近づいてきた僕は、パパとママにに「おやすみ」とあいさつをした後、子供部屋のベッドの上に寝転んだ。
そして、おじいちゃんの言葉を1つ1つ丁寧に思い返し、しっかりと胸に刻みつつ深い眠りに落ちた。




