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挫折ばかりだった僕が立て直した人生  作者: 桜影 はる(さくらかげ はる)
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初めての友達とすごした放課後

「ただいま!!」


「あれ? 今日は帰りが遅かったね。どこかに行ってたの?」


家に帰るとママが、濡れた冷たいタオルで僕の顔を拭いてくれた。


「今日ね、マー君っていう年上のお友達ができたんだ!!マー君にはお兄ちゃんがいてピッチャーで野球がすごくうまいんだ。ものすごく速い球を投げることができて、本当にかっこいいんだ!!僕もいずれはピッチャーをしてみたいな!!」


「りょうちゃんが、ピッチャーになって三振をいっぱいとれるようになったら、ママお弁当を作って応援に行くね。楽しみだなぁ」


ママは、ニコニコしながら答えてくれたが、よく見ると目にはうっすらと涙が浮かんでいた。きっと、小学校に入学してからいつも一人で遊んでいる僕の事を心配してくれていたのだろう。


もしかしたら僕何かが変わってきてるかもしれないよ!!

だから心配しないでね!!


心の中でしか言うことはできなかったけど、こんなに愛され大切に育てられていることに初めて気づくことができたことは、本当に良かったと思う。


「今更分かったの?どんくさいね」


「あっ ミーサー、のぞき見しないでよ!!」


「でも、りょうちゃん。おじいちゃんが言ってた誘いを受けるって事、よく決断したね。とっても勇気ある行動に感激したよ!! 」


「へ~ん!! 僕男の子だからね。一度決めたら頑張るんだ」


「いつまで続くかな、そのやる気。まぁ、すぐ泣きごと言いそうな気がするけど」


「もう、馬鹿にしないでよ。明日も、球拾いに誘われたんだ。あー 楽しみ!!」


ミーサーは笑いながら、“ふわっ”とどこかに行ってしまった。


次の日から僕は、毎日マー君と一緒にグランドに向かった。

大きなかごを片手に、転がっていくボールを全力で追いかけ汗をボタボタとこぼしながら一生懸命球拾いに励む僕を、先輩たちは本当にかわいがってくれた。


そんな生活が続いたある日、僕はグランドの隅でマー君に誘われてキャッチボールをした。マー君は僕の投げたヒョロヒョロの玉を、大きな声で「ナイスボール!!」と言いながら受けてくれた。


「りょうちゃん、もっと腕を振ってみな!!」


クラブチームの指導の合間に監督が僕に声をかけてくれた。


えっ?

監督が指導してくれた?

なんかうれしい!!


「僕もマー君のお兄ちゃんのような速い球を投げられるようになりますか?」


そう監督に問いかけると、「りょうちゃんは筋がいいから大丈夫」と言ってくれた。


僕はおだてられると、すぐその気になってしまう性分だ。その日から球拾いの合間を見て投球練習に励んでいると、いつしか監督を含めた多くの先輩が僕にボールの投げ方を教えてくれるようになり、数日が経った頃には1年生とは思えないような速さの球が投げられるようになっていた。


「すごいぞ、りょうちゃん。お前は本当に物覚えが早いな!!」


マー君のお兄ちゃんは、いつもそう言って僕を褒めてくれた。


球拾いを始めて半年がたった10月の初旬、6年生の最後の公式戦が行われた。

順調にチームは勝ち上がり、ついには全国大会の決勝まで上り詰めてしまった。

僕は出せる限りの大声でメンバーを応援した。


3-2で迎えた9回の裏ツーアウト満塁。

あと一人を抑えると僕たちのチームは優勝だ。


カウントは2ストライク3ボール。


マー君のお兄ちゃんは、渾身の一球をバッターに向けて投げ込んだ。


ズバーン!!


キャッチャーミッドから聞こえる乾いた音とともに、マー君のお兄ちゃんに向かって走り出すメンバー。肩をたたきあい、抱き合い全国制覇という偉業をそこにいた誰もが喜んだ。


「おーい、早く試合終了の挨拶を済ませろ!!」


ベンチから監督の指示が聞こえた。

慌てて整列し、相手チームとの健闘を称えあった。


挨拶が終わった後、グラウンドでは優勝の興奮が冷めやらぬ選手たちが大騒ぎをしている。


「初めてだ、こんな気持ちになるなんて・・・」


マー君は、目をキラキラと輝かせつぶやいた。


「僕たちもみんなの所に行ってもいいですか?」


やさしくうなずく監督に、「ありがとうございます」と頭を下げマー君と向かったグランドで、僕とマー君の胴上げが始まった。


僕は、学校のテストで、100点をとったことがある。そんな時に、パパやママはいつもご褒美にお小遣いをくれるのだが、その時決まって僕は“うれしい”って思うのだけど、今の喜びはこんなものではない。


家に帰るとママは一番に「今日の試合どうだった?」と聞いてくれた。

僕は、初戦から今日の全国制覇までのダイジェストを丁寧にママに話したつもりだったが、1年生の説明力では上手くまとまらず、自分でも何を言っているのか分からなくなったけど、そんなことも気にせずママはやさしい眼差しでいつまでも僕の話を聞いてくれた。


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