生徒会長に立候補
その日は早々にマー君と分かれ子供部屋の机に座って今後の作戦を立てていたが、完全に行き止まった僕はミーサーを呼んでみた。
すると、いつものように温かい風と共に、おちゃらけた表情でミーサーが現れた。
「もう、りょうちゃんは困ったときしか僕を呼ばないんだから。実は僕は忙しいんだぞ。で、用事なに??」
そう言いながら現れたミーサーは、暇だったようでワクワクとした表情をしていた。
「ミーサーごめんね。おじいちゃんの所に連れて行ってくれない?」
「分かったよ。本当は神様の仕事がたくさん溜まっていて、こんなことをしている場合じゃないんだからね!!」
僕はいつものようにミーサーが突き出したおでこに手をあて、時空の壁を越えておじいちゃんの所へ向かった。
しばらくして病室の前に着いた僕は「こんにちは!!」と元気な声であいさつをしながら扉を開くと、たくさんの細い管につながれベッドに横たわっているおじいちゃんが目に映った。
会うたびに弱っている・・・・
僕は思わず「大丈夫?おじいちゃん!!」と声をかけた。
すると、「おおりょうちゃんか。よく来てくれたのう。君と会えると生きる気力がわいてくるんじゃ。今日も何か相談があるのかい?」といつもと変わらないやさしい笑顔で聞いてくれた。
僕は手短に野球のクラブチームの練習場所がなくて解散しそうなことと、人とのかかわりを大切に1人1人丁寧にチラシを渡しながら賛同してくれる人を集めていることを話した。
おじいちゃんは、力を振り絞ってベッドから起き上がった。
そして、静かに話し始めた。
「りょうちゃんのやっている、1人ずつ丁寧に向き合ってお話をするという方法はとってもいいね。でも、わしなら違う方法を使うよ」
「違う方法??」
「そうじゃ。今のりょうちゃんのやり方では1日中頑張ったって賛成してくれる人が良くて1人か2人現れる程度じゃろ。そんなことをしていても、永久に物事が進まないんじゃないかい?」
「そうなんだ。僕それで困っていておじいちゃんに相談に来たんだ。おじいちゃんならどうするの?」
「わしか。わしなら言葉の力を使って大勢の人を巻き込む方法を使うよ!!」
「言葉の力を使って大勢の人を巻き込む方法?」
「そうじゃのう。例えば人気者や信頼の厚い人が一言発言すると物事が動きだした瞬間を見たことはないかい?」
「あるよ。マー君が遊ぼうって言うとたくさんの人が集まる現象と一緒だね!!」
「そうじゃ。人気者や信頼の厚い人の言葉には力があって、人によってその力が違うんじゃ。いつも人の喜ぶことを率先してやる人や困っている人を助ける人などは、大きな信頼を持っていてその人が言葉を発すると重みが増すんじゃよ」
「なるほど。じゃあその逆の事をする人たちは言葉の力が弱いってことだね」
「そういうことじゃ。りょうちゃんも大好きな人に用事を頼まれたらやってあげようって思うじゃろうけど、苦手な人に同じ用事を頼まれたら断りたくなるじゃろ」
「うん。苦手な人のお手伝いは少し抵抗があるかも」
「分かったかい。りょうちゃんにとって大好きな人は言葉の力が重くて苦手な人は言葉の力が弱いってことじゃ!!」
「なるほど、言葉の力がちがうっていう意味が良く分かったよ!!」
おじいちゃんは、少し苦しくなったのかしばらく話をするのをやめ呼吸を整えはじめた。
そして、落ち着いた所を見計らい、もう一度ゆっくりと話始めた。
「りょうちゃん。今君がすることは難しいことにチャレンジしたり困っている人を率先して助けたり人の喜ぶことを積極的にやってみてもっと もっと人気者となって言葉の力を増す事じゃ。そうする事できっと動かなかった問題が解決すると思うよ」
「おじいちゃんよく分かったよ!!やってみるね!!」
おじいちゃんはやさしい笑顔で微笑みながら、こう付け加えてくれた。
「でも間違えないでいてほしいのじゃが、1人1人に自分の思いを伝えるという今のりょうちゃんの行動も、とても大切なことじゃ。わしが教えた方法と今りょうちゃんがやっている方法をうまく使い分けながら物事は進めて行くんじゃぞ!!」
「うん!!ありがとう!!」
おじいちゃんは、震える手に力を込めゆっくりと僕の方に向けて「がんばれよ!!」とポーズを取った。
僕もおじいちゃんと同じポーズをとり病室を後にした。
時空の壁を抜け、現実の世界に戻った僕は子供部屋の椅子にすわった。
「ミーサー、おじいちゃんと会うといつも勉強になるね!!」
「おじいちゃんの人生経験は豊富だからね。僕も神々の学会で、おじいちゃんの話を自分の話のように発表する時があるんだ。内緒だよ。」
「神様なのに、人の話を盗むの?」
そう言って、僕はわざと真剣な目をしてミーサーを見つめると、ミーサーは、部屋の隅の小さな穴の中に消えて行ってしまった。
神様も穴があったら入りたい気持ちになるんだと思うと、なぜか笑えてきた。
次の日から、僕は今まで以上に人に喜ばれる事をした。
困っている下級生に声をかけたり、忘れ物をした同級生には、使ってない自分の文房具をプレゼントした。
誰よりも大きな声で挨拶をし、先生の雑用も手伝った。
チャレンジできることはすべてチャレンジしたし、ごみ拾いも教室の掃除も進んでやった。
そんな僕を見て新しい仲間が次第に増え、気が付くと僕を慕って集まってくれる人が驚くほど増えた。
ある日、僕を悩ます大きなチャンスがやってきた。
その日の午後、僕は職員室に呼ばれた。
「失礼します!!」
「おお!! りょうちゃんか!!」
「先生、お呼びでしょうか?」
「りょうちゃん、次の生徒会長に立候補してみないか?君の頑張りはいつも先生は感心しているんだ。君が“やってみる”と言うなら先生は生徒会長に推薦したいんだがどうだい?」
「えっ 先生待って下さい。僕なんかにそんな大役ができるとは思えないんです」
「そうか。でもまだ選挙まで時間がある。今日1日考えてみて明日にもう一度返事を聞かせてくれないか?」
「分かりました。考えてみます!!」
家についた僕は、急いでマー君にメールで相談をすると、数分後に
「りょうちゃんならできるよ。やってみな!!」とシンプルな返信が帰って来た。
もう少し真剣に相談に乗ってよ~!!
そう思った僕はすぐにマー君に電話をかけると一瞬でつながった。
「もしもしマー君。僕が生徒会長に立候補することを本当にしっかりと考えてくれた?」
「ハハハ、考えることもないだろ!!りょうちゃんが悩んでいる理由が分からないよ。そんなんやればいいに決まっているよ!!りょうちゃんは僕から見ても適任者さ!!」
そう言ってマー君は電話を切った。
マー君・・・・・。
僕はなんだか悩んでいることすら馬鹿らしくなったのとおじいちゃんからの“人気者になるためにはチャレンジしろ“との教えが頭に浮かび、次の日早速先生に生徒会長に立候補したいと告げると、先生は喜んでくれた。




