第4話 人は考えで動くもの
僕が4年生になると、マー君は6年生になった。
全校生徒から慕われ、今では生徒会長として活躍している。
ホットケーキパーティを開いてくれた美月ちゃんは、マー君のお姉さん役の副会長だ。
マー君も美月ちゃんも僕を大切にしてくれ、その2人と親友である僕も必然的に知名度が上がり、学校全体で僕を知らない人はいないようになっていた。
そうなってくると、遊びの予定やクラスの行事の決定権は僕が持つようになり、いつしか物事は僕を中心に動くようになっていた。
そんなある日、2年生の時に最初に友達になってくれた恩人でもある太一君が、浩二君とちょっとしたトラブルになってしまった。
僕はその仲裁を引き受けようと浩二君を呼び出したが、浩二君は全く仲直りをしようという気はないようで、ついには僕と話をしないと言い出した。
頭にきた僕は浩二君とは絶対に遊ばないと決め、わざとのけ者になるように仕向けた。
浩二君と親友だった宏君は何度も浩二君と仲直りをしてほしいと僕に頼んできたが、それなら宏君も僕から離れ浩二君と一緒に過ごしたらいいと突き放した。
こんな状態が1か月くらい続くとクラス全体の雰囲気も悪くなる。
相変わらず僕の周りには人が集まったが、浩二君は完全に孤立し、ついには学校に来なくなってしまった。
そういえば、僕が2年生の時の学校に行けなくなる原因は浩二君だったな・・・・・
そんなことを思い出すと、浩二君を許す気持ちにもなれず何の手段も取らずに放置した。
ある日、沙奈ちゃんと博美ちゃんが僕に話しかけてきた。
沙奈ちゃんと博美ちゃんは、美月ちゃんのホットケーキパーティに一緒に参加したメンバーだ。
「りょうちゃん、そろそろ浩二君と仲直りをしたらどう?私達、りょうちゃんの事を嫌いになりそうで怖いよ・・・」
「でも浩二君から僕を避けてきたんだよ。そんなことを言うなら沙奈ちゃんと博美ちゃんも、もう僕には話しかけてこないでよ」
「分かったよ、りょうちゃん。じゃあね」
沙奈ちゃんと博美ちゃんは顔を見合わせ呆れた表情をしたのち、僕に愛想をつかしてどこかに行ってしまった。
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なんでこうなったんだろう・・・・
原因は僕にあることは分かっていたが、“悪いのは僕以外の人だ”と思い込むことで自分を守った。
次の日、僕はマー君に誘われた。
放課後その待ち合わせ場所に行くと、マー君と美月ちゃんと浩二君のお兄さんの雄二君の3人が待っていた。
マー君はいつもの人懐っこい笑顔は全くない怖い顔をしながら、僕に
「りょうちゃん、最近いいうわさを聞かないよ」と声をかけた。
美月ちゃんも、雄二君も同じ表情で様子を伺っている。
「浩二君のことだね。でもさぁ、あいつから僕を避けてきたんだよ。だったら向こうから誤ってくるのが筋ってもんじゃないのかな?」
僕は3人から責められ、ばつの悪い思いをしながら自分の体裁を保つため一生懸命に言い訳をした。
「りょうちゃんも2年生の時に学校に行けなかったことがあったでしょ。その時の気持ち思い出してみなよ。きっと浩二君も同じ思いをしているよ」
「でもね、美月ちゃん・・・・」
返す言葉もなくその場にも居づらくなった僕は肩を落として、とぼとぼと自宅に帰った。
「あら、珍しく今日は早く帰って来たわね。おやつあるから食べなさい」
とやさしく声をかけてくれるママを見てホッとした僕は、テーブルの上に用意されたおやつを子供部屋に運び、ため息をつきながらそれを食べた。
う~ん。どうしようか・・・
ここであやまると、なんだか負けたような気になるな・・・
原因は浩二君にあるから、向こうがあやまってくれれば僕の体裁が保てるのに・・・
・・・・・・・
・・・・・・・
は~ぁ、 仲直りしたいなぁ
そう思った瞬間、僕の頭の中に “やってみて考える”とのおじいちゃんの教えがぱっと浮かんだ。
そして、僕は上着も着ずに全速力で走り出した。
ピンポ~ン
「りょうちゃん!! 来てくれたんだね!!」
雄二君が玄関の扉を開けてくれた。
「浩二君とお話がしたいんだ」
「うん。どうぞ入って」
雄二君は、浩二君の部屋に僕を案内してくれた。
久しぶりに見る浩二君の顔は、少しやつれていてとても暗い表情だった。
こんなになるまで浩二君を追い込んでしまったんだ・・・・・
僕は自分がしでかしたことの重大さをしっかりと理解し、罪悪感から大粒の涙があふれ出した。
「浩二君、ごめんね、ごめんね」
僕は嗚咽が止まらず言葉にもならないような声で、浩二君が許してくれるまで何度もあやまった。
「本当は太一君をからかった僕が悪かったんだ。なのに意地を張ってしまって、りょうちゃんにまで嫌な態度を取ってごめん」
「こちらこそ・・・ 本当にごめん」
雄二君は黙って、僕たち2人の会話を聞いていた。
「浩二君、明日学校に来れる? 僕、朝迎えに来るから一緒に学校に行こう!!」
浩二君からは明確な返事はなかったが、そんなことは気にせず次の日の朝に、僕は約束通り浩二君を迎えに行った。
玄関のチャイムを鳴らすと、僕の到着を待っていたのか浩二君はランドセルをしょって恥ずかしそうに家から出てきた。
「行こう!!」
僕は、なんだかうれしくなり浩二君の手を引っ張って学校に向かって走り出した。
「りょうちゃん、ありがとう!!」
浩二君の笑顔を見るのは久しぶりだった。
校門では生徒会のメンバーであるマー君と美月ちゃんが挨拶運動をしている。
僕と浩二君の姿を見つけた、マー君と美月ちゃんは一瞬びっくりした表情をしたが、その後いつものように明るい声であいさつをしてくれた。
下駄箱の所に行くと、浩二君の動きは止まった。
そういえば2年生の時、僕もここでつまづいたよな・・・・
そんなことを思い出すと、僕は浩二君の気持ちが痛いほど良く分かった。
「浩二君、ここを乗り切ればなんとかなるよ!!」
そう言って、浩二君の下駄箱から上履きを取り足元に履きやすいように並べて置くと、浩二君は“ありがとう”と言って靴を履き替えたが、まだ表情は曇っていた。
僕は浩二君の背中を押し教室に向かった。
教室はいつものように、先に登校した同級生が雑談に花を咲かせている。
僕はその空気に便乗して、「おはよう!!」と大声で叫びながら教室に入っていった。
・・・・・・
浩二君。
その瞬間、にぎやかだった教室が一瞬にして重い空気に包まれた。
僕にはその理由がよく分かった。
ここにいる誰もが浩二君が学校に来れなくなったのは自分たちが悪いということに気が付いていたからだ。
「俺帰るよ・・・」
そう言って浩二君が教室を出ようとした瞬間、「浩二君、おはよう!!」という声が聞こえた。
沙奈ちゃんだ。
「こっち、こっち」と博美ちゃんは、浩二君の机の所で手を振って待っている。
浩二君は自分の机に荷物を置いた後、太一君に近づいた。
すると太一君が「ごめん」と小さな声でつぶやいた。
浩二君は、「こちらこそごめんね。もう一度友達としてやりなおしてくれないか?」と右手を差し出した。
太一君は、その手をしっかりと握り「うん!!」と大きな声でうなずいた。
「これで仲直りだね!!」
宏君と翔太君は、うれしそうに浩二君と肩を組んだ。
浩二君の目には、うっすらと涙がにじんでいた。




