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挫折ばかりだった僕が立て直した人生  作者: 桜影 はる(さくらかげ はる)
16/30

勉強は一流会社に就職するためにするの?

面談が終わり家に帰った僕は、ママに連れられ子供部屋に向かった。

そして、机の奥に隠してあったテストをすべてママに手渡した。


「ここまでひどいと思わなかったわ。今まで見せてくれたテストはいい点が取れたやつだけを見せてくれたのね。なんで、もっと危機感を持って勉強をしないの?」


ママは血の気が引きつつも、冷静さを装いながら必死で怒りを抑え僕の答えを待った。


「それはね、去年僕が学校に行けなくなった時に “あなたが学校に行ってくれるだけで満足だ。勉強なんてどうでもいい”って言ってくれたママの言葉に従ったんだよ・・・・」


「そんな昔のことは忘れなさい、時間は流れているのよ」


えっ??


何とも言えない気持ちになる僕だったが、とりあえずこの場をやり切るため話をそらそうと試みた。


「ママ。えっと、あのね・・・。さっきSNSを見たんだけど、ママが友達の中で話題になっているよ。とってもきれいな人だって。だからそんなに怒ったら、評価が下がるよ・・・」


「話をそらさないで。そんなことを言ったって許しませんからね」


「でも宏君もママの事を、」


「りょう!! 真剣にママの話を聞きなさい!!こんな点数を取ってママは悲しいわ。パパが帰ってきたらしっかりと怒ってもらうからね」


・・・・・・

・・・・・・


「ごめんなさい、ママ」


僕は、心の底から反省し謝った。


「ところでりょうちゃん」


「なに?」


「宏君はなんて言ってたの?」


「なんの事?」


「宏君は、ママの事をなんて言ってたって聞いてるのよ」


「あっ えーと、品があっておしとやかですごい美人さんだって言ってた」


「他に何か言ってなかったの?」


「同級生のみんなは、すべてママのファンで女の子はママがあこがれの女性だって言ってた。知的で清楚で凛としているママのようになりたいってさ!!」


僕は自分を守るために全力で話を盛った。


「夕食までしっかりと勉強をしときなさい♪」


そう言って、子供部屋を後にするママの空気は和らいでいた。


とりあえず助かった・・・


ホッとした僕は、勉強に取り掛かろうと机に向かった。


えーっと、今日の宿題はなんだったかな?

おっ、この前マー君から借りた漫画がたくさん机から出てきた。

これを読んでから宿題をしよう。


そう思って、漫画本を読み始め2時間くらいが経った頃、ママが階段を忍び足で上がってきた。ママは、そっと子供部屋のドアを開け、僕の方をずっと見ている。それに気づかない僕は、漫画本から目を離すことなく5分ほど読み続けると、そこで初めて熱い視線を感じた。


「もしかして、ミーサー!!」


振り返った僕の目には、冷たい氷のような表情でこちらを見つめているママが写った。


わっ やばい!!


あわてて、漫画本を机の中に隠し平然を装って「どうしたの?」と言った僕にママは呆れていた。


「とりあえずパパも帰ってきたしご飯を食べよう」


そう言って、ママは食卓へ連れて行ってくれた。


今日の食事は、勉強の話から大きく話題をそらそう!!


そう思った僕は、友達がたくさんできている事や休み時間にあった楽しい出来事を一生懸命話したが、すぐにママがパパを味方につけ、強引に勉強の話に引き戻した。


30分ほど続いただろうか。あまりにも長い説教で意識がもうろうとしている僕に「しっかりしなさい!!あなたの事でしょ!! 」とママは声を荒げた。でも僕には勉強をする理由が良く分からない。人はなぜ、子供の頃に学校に通い毎日勉強に励むのか、そしてその勉強が今後の人生の中でどう役に立つのか見当がつかないのだ。


「りょう、言いたいことがあったら言ってみな」


パパは、いつもと違う暗い空気が張り詰めた食卓で、晩酌に出されたビールを飲みながら重い口を開いた。


「うん。分かった。僕、勉強ってなんのためにするのかその理由が全く分からないんだ。実際の所なぜ勉強するの?」


「勉強はね、将来立派な大人になって一流企業に就職してたくさんのお給料をもらい幸せな生活を送るためにするんだよ」


そうママは言った。


「じゃあママ、この前テレビで見たんだけど、なぜ学歴が高くないのに成功している人や、高学歴なのに生活に困っている人がいるの?」


「確率的には低いでしょ。あなたはママの言う通り、しっかりと勉強すればいいのよ」


明確な答えがないまま話を終えようとしたママは、少し自信のなさそうに答えた。


チャンス!!


「将来成功するかどうかに勉強は関係ないんじゃないの?」


ここぞとばかりにそう言った僕は、瞬時にママに睨みつけられた。


そして、その様子を見ていたパパは「でも、勉強は大切だぞ」とだけ言い残し部屋を出てしまった。


子供部屋に戻った僕は、ベッドに寝転がり勉強について考えてみた。


確かに、勉強をすると成績が上がって先生に褒められる。

進学にも有利でいい大学に入って、高度な知識を得られる。

でも、記憶量にはもともと遺伝的なものもあるし、ここで頑張っても大きな成果が出るとは決まっていないわけだから、無理に頑張る必要もないんじゃないかな。


そう思うと、勉強をする気にもなれず寝入ってしまった。


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