表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/13

#7 理性とその他諸々崩壊しそうです

 

「こんちは〜5期生の、魔界の暗黒魔女、闇喰 リリス!今宵もお前らを1人また1人と体を蝕んでい・く・ぞ……♡」


「ねぇーちょっと痛いかも。ていうかそういうボイスやめてよw」


 リリスが挨拶からぶっ飛ばしたせいで幻夢は大爆笑。ツボって挨拶できなくなっていた。コメント欄も何故かドカウケしていた。


「ほら早く、幻夢もしなさいよ」


「ど……どうも……6期生、草に隠れ静夜に輝く幻想郷、月草 幻夢です!幻想郷で君たちを待っているy……ブフッ」


 幻夢は耐えられなくなって吹き出した。


「最高。幻夢にふさわしすぎる挨拶だね!次からずっとこれでいこう」


「嫌〜!!」


 確かにこれが正規の挨拶になればかなり面白い。だけどイジられ待ったなしだろうな。しかしこれは大物Vtuberのじゃれあい。聞いているだけで極楽……だけどさ、俺、いつになったら挨拶できるんだ!?


 この日、この前の晃司の配信で急にアポを取られた歌枠コラボを結局3人でやることになったのだ。挨拶の段階から行き詰まってるんですが。大丈夫かこれ。


 このくだりが2分くらい続いたが、やっと幻夢が振ってくれた。

「はい、そして今日はゲスト呼んでまーす、我らの神、秋風 嵐紫さんです!!」


「どうも、こんちゃ、この2人の神である……はぁああぁ!?」


「イェーイ、神〜」


 リリスが乗ってくる。


 神じゃねぇし。だいたいなんで神なんだよおい。……いや、今は考えるのはやめよう。あとで聞こうかな。


 仕切り直し!!


「どうも、こんちゃ、個人勢の秋風 嵐紫と申しまーす。なんか俺は神らしいです。マジでなんでですか……?」


「神だからだよ?それ以上でもそれ以下でもない」


「やめてください……普通に恥ずかしいんですけど……あと俺アイドルVtuberグループの人とコラボするなんて初めてだし喋るのも初めてなんですから」


 でも、こんな大物Vtuberにこんな扱いされるのは満更でもない。普通の人じゃこんなことだけでなく、喋ることすらできないんだから、不満ばっかり言ったらダメだ。


「……とりあえず企画行きましょうよ」


 晃司は強制的に終わらせた。




「♫本物の恋をしませんか〜?」


 俺は大物Vtuber2人に挟まれながら1世代昔の名曲を歌い上げた。2人もご満悦そうだった。


「最高〜!この歌声がたまらんのよ、圧倒的な迫力のボイス、何もかも完璧」


 リリスも一生褒めちぎってくる。なんだこれ。


 ずっと2人は自分の事を褒めちぎっているが、念のため言っておく。事前に聞いてみると、彼女らは2人とも自分を推しているらしい。さらに今回のコラボは、2人で事務所に土下座して頼みに行ったんだとか。


『2人の女の人が自分の事を推す。か。どこかで聞いたことある話だな……』


 晃司は頭の片隅に何か思い当たるような節があったが、まさかと思いとりあえず心の中で愛想笑いして流した。

 この日の視聴者は1万人を超えていた。到底自分では辿り着けない数字なんだろうな。さすが大物Vtuberって感じ。そんな同接数1万人を超えるチャンネルで俺は何をしてるんだ!?2人のアイドルVtuberにチヤホヤされながら歌枠コラボ……こんなの一種のハーレムだろ……!


 その後も晃司はチヤホヤされ続け、訳がわからなくなり、この後誰が何を歌ったのか、自分が何を歌ったのか全く覚えていなかった。



 次の日。

 俺は、大学の食堂の端の方で同じ軽音バンドサークルの仲間が喋っている横で項垂れていた。


「晃司、なに寝てんの」


「寝不足か〜?」

 同じサークル仲間である青海おうみ 千冬ちふゆと高岡たかおか 大翔ひろとが声をかけてきた。


「寝不足もそうだけどさ、昨日がすごくしんどかったんだよ」


「あぁ〜配信ね?」


 晃司は深く頷く。昨日配信の疲れがどっぷり溜まっていて、寝るに寝られなかったのだ。ちなみに晃司がVtuberだという事は軽音サークルのメンバーにしか言ったことがない。


「しかし羨ましいなぁ、あの2人とコラボとか。全人類の夢だよ」


「千冬、流石にそれはない」


「あるから言ってるんじゃん。普通考えれないことだし。あと本当に歌声凄かったよ」


「俺も見てたから昨日。友達がVtuberとコラボするってなったらそりゃ見に行くでしょ〜」


 なんか照れる。俺は少し頬を赤らめていた。


「あ、そうだ。晃司って彼女できてたよね。今度その子と一緒に遊びたいんだけど」


「「「「え」」」」


 今まで別の話をして盛り上がっていた他の3人と大翔が一斉に顔をこちらに向けてきた。なんでここだけ一致団結なんだよ?


「ちょっ……お前。秘密にしろって言っただろ……!宿題丸写しさせてもらうんだったら代わりにこの事は言うなって言っただろ」


「あっ、ごめ〜ん⭐︎忘れてた⭐︎」


 忘れてた⭐︎じゃねぇよこのヤロー……


「お前マジで言ってんの!?おめでとうだけど許せねぇ……」


「裏切り者め……!だけどマジでおめでとう」


 みんなが俺をガン見している。その目は嫉妬心に満ちているような気がした。あ〜あ……めんどくせぇことになった……4分の3歯軋りしてるんだけど。


「あはは……まあそんな感じ」


 全部どうでもよくなってきた。だけどやっぱり許せなくて、俺は千冬の腕を引っ張って行った。


「……あのなぁ、あいつら根に持つから言うなって言ったよな?」


 千冬は本当に口がすぐ滑る。うっかりじゃなくて普通に言っているのがまた少し腹が立つ。


「ごめんって。お詫びに今度一緒に遊びに行ってあげるから」


「はぁ?……別にいいけど」


 俺は正直だった。千冬とは遊びに行きたいと思ってはいたのだ。




 というわけで。


「やった〜!楽しみ〜」


 結局俺はあの日言っていた、俺の彼女に会いたいという願いを受け入れてしまった。マジでごめん胡夏さん…… 胡夏にも連絡済み。向こうは『是非』とか言っていた。けど内心嫌なんだろうな。


「こーうじっ」


 そう言うと千冬は晃司の腕に巻きついてくる。


「ちょ!?ここ公共の場……!」


 周りの目が1人また1人とこっちに向いているような気がした。恥ずかしくなった俺はダッシュして駅に駆け込んだ。


「待ってよ〜」


 千冬……前まであんまり俺のこと相手にしてなかったのに……なんで急にこんな絡みついてくるようになったんだ……?


 それもそのはず。驚くのも無理はない。ほんの1週間前までは挨拶と世間話程度しか会話を交わさなかったのに。本当に意味不明。


 電車は快速急行じゃなくて各停に乗ろうって言うし、千冬が時刻表で指差した各停は20分後。その間に駅前にあるカフェで時間を潰す。その間もずっと話してくるし、そのあと電車に乗っても寄り添ってくる。


 気になりすぎた俺は周りの迷惑にならないようスマホに文字を打って聞いてみる。


『なんで今まで全然話してくれなかったのに、今はこんなに俺を彼氏あつかいみたいなことしてるの?』


 千冬は晃司の顔を見て、少し黙ったのち晃司のスマホに文字を打ち始めた。


『今は言わない。そのうちわかるよ』


 え?


 晃司は深く考えるのをやめた。千冬が深掘りされるのが嫌いだと言う事は知っている。ここでさらに聞き返したら殴られる。


『それよりさ、晃司は今後配信活動どうしていきたいとかある?』


 唐突な質問に晃司は戸惑う。


『まぁ……そのうちわかるよ』


「それ私のセリフじゃん」


 千冬も普通に美人だから彼氏扱いされるのは悪くはなかった。だからここは付き合ってみることにした。


 ——まもなく名倉——名倉です。右側の扉が開きます——


 名倉に着くと俺は胡夏さんを待たせないために急足でホームの階段を駆け下りる。東改札口を出ると、馴染みのある後ろ姿がそこにはあった。


「胡夏さん」


「春江さん……!地元まで毎回来てもらって申し訳ないです……」


「いいよ全然。ここの近くのラーメン屋美味しかったし何回でも来たいところだからね」


 するとトイレから帰ってきた千冬が晃司の横に出てきた。


「こんちは〜私がこの春江 晃司の一番弟子、青海 千冬でーす」


「変なこと言うな、俺は師匠でもないしお前を弟子とみとめたこともないぞ」


 これは変なやつだなと思われたな……

 と思っていたけど、胡夏は急に目を見開いた。


「えっ……」


「……どうした?」


 千冬のせいだと思って千冬の方を向くと千冬もまた同じく目を見開いていた。


「え?何この状況」


 2人の美女がお互いに目を見開き合うって……もしかして知り合いなのか?


 もう訳がわからねぇって!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ