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#EX1 俺に馴染みすぎて今これ。

 俺と胡夏さんはいつものようにデート。今日はうちの地元の近くにあるオススメのカフェに来ていた。


「晃司くん……今日レポートの提出あるのが忘れてて全くやってない」


「それはご愁傷様としか言いようがない。胡夏さんが次から忘れないようにすればいいじゃん」


「無理、絶対忘れる。それのせいで結局提出が間に合わなくて高校の時に呼び出し何回くらったことか。……どうやったら忘れないと思う?」


「……覚えるか紙に書くとかスマホにメモればいい気がするけど」


「……それ多分書くことも忘れる」


「え、万策尽きたかもしれん」


「えぇぇぇ!? ……はぁぁぁぁ……もうやだぁ」


胡夏さんが萎えに萎えてテーブルの上に両手を伸ばして項垂れる姿はこんな状況で言えたことじゃないけど、……すごい可愛い。


「仕方ない、まぁ胡夏さんをここで助けないのは気が引けるし手伝うよ」


「ほんと!?やったぁ!本当に大好き晃司くん。……キスする?」


はっ!?えっ、…………えっ、


「い……いや、ここ公共の場……」


「冗談冗談。また人のいないところでね」


 冗談でよかったのか悪かったのか……どっちかというと、……やっぱり悪かったかもしれない。俺、男なので。


◇◆◇◆◇


「ご注文はいかがなさいますか?」


「え、じゃあラーメン……」

「胡夏さんっ!?」


 そうでした。胡夏さん全国ラーメン巡りしてきたことを写真付きで話しまくるくらいラーメン大好きなんでした……でもラーメン好きなのはわかるけどっ


「メニューにあるものを選べ……!!」


胡夏さんはまた考え直す。


「え、じゃあワンタン麺で……」

「胡夏さ〜ん!!それ一緒……!!」


店員さんは困り果てていた。しかも苦笑いしてるし。


「す、すみません。じゃあとりあえず僕から。え〜このエビピラフ一つとアイスコーヒー一つ、あ、砂糖抜きで」


「え、私コーヒー飲めない。すごいね晃司くん」


「いやぁ最近ハマり始めてね、苦味が癖になるんだよ」


 その後、なんだかんだでようやく胡夏さんが普通のメニューを頼み、胡夏さんのレポートを手伝うことになった。レポートに関しては、実は得意中の得意。


◇◆◇◆◇


「わぁ〜! 考えれない〜!そもそもテーマが難しい!私には無理だよぉ〜!」


「……落ち着いて胡夏さん」


どうやら今までは3日くらいかけて、AIを使って書き込んでいたらしい。そりゃあ急にやるってなったらむりだよな。何というか、自業自得。


「まずはいきなり文章考えるんじゃなくて、その内容について調べないと。そこから描やすい内容を抽出して、それを別の紙にまとめる。そこからようやく文章作成だよ。」


そうアドバイスしてみるが、胡夏さんはまた項垂れる。可愛い。


「えっと〜……私にできると思う……?」


「できると思うじゃなくてやって欲しいんだけど……」


 流石にこれをやらないとスタートラインに立てないので、厳しい言葉で一蹴してしまった。流石に言いすぎたかもしれない……

 胡夏さんはちょっと不機嫌そうだった。


「……もう、わかったよぉ。やるから後でキスさせて」


「えっ、、、!?!? ……あ、い、いいよ」


「よし、頑張るぞぉぉぉああああ」


えっ、情緒どうなってんの。

……この人が普段画面の中で色々話したり、流行りのゲームしたり、同じ6期生と楽しくおしゃべりしたりする場面が想像できない。

 しかもこの人は数ヶ月前まですっごくおとなしい人だったし。Vtuberの人たちってみんな裏側こうなの??


◇◆◇◆◇


 その後、自分の家まで来たいと言うので仕方なく連れて行くことになった。家までの道のりまでも、俺たち2人は手を繋いでいた。胡夏さんはデートに行くと一生そばにいるんだよなぁ。しかもそれは登録者150万人超えの企業Vtuberの張本人だってこともやばい。禁断の恋はここまで順風満帆になったのか。普通考えられないよ。



そのまま俺たちは手を繋いだまま、坂の上にある家を目指す。

すると、胡夏さんは俺の家を指し示された瞬間、腰を抜かす。


「えっ、、、すごい綺麗で大きい家じゃん……! こんなおっきい家見たことない……お金持ち?」


「なんかそうみたい。親が何故かこの高級住宅街に住んでいたんだよね」


「『なんかそうみたい』でこんな豪邸に住めるなんて、う、羨ましい」


 胡夏さんの顔からは嫉妬の表情が読み取れた。これに関してはちょっと申し訳なかった。自分でも「自分ウザい」って思ったし。


◇◆◇◆◇


「これが晃司くんの配信部屋かぁ……いい匂い」


いい匂いはやめてくれ……なんか嫌だ……


「ごめんねグッズだらけで。飾り物は多ければ多いほどいいと思ってるから」


「私とおんなじだね」


 胡夏さんを自分がいつも配信している部屋に連れ込むと、真っ先に飾ってあるVtuberのグッズに目をつけた。俺の部屋には推しである蒼芽海莉のものをはじめ、リリスとか、もちろん幻夢もある。それを胡夏さんが見逃すはずもなく。


「あ、これ私のやつじゃん!しかも激レアなやつだし。これ、どこで手に入れたの?」


「……えっとね、これは都市部の方までわざわざ行って長蛇の列に並んだ時の成果だね」


「え、もう本当に大好き」


それしか言わないじゃん……!俺に馴染みすぎだって。登録者150万人超えの企業Vtuberがそんなリアルの人に馴染んだらダメだって……!

 ……いや、あれしてるからもう手遅れか……もうそこは気にしないでおこうか。




その後も胡夏さんは俺の家を満喫する。だけど。


「……あの〜……何してるんですか君は」


「え?テレビ見てるだけだよ。ていうかテレビもすごい大きいね」


……嘘つけ。いま思いっきり俺の膝の上に座ってるだろ。そろそろ色々しんどい。今度はまるで恋人超えて妹みたいになってるんですが。

 本当に、俺と一緒にいる胡夏さんを見てるとこの人が本物の企業Vtuberなのかと疑心暗鬼になる。でもしっかりとYouTubeのマイページ画面も見せてもらったし。やっぱり間違い無いんだろうな。


「晃司くん、キスまだ?」


「え」



いや、やっぱり違ったのかもしれない。

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