#11 これでもう私のもの
混乱で力が抜け切ったところを胡夏さんに引っ張られ、俺はベットの上に引き込まれる。
「可愛いです、春江さん」
てか顔近すぎるんだが……?何をされるんだ俺は……!?
胡夏さんの顔はメスになりきってた。髪の毛から匂う甘い香り。その香り一つ一つと、ベットの上で距離が近いことが、少しずつ俺自身の理性を蝕んでいく。混乱のせいで体が言うことを聞かない。
そんなところに追い討ちをかけるように胡夏は晃司の髪の毛を触る。
「この匂い……これ私も持ってる〇〇堂の化粧水だ……」
「ちょっと」
何勝手に人の化粧水の出元特定してるんだよ。ていうか胡夏さんもこれ使ってるのかよ!?
あぁもう、何が何だか。
「あのとき言いましたよね。……私のものになってくれますか?」
自分の性欲を揺るがすような甘い声でその言葉を放つものだから、震えが止まらなくなる。なんで胡夏さんは平然といれるんだ。2人きりで、一つの屋根の下で、同じベットの上に居るっていうのに。これが超有名Vtuberの余裕ってやつなのか……?俺はもう色々と崩壊寸前なんだが……?
「えっと……それは……」
なんたって俺は今まで女の子にこんな事をされたことがない。もちろんベットに倒されたこともない。だから、この状況になった時の対応の仕方もわからず、ただただされるがままだった。そしてついに胡夏さんの顔が自分の顔のすぐ上にくる。
「胡夏さん……あんた何がしたいんだよ」
そう言うと胡夏さんは俺の胸元に張り付いてくる。
「ちょっ!!なにしてっ」
離れない。思ったより抱きつく力が強かった。さっき以上に手足が震える。それのせいでまるっきり力が入らない。さらに胡夏さんのソレも思いっきり密着している。意識を保つこともギリギリで息するのもギリギリだった。
理性も意識も呼吸も限界を迎えていた晃司に向かって胡夏が放った一言は。
「春江さんを私の気が済むまで愛させて」
「は」
あっ。無理だ。
完全なるknockout。
——そのあと、胡夏さんが何を言っていたのか、俺に何をしたかなんて全く覚えていなかった。
「春江さん……?」
気を失ったのかな。揺らしても反応しない。私のものが当たっても何も反応しない。
「……いきなり攻めすぎちゃった。もうちょっとだったのに」
この日だけは私は登録者150万人超えのVtuberという立場を捨てる覚悟でいたのに。まぁでも夜なら……ね。断らせないし。
でも春江さんが夜までいるかもわからないのも事実。
まぁいいや、今目の前にフリーな大好きな推しの体があるんだし。誰も見てないし、一旦とりあえず……
「めっちゃいい匂い」
さっきの化粧水の匂いを堪能する。やっぱり私が持ってるあれとおんなじ。なのに自分がはたく化粧水より倍くらいのいい匂いがした。普段のスキンケアの良さがこれでもかと滲み出る。
匂いを嗅いでいるうちにだんだんと心の中が熱くなるような感覚が湧いてくる。この感覚が何物なのかを私が理解するのには数秒もかからなかった。
「もう色々と我慢できそうにないや」
自由にできる、大好きで大好きでたまらない推しの体を前にして、ムラムラしないわけがないのだ。体の中から徐々に迫り来る欲望に私は落ちつけなくなり、部屋をウロウロする。
ここで……しちゃってもいいんだけど。春江さんが良いとも言っていないのに勝手にするのはダメな気がする。だけど我慢できない!!あの、春江さんは無条件で犯しても許してくれますか?……そんなん言っても聞こえないか。
私はもともと性欲がそんな強いわけではなかった。だけど配信活動を始めるに当たって他のアイドルVtuberグループのメンバーや、個人勢を巡回していた時にふと歌枠配信をしていた秋風 嵐紫との出会いで全て変わった。初めてカラオケに誘うまでも、嵐紫の配信をみたり、動画を見たりしていると耳が気持ちよくなる。その新たに芽生えた性癖にぶっ刺さる神声によって2日に一回は絶対に抜……おっと何でもない。
……………ともかく、色々ともたないのだ。
手をかけようか10分くらい迷い続ける。
そうこうしているうちにもう日が傾きかけていた。いま世界で1番バカな10分を過ごした気がする。
「よし、やろう。私に我慢なんて無理。ライン超えちゃおう」
最終的には性欲が打ち勝った。この判断が良かったのか悪かったのかなんてお構いなし。私は推しに愛されたいし愛したいんだ。
私はまた春江さんが寝転がっている私のベットに入った。春江さんは相変わらず意識がないままだった。
「……春江さん。まだ私たちキスしたことないよね。初がこんな形になる事を許してください」
そのまま春江さんの口元まで一気に距離を詰めた。その直後、私の唇に自分のものじゃない温かいものが当たる。私はそれに食いつくように深いディープキスをする。
「〜〜〜!!」
最高。もう死んでもいいかもしれない。この密着した唇を一生離したくない。脳内が満足感で満たされていく。でもそんなんじゃ私の欲は満たされないくらい嵐紫への愛が溜まっている。
そこで私はついに春江さんの服に手をかける。緊張が走る。心臓の鼓動のテンポが1.8倍くらいになる。興奮のあまり声が出そうになるが、今はグッと我慢……!
「見るくらいなら大丈夫だよね」
1cm、また1cmと服をめくっていく。
さらに私は余ったもう片方の手でズボンに手をかける。この後の行動で人生が変わってしまうような気がしたが、ただの気のせいということにした。
もうちょっと。もうちょっと……!
ティロリロリン
私の部屋の中から、いつも配信する時やゲームをするときに聞いたことがある音がする。
「……ディスコード?誰、こんな時に」
今いいところだったのになとブツブツ愚痴をこぼしながら、いつも配信するときに座っているゲーミングチェアに座る。もう愚痴が止まらない。ため息をつきながらパソコンの画面を見ると、そこには『星影 輝羅』の文字が。
「……輝羅ちゃん?なんでこんな時間に…………あっ!!やばいやばいやばい!!完全に忘れてた!!」
そうだった。今日は同じアイドルVtuberグループに属する6期生、星影ほしかげ 輝羅きらちゃんとオフでのゲームの約束してたんだった……!完全に忘れてた。
うん、約束したのが1ヶ月以上前だったから仕方ないや!
時間的には問題ない。向こうからかけてきているから。だけど私が1番恐れているのが、ディスコードでの通話中に春江さんが目覚めてしまうこと。この事を知っているのは私と汐ちゃんと千冬(海莉)ちゃんだけ。他のメンツに知られたら大変なことになる。最悪炎上する。クビもありえる。
春江さんが言ってた危険ってこういう事なんだな。でも私はそんなこと言ったって付き合う事をやめないよ。
「やっほー幻夢、いける〜?」
「大丈夫だよ」
「聞いてほしいんだけどさ〜私のリアルの友達の彼氏がね?……」
私のパソコンの横に置いてあるスピーカーから甲高い声が聞こえてくる。輝羅ちゃんの売りはこんな感じでとにかく元気、おしゃべりな人物なんだ。こんな人に私の秘密がバレたら本当に大変なことになる。絶対目覚めないでね、春江さん…………
だけど、気を失うのがそんな2時間も3時間も続くわけがない。
私はゲームに集中していて後ろで目覚めてガサゴソしている春江さんに気づかなかった。
「……胡夏さん、何してるの……?」
えっ!?!?




